バカップルが実は超有名な貴族だった件
守端 蛙助
1章 執事編 夢に迷える子羊
バカップルが実は超有名な貴族だった件 1章 夢に迷える子羊
いつの日か思ったことがある。私にはとても運命的な出会いをした彼女がいる。疑いの目を向けられるのも無理はないと思うが、目の前にその現実が広がっているんだ。信じるしかないだろう。
「なぁ、なんでお前って一人称わたしなんだ?」
「ん?あぁ、これはこっちのほうが相手にされやすいからだよ」
他愛もない会話をしていると彼女本人である六華が顔を出していた。いつも通り私は六華がこっちへ向かってくるや否や両腕を彼女の方に伸ばした。そのまま彼女は私の方に身を寄せそのままハグの体勢になった。周りから、果てには一緒に話していた友達にまでその状況を当たり前と思われてしまうほどその場はいつも通りの空気が流れている。私としては毎回ふれられるよりかはやりやすいがこの状況を皆が受け入れている状況に私は驚いていた。
「そういえば、今日ってなんか放課後に仕事ってあったっけ?」
「いやないはず」
「なら遊びいかない?私ゲーセン行きたい」
そう皆を誘ったが、通院や家族の用事で断られてしまった。六華もバイトということで放課後は一人であることが確定してしまった。普段は一人でも行っていたがなぜか乗り気になれずそのまま帰宅した。自室に入った瞬間私の体はベットへと誘われた。珍しい。普段ならここからソシャゲの周回でも始めるというのに。
ひどい眠気と同時に深いところにゆっくりと落ちる感覚を覚えた。
♢
「……にぃ!いぶにぃ!」
眠りに落ちて暗くなった私の視界から誰かが私を読んでいる。この声は六華?いや違うまたこの夢か。今月何回この夢を見るのか。
「いかが致しましたか?お嬢様。」
「もう、二人の時は昔みたいに呼んでって言ってるよね」
「ですが、もし誰かに聞かれた場合私が爺に叱られてしまいます。私を困らせたいのですか」
そういうと六華によく似た少女は唇をすぼめてしまった。仕方ないだろう。そんなのわかりやしないのだから。
さてこれからどうしたものかこの夢を見始めてから一ヶ月経つが、さっきの名前といい、わからないことが多すぎる。夢なのだから好きにやればいいとも考えたのだがこの夢を見始めた時に今より右も左もわからずにいたら、さっき言った爺にどやされてしまった。現実でならさほど気にしないのだがこの夢に限ってその時のダメージが覚醒しても色濃く残っている。夢だからだろうか。そう考えながらお嬢様の前で立っていると
「イヴ!どこじゃ!頼んでおった仕事ができていないとはどういうことじゃ今日という今日は許さん。はよぉ出てこい!」
まずい。爺が鬼の形相をして私を探している。しょうがないだろこの体は推定18歳といったところだが心の中はこの夢をみて一ヶ月の私なのだから。幸いあれをやっていないこれをやっていないと怒号を飛ばしていたので見つからないようにそれを順に片付けていった。やることが掃除とか庭の手入れとかあまり専門知識を持たずとも日常生活の知識だけでなんとかなるものばかりで助かった。爺の言う事を片っ端から終わらせてゆき、新しい仕事が出てこないことを確認すると私は急ぎお嬢様の部屋に戻った。
「はぁ、ようやく終わった」
「ふふ」
お嬢様が疲れ果ててやっと安息の地に帰ってきた私を見て笑っている。
「どうしたのですか」
「いや。いぶにぃ変わったなって思って。だっていつも無愛想で私に関わるのなんて最低限だったのに時々すごく優しくなるんだもん」
「私はいつも通りですよ」
「ほら!だっていつもは俺っていうのに優しい日だけ自分のこと私っていうんだもん。あといつもだともうちょっと口が悪い気がする」
夢にしては設定が細かくないかと疑問を覚えてしまったがそのまま続けた。
「なら戻したほうがよろしいでしょうか。私もお嬢様と仲良くしたいのですが、いつもの自分だとどうしても悪い態度をとってしまいますのでこうして少し違う自分を見せているんですよ」
すまないな、こっちの世界のいつもの私。いや俺。
「いや。いいの。むしろわたしはこの優しい時のいぶにぃの方が好き。もちろん前のいぶにぃが嫌いってわけじゃないけど素っ気ないよりかは私が今よりもっと小さい時に遊んでくれてたいぶにぃにそっくりなんだもん。それに前はイヴって呼んでたけど今いぶにぃって呼ぶのは遊んでくれてた時のいぶにぃに戻ったからなんだよ」
その言葉に罪悪感を抱きながら不覚にもその訴えにかわいいと思ってしまった。
「お嬢様がそうおっしゃるのなら私はこのままでいようと思います。ただ、時々そっけなくなってしまうのをお許しください。先ほど私が申し上げた通り爺にその様子を聞かれてしまうと私はお嬢様と一緒にいる時間が少なくなってしまいます。よろしいですか?」
「うん」
小さい声で悲しそうにお嬢様は答えた。
「お嬢様は私がこの部屋を出る前に昔みたいに呼んでとおっしゃっていましたが呼べない理由があるのです。それがみっともないお話なのですが昔に呼んでいた名前を忘れてしまったのです。お嬢様の言う通り二人きりの時、極力その呼び方をしますので教えていただけないでしょうか」
少し疑いの目を向けたが何かを理解したのかお嬢様が口を開いた。
「そうだったの。昔いぶにぃは私をリッカと呼んでいたのよ。私の名前がリカだからそっちのほうが呼びやすいっていぶにぃが言ってたのに」
「失礼いたしました。…かしこまりましたお嬢様。いえ。リッカ」
そう呼ぶと私の意識は遠のいていき、見たことある天井へと帰ってきていた。
やばい。どうしよう。夢とはいえこんな精密に作られた夢の中でまさか彼女の名前と同じ子がいるなんて。正確には呼び方だが。まぁこんなことが1ヶ月も続いているからさすがにこの状況にも慣れてしまった自分がいる。
〜翌日〜
どんな夢を見たとしても現実世界は無情にも毎日訪れる。
「おはよ〜」
なんとはなしにいつもの皆に挨拶をすると六華がこちらに返事を返した後に先に来ていたメンバーと話しを続けた。
「なんか最近同じ夢ばっか見るんだよね」
夢と聞いて駆け寄ってしまった。
「へー。どんな夢!」
平然を装って話題を拾ったがみんなには動揺して見えたらしい
「どうしたの急に。その夢ってのは気がつくとどこかの屋敷にいて私はどこかのお嬢様かなんかなんだけどすごいのはここからで、そこに出てくる執事が推しにそっくりなの!やばくない!」
「でもそれってたまたまじゃない?」
「いや。違うの。2日続くとかならまだ偶然だけどもう3日に1回の頻度で見るんだよ。偶然だとしたらそれもそれで凄いよ」
「その場合はどんだけ推しの事考えてんだよ」
輪のだれかがツッコんだ。今の話を聞く限り私が見ている夢と六華の見ている夢は同じ可能性が高い。ただもしその執事が推しにそっくりなのだとしたらその推しキャラは確か一人称が俺だったはずなのでかすっているが自分の彼女がたまたま同じ境遇にあるだけだとこれ以上の詮索を止めようとしたときに六華がまた話し始めた。
「それな。でも1回だけ見た目はそのままなんだけど言葉遣いとか立ち振舞が惟蕗のときがあったんだよね」
「それはそれでどんだけ惟蕗のこと好きなんだよ」
また同じやつがツッコミをいれた。その話を聞いて珍しく驚いてしまった。私の方でも記憶している中だとあの夢のお嬢様が1回だけ六華そっくりになった時があった。ここで私と六華はほぼ間違いなく同じ夢を見ていると結論づけた。けどなぜ?夢というのは脳の記憶整理のために見るものであるのにそれが他人と同じになることなんてましてや自分の恋人と同じになるなんて。あり得るのだろうか。今まで生きていてそんな話は聞いたことがない。ここが物語の世界ならそれこそ夢の中なら考えられなくもない。ただ、今この現象が起こっているのは紛れもなく現実だ。なら一体なぜ。そう考えているうちに時間が流れていき放課後になった。校舎からは様々な声がする。学校の疲れを訴える者、部活に勤しむ者。教室に残って駄弁る者。私はというと教室で駄弁る者へとなっていた。というのもさっきの輪にはいなかったが一緒に過ごすことの多い仲間へと尋ねていたからだ。その理由はそいつは名前を彰本紘といい、こういったオカルト?ちっくの話が大好きであり、それを使って創作活動している紘の知恵を借りたかったからだ。私はそいつに今まで会ったことの一部始終を話した。
「…って話なんだ。なにか似たような話聞いたことある?」
「うーん。確かなんかのアニメで夢が共通化された世界みたいな設定は見たことあるけど現実にそんなことがあったとかは聞いたことがないな。神話とかでも俺が知ってる限りじゃ知らないね」
「そっか。ありがとう」
あんだけ普段話しておいてこういう時に役に立たないんかい。と心の中で使えない奴と思ってしまった。
「なら。図書室いかない?」
「えっ。なぜ?」
「今の時代ネットで調べられるけどガセネタとか多いからね。それと違って本はいいよ。名のしれた人が書いてるし、ネットと違って基本的に一度世に出た本は書き換わることがないからね。あと司書の先生に頼めば何か教えてくれるかもしれないしあの人話面白いし物知りだから」
「本かー。なしじゃないけど正直面倒くさいなー。それに君が行かせたいだけだろ」
「あっ。バレた?頼む。今月、利用者が少なくて困ってるんだ。別にノルマがあるわけじゃないけどああいう場所は賑わっているほどいいだろ。仮にも俺副委員長やってるからさ」
「わかったよ。じゃあ行くかー。あそこ俺等の教室から遠いんだよな」
「文句言うなって。よし、そうと決まれば行くぞ」
図書室の場所がうる覚えだったのでこいつの後ろについていくかたちで目的の場所まで向かった。扉を開けるとそこに印字のされた紙の匂いとインクの匂いが部屋を埋め尽くしている。
「先生こんちはー」
「こんにちは。今日は当番じゃないよね。会議の予定とかあったっけ?」
「いえ。今日は調べものですよ。なんか夢についての本ってあります?」
「あったかねーそんな本。でも確か、表に出している本にはないけど裏の倉庫にならあるかもしれないね。あそこは借りられる回数が少なかった本や譲ってもらったけど状態が悪くて表においておけないものあとは高校生に適してないものとか置いてあるからあそこにはここ以上に多くのジャンルの本が置いてあるからそこならもしかしたら」
「本当ですか!俺達、そこに行きたいです。ただ生徒だけで入ってもいいんですか?」
「いやあそこは生徒立ち入り禁止だから君たちだけで入っちゃいかんね。けど今回特別に入れてあげよう」
「本当ですか。よっしゃ。よかったな惟蕗」
「そうだね」
今回は私の用事で来たはずなのに何故か私よりテンションが高くなっているあいつを不思議に思いながらトントン拍子に話が進んでいき、結果的に倉庫に入れることになった。
「さぁ、ここだよ。少しほこりっぽいけどがんばって探してくれ。鍵は渡しとくから終わったら鍵閉めて私のところに持ってきてくれもし他の人に咎められたら私の名前出していいから」
「「ありがとうございます」」
それから二人で無数にある本の中から夢に関する本を探した。途中、人気漫画の単行本や興味のある新書が目に入ってしまいどちらも手を止める時があったがそこは二人でなんとか捜索の方に手をさくように仕向けあった。棚のほうは全部見終え、残りは段ボールに入っているものだけになり、中を確認してみたがその中は棚にあった本よりも腐敗が進んでおり中のページが切れて抜けているもの表紙が黒く汚れてしまい見えなくなってしまっているものばかりとなっていた。ここまで探していた本が見つからないことでめんどくささが増してきた。そこに追加してそもそも選定基準にすらは入っていない本たちをみて私たちのやる気はさらに落ちた。
「なぁ、いつまで探すんだよー。俺はもう興味深い本が見つかったからいいんだけどお前はどうするよ?」
「なんでおまえが楽しそうなんだとわかってるよね。今回は私の探しものなんだけど」
「悪い悪いただここまで来て見つからないんだったらないんじゃない?」
「いや最後にこの箱を開けて終わりにしよう。」
「せやねー。ならちゃっちゃとあけておわろーぜ。腹減った」
「それはそう。じゃあ最後の箱には何があるかな」
今日の最後の力を使ってその箱を開けると積まれた本の一番上に【夢への切符】という本が目に入った。夢とついていたので本を開いてみると目次に
夢の同一化
夢の共有
夢の現実化
と書かれている。ただそのあとのページは読めなくなっている。幸い、後ろのページの出版社や作者本人の連絡先がのっているページは読むことができたのでそこを写真に撮りそのまま持ち出すことにした。
♢
「ありがとうございます。おかげで探してた本見つかりました」
「俺も面白そうな本が見つかったのでこれ借りていきます」
「あぁ、それもうあげるよ。あそこにおいてある本は廃棄する予定のやつだったから」
「「ありがとうございます」」
先生に礼を言ったあとあいつと学校を去り、帰宅した。どうにかして情報をつかめないかと思ってすべてのページを開いてみた。するとそこには読める範囲ではいま私が体験していることと同じことがつづられている。この本の全体が読めればもしかしたらこの体験を終わらせられるかもしれない。寝ても覚めても覚醒状態が続いているのと同じなので正直体力というか脳が限界である。だから私は決意した。この作者に会って直接話を聞くことを。思い立ったが吉日だと思い残っていた連絡先にかけようと思ったがもう放課後そして帰宅後ということもあり、かなり遅い時間であったため今日はやめることにした。一日のしめくくりということで睡眠をとらなければならない。少し憂鬱感を覚えるが大事な情報が手に入るかもしれないのに眠い状態ではいられない。そんな私は重い体を倒して六花にメッセージを送った。
「おやすみ」
バカップルが実は超有名な貴族だった件 守端 蛙助 @alkahone
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。バカップルが実は超有名な貴族だった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます