第16話 勝負の行方

 勝負はこの1回のみ。

 1番にゴールする船を当てた方が勝ち。

 

 レースがスタートする。

 俺とセイシロウの戦いは熱く、激しい展開であった。


「いけー、2番、4番! 抜けーーー!!!」

「これは1番の逃げ切りですよ。そのまま逃げ切って下さい!!!」


 競艇予想を当てた方が勝ち対決は白熱。

 競艇素人だからとハンデをもらった俺は2番と4番を選び、どちらか1着になれば勝ち。

 セイシロウは1番1着の一点勝負。


 1周目の第1ターンは1番が先行。

 だが2番と4番もそれを追随。船の1、2隻分離れた位置から1番を追いかける。

 そして2周目の第2ターンで動きを見せる。


「あっ、待って、そ、そんな!?」

「キタキタキターーー!!!」


 先行してた1番のターンが大きく膨らみ、その内側を2番、4番の船が差す。

 2隻は逆転。1番との差を大きく作る。


 これは俺の勝ちだろ!

 残りは1周のみ。2番と4番のワンツーフィニッシュかに見えた。


「ヨシ……って、だーー、嘘だろ!?」


 先行した2番と4番が激しく競り合い、3週目の第1ターンで船をぶつけながら周る。

 そして2隻の船は攻防の結果、両方とも転覆してしまった。

 離れて走っていた1番は転覆した船を避け、悠々と1着のテープを切る。


「よし、私の勝ちですね。いやー、久々に生で見ましたが面白いものですね」

「ぐぬぬぬ。どうしてだよ、2番、4番〜」


 俺はセイシロウとの賭けに負け、その上買っていた舟券はパァ。

 ポケットに入れていたなけなしの金を全部擦ってしまった。

 これで飛行船を用意してもらえなくなったら、本当に飛んで帰らないといけない状況に陥った。

 とほほ、買いたい物もあったっていうのに。


 でも約束は約束。くよくよしててもしょうがない。

 とりあえず俺は潔く負けを認め、セイシロウにおつかいの内容を聴くことにした。


「で、買って来て欲しいのってなんですか?」

「買ってきて欲しい物なんて無いですよ」

「えっ、でも賭けでおつかい頼むって」

「……」


 セイシロウは黙ってニッコリと笑う。


 …………!?


「クソッ、やられた!」


 しばらくセイシロウの笑顔を見て、間違いに気づいてしまった。


 賭けで負けたらおつかいを頼むと確かに言われた。

 俺が買い物かと聞いた時も同じような笑顔をしていた。

 そうだった、セイシロウはそれに対して「そうですよ」とは1回も言ってない。

 俺が勝手に買い物だと思って賭けに乗っただけだ。


「この、騙しやがったな〜」

「私は何も言って無いですよ。トールくんがオーケーしたんですから」


 セイシロウは満面の笑みを浮かべる。


「ここで話をするのもあれなんで。別の場所に移りますか。トールくん、お腹空いてます?」

「ん、ああ。かなり空いてるな」

「なら食事でもしながら話しますか。競艇も勝ったことですし。私がご馳走しますよ〜」


 セイシロウも個人で賭けていたらしく、買った舟券をひらひらさせる。

 そのちらっと見える舟券に書かれていた金額は5万フォン。

 しかも1番の単勝じゃなく、1番、3番、5番という順の3連単で買ってやがる。

 

 今回のレース結果は1番、3番、5番。

 俺は新聞を見て倍率を確認。


「1、3、5……ご、58倍!?」


 金を全部無くした俺に対し、セイシロウは5万フォンが290万フォンに。

 ギャンブル好きな俺でも手にしたことが無いような金額を、この男はものの数分で獲得しやがった。


 最強魔王と呼ばれる俺は、ダイニッポン帝国の王セイシロウに、ギャンブル勝負で大敗北するのであった。



◇◇◇◇◇



 俺とセイシロウは競艇場から場所を移し、今度はラーメン屋なる所に来ていた。


 店の中は独特な香り。

 なんだか脂臭いというか。

 ラーメンって何だ?

 俺に一体何を食べさせる気だよ。


「へいらっしゃい。注文は?」


 店の従業員が注文を聞いてくる。

 メニューを見てみるが何を頼めばいいかなんて、俺には分からない。

 なのでセイシロウが頼む物を俺も頼もうと思い、先にセイシロウに注文してもらうことに。

 するとセイシロウは凄まじい早口で注文を始めた。


「昭和ラーメン、大盛りバリカタ、背脂抜き、ネギマシマシ、モヤシマシマシ、メンマ味玉トッピング、小ライス1つ。半餃子も追加で。あと高菜とお冷の交換お願いします」

「あいよぉ! お兄さんは?」

「……えっ? ……同じの?」

「あいよぉ! 注文入りやしたー!!」


 ……何だ、今の!? 呪文か?


 普段温厚でゆったりと話すセイシロウ。

 そのセイシロウがほぼ一息でつらつらと言葉を並べていくのに驚愕。

 今の注文か? 半分も聞き取れなかったぞ。


「初めてで同じのにしましたか。結構食べますね〜」


 セイシロウは俺を見て笑っている。


 食べますね〜って、だって分かんねーもん。

 どれ頼むのが正解なんだよ。

 ラーメン自体知らないのに、味とかトッピングとか言われても選べないから。


 セイシロウに聞いてもラーメンが何かは教えてくれなかった。

 来てからのお楽しみと言ってクスクス笑っていた。

 俺は何を食べさせられるのか分からないまま、そのラーメンとやらを待つことにする。


「ヘぇい、お待ち!」


 しばらくして、変な掛け声と共に俺の前に器が置かれる。

 器の中には汁がびたびたに入っており、その中にまた色々と食材が入っている。


 肉に卵、緑と白いのは野菜だな。

 ……あとの2つは何だ?

 黄色い棒状の物が沢山入ってて、木の板みたいな茶色い物が浮いてる。


「美味しそうですね」

「そ、そうですか?」

「じゃあ伸びない内に食べましょうか。 いただきます!」

「は、はい。いただきます」


 セイシロウは早く食べないとと言いながらラーメンを食べ始める。

 時間経つと伸びる食べ物って怖いなと思いながら、俺もセイシロウの見よう見まねでラーメンを口に入れる。


「じゃあ、話しますか。どっちの用件から話しますか……って、トールくん?」


 俺を見てセイシロウは話を中断する。

 セイシロウが何か言ってるのは分かった。

 でも、ごめん。食べ終わってからにして!


「ズルズルズルズルズルー、ぐおぉ、クソうめえーーー!!!」


 一口入れてからはもう止めれない。

 俺は未知の食べ物、ラーメンに心を奪われていた。

 何が入ってるかよく分からんが、棒もスープも今まで食べたことの無い極上の味。


 セイシロウと話をするはずが、しっかりご飯を食べることに集中するのだった。

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平和主義者の最強魔王は嫌々世界を回してる〜こっち来ないで、勘違い転生者たち〜 執筆のゴシ @54540054

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