【KAC20254】パパ上様日記 ~夢で見る、父の偉大さ~

ともはっと

夢で見る、父の偉大な姿


あの夢を見たのは、これで9回目だった。



私がある特定の条件下に陥った時に見る夢。


熱が40度を超え、朦朧とした中で見る夢であり、心臓がばくばくと高鳴っている様を認識した状態、かつ水分補給をしたうえで、トイレに向かって倒れ込むように布団に入り、少しひんやりとした布団の中に入って眠りについたときに見る夢。


40度を超える熱というものがそこまで多くはないのと、それら条件が一つでも欠けた時はみない夢であり、もしかしたらもう少し他の条件もある可能性もある。実際、40度超えたのは、私のうん十年という人生の中で本当に9回しかないのかと問われると、そこまで覚えていられるか、ということもあるからだ。



だけども、確かに、この夢を見るのは、9回目だろうということは、なんとなくわかる。


夢の中でもそう思いながら、私はこの夢の登場人物――目の前の「石ころ」に意識を向けると、石ころの視点へと目の前の視界が切り替わる。

さすがに9回目ともなると慣れたものである。


私は夢の中では小さな石ころである。丸い石ころ。そこから移動するときはころころと転がって移動するのもいつも通り。

そしてそばには、母親であろう少し大きめの石ころがある。私比で言うなら、3倍はある丸い石ころだ。あえて言うなら某ゲームに出てくる爆弾な岩くらいかな。

その大きさの石ころは、もう二つある。姉と兄だ。兄はもう少し大きい。だから私から見ると、壁っぽい感じでもある。

その石ころに、顔がついている、ようにも思えるのだが、所詮は夢。ぼやっとしているところは、もしかすると長年会っていない家族だから顔を覚えていないからなのかもしれない。


さて。そんな私達家族。末っ子の私は、兄の石ころの背中で毎回前が見えない。


だから、兄がごろりと動いて初めて視界が広がるのである。

今回もごろりと兄が動いた。



視界の先には、更に大きな石――いや、もう、岩である。



とんでもない大きさの岩。

丸い、岩。

兄より数倍、いや5倍はある大きさの岩である。

この空間と認識している部屋の半分以上の大きさの岩。




これは――そう。父さんである。



父さんは穏やかな時はゆらりと揺れる程度だ。だけども、一度荒れ狂うとこの部屋をごろごろと転がりまわる

その時はこの部屋は一気に広くなり、父さんがくるくると回って一週できるほどの大きさの部屋なのだと認識できるようになる。

そして、辺りも白い部屋から、一瞬にして溶岩地帯へと様変わりする。


今日のお父さんは、兄がずれた時点で、真っ赤に顔からどこぞの蒸気機関車のようにぷしゅーと熱気が出るかの如くお怒りモードだった。

私がお怒りモードを認識した。


一気に部屋が広くなり、地面は溶岩地帯へと早変わる。



逃げる。

ごろごろと転がる父さんから、全員が一斉に逃げる。


1回目のときは何があったのか分からないままにそのまま潰された。


2回目のときは慌てふためきながら逃げようとして潰された。


3回目のときは逃げることはできた。数秒だけ。


4回目のときは認識する前に部屋の端っこにいって、初めてこの部屋がこんなにも狭い場所だったのだと気づいて潰された。


5回目のときは父さんがお怒りモードになって部屋が溶岩地帯となったことに気づいて動けなくなって潰された。


6回目のときは溶岩地帯での逃げ方を瞬時に理解して逃げ回って天井に貼りついたらより大きくなった父さんにすり潰された。


7回目のときは天井に貼りついて部屋の隅に逃げたら父さんが引っかかって前へ進めなくなった。逃げられると思った矢先に軽く飛び上がって揺れを起こした父さんに地面に落とされて潰された。


8回目のときは天井に貼りつき揺れに負けじと隅に自分をひっかけて落ちないように踏ん張った。生き残れた。


そして、9回目。



8回目と同じように、逃げる。

兄が母と姉を助けるために父さんに抵抗して数秒動きを止めたのち、潰された。

必死に逃げる母が横にずれると、ターゲットとなった姉が私の元へ向かってくる。

姉と共に逃げていると、姉も母と同じように横にずれて事なきを得た。


最後に残る私。


なんとか天井へと貼りついた。

貼りついてすぐさま隅へと逃げる。

逃げた先に父さんは近づけない。自分の巨体が部屋に引っ掛かるからだ。


後は揺れに振り落とされないように堪えるだけである。


揺れる。揺れる。

何度も揺れる。


この揺れは父さんという岩がジャンプしているかのように宙に浮いて落下するときに起きる現象だ。

父さんの落下地点に吸い込まれるように揺れの振動で真下へ着いてしまった母と姉は、次のジャンプの時にはそこから消えてしまっていた。



次は私である。

今この場で潰されていないのは、私のみだ。



目覚めろ。

目覚めるんだ。

早く、早く。

目が覚めれば、私は生き残れる。





私は自覚している。

1回目や2回目であれば、まだこれは夢なのか?と思わなくもない。

だけどもこれは9回目だ。そりゃもうこの出来事は夢であると理解しているし、潰されても目が覚めるだけだし、潰されずに目を覚ますことだってできる。


だから、早く。

早く目覚めるんだ、私――


















「――はっ!」




目が覚める。

布団だ。

ここは温かな布団の中だ。





だけど。








この目の前のこれはなんだろう。

大きくて、黒い。

まるで、私の目の前を大きな壁が遮っているような。







まるでそれは、夢に出てくる父さんのように大きな岩ではないか。











――あ。

これ、夢じゃ――
















ぷちっ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20254】パパ上様日記 ~夢で見る、父の偉大さ~ ともはっと @tomohut

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ