土葬知事

つむぎとおじさん

全1話

「これを……飲み込めと?」

 Aはおそるおそる幹部たちを見まわした。


 幹部の一人が笑いながら言った。「うまく行けば正社員にしてやる。ボーナスも弾むぞ」

 Aは観念してマイクロSDカード入りのまんじゅうを口に入れた。

 Aがしっかりと飲み下したのを確認した幹部連中は、パスポートの入った旅行ケースを持たせ、彼を送り出した。


 ところが空港へ向かう途中、Aは交通事故に巻き込まれ、あっけなく死んでしまった。


 悪の組織は頭をかかえた。

 だがこんなこともあろうかと、あえて下っ端のAを抜擢したのだ。

 Aの生まれ故郷は土葬の習慣が残っている。

 彼が故郷に埋葬されたのち、頃合いを見て掘り起こして、SDカードを回収すれば問題ない。


 しかし思わぬところで誤算が生じた。

 近年、土葬という風習が時代にそぐわなくなってきていたのである。


 伝染病、環境問題、クマの出没、ただでさえ少ない土地がますますせまくなるなど、いくつかの問題が指摘されており、火葬を望む住民たちの声は年々大きくなっていた。


 しかし伝統を重んじる県知事の伊須良いすら氏は、かたくなに土葬に固執していた。

 なんとしてでも古来の風習を守り抜きたい知事はプロジェクトを立ち上げた。

 莫大な予算を惜しげもなく投じた末、ついに画期的なシステムを開発したのである。


 その名も「マントル葬」。

 地中深くマントル付近まで掘削し、遺体を文字通り「地球の奥底」へと葬るのだ。


 そうすれば形式上は「土葬」だが、じっさいは「火葬」となる。

 これにより環境問題、土地問題は解決、知事のメンツも保たれることとなった。


「どうです、みなさん。これで文句ないでしょう」

 記者会見の席上で、伊須良氏は高らかに勝利宣言をした。


 悪の組織はマイクロSDカードの回収をあきらめた。


(終わり)

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土葬知事 つむぎとおじさん @totonon

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