私は、曇り空って時に表情豊かで美しいな、満たされるなと思うことがあるのですが、こちらのストーリーからそのような印象を受けました。
現代と、タイムスリップをした先の明治時代と舞台が切り替わります。
暗い曇り空の下にいるような「謎」に満ちた世界観に包まれながら、その不穏さがなぜか心地よいファンタジーです。
ミステリーの要素も含んでいるようで、ストーリーに厚みがあります。
長編作品を発表される前に、短編にまとめられた作品なのですが、こちらの短編で散りばめられた謎を、長編作品が発表されましたら、確かめたい気持ちに駆られます。
作品のもつ空気感をぜひ感じ取ってみてほしいと思います。
こちらの作品『流れ落葉の夢現』、とある警察官・蕪城真輔がたどる、「夢とも現実ともつかない」不思議な歩みを描いた短編です。どこか乾いた煙草の香りが漂い、歴史と虚構が静かに混ざり合う街並みの中、読み進めるほどに現実の輪郭がふわりと滲んでいくような感覚に包まれます。
テンポよく交わされる会話の中に、ふとした仕草や独白から、彼の心に染みついた孤独や疲れがそっと顔を覗かせる瞬間があり、それがとても印象的でした。そして、謎めいた人物・ハスミとのやりとりには、どこか温度のずれたような面白さがありつつも、品の良いユーモアが漂い、この異質な世界を優しく包み込んでくれるのです。
少し不思議で、どこか懐かしさすら感じるこの物語。ぜひ、お時間のあるときにゆっくりと味わってみてください。静かな余韻が、きっとあなたの中にも残ることでしょう。