妖精の生贄
夕山晴
妖精の生贄
妖精の加護を得た人間は、等しく崇められた——私を除いて。
妖精の加護は人間を豊かにした。
豊作となり天災は起きず、時にはほんの少し運気を上げたり傷を癒したり。
贅沢ではないが、心豊かになる、そんな加護。
街を歩いていると側に小さな光を浮かべる人間と時折すれ違う。妖精に好かれた加護持ちだ。
加護持ちを見ると人々は笑みを浮かべて少し距離を取る。万一粗相があれば妖精の怒りを買うからだ。
怒りを買えば、この国では生きられない。フェアリデール——妖精の国だ。
「私も加護持ちのはずなのになあ」
首を傾げると返事がある。
「いいや、君は正しく加護持ちだよ、僕のね」
「だよねえ。なのにどうしてこんな待遇なの」
他の加護持ちは、ちやほやされたり優しくされたり。お店で時々おまけしてもらえたり。
「私を見るとみんな後ずさって顔を引きつかせるの。なんでだと思う?」
「こんなイケメンの妖精を連れてるのにね、なんでかな。消す?」
「だよねえ、イケメ……ん゛、カ、カッコイイノニオカシイヨネ。消しません」
妖精は異性の人間を選ぶ。
独占欲が強く、気に入った人間が他の異性と親しくするのを嫌った。もし恋人がいても結婚していても、妖精たちには関係ない。
だから暗黙で、加護持ちにはみんな優しくしてくれる。妖精への生贄として憐んでくれる。
チラリと隣を見る。連れているのは紛れもなく妖精だ。
特徴的な、背中にある透けた虹色の四枚羽根と淡く発光する身体。
けれど人から向けられる視線はいつも恐怖の色を含んでいた。
「うわあー! 化け物!?」
正直すぎる子供の悪口にも随分と慣れてきた。慌てて口を塞ぐ親を気の毒に思うほど。
指差された私の妖精は、鍛え上げられた肉厚の上半身を晒し、堂々と隣を闊歩する。その身体は私を包み込むほどに大きい。
叫んだ子供にはポーズを決めて自慢の身体を見せつけていた。
「確かに僕は異質だけど、だからこそ君を幸せにできるってこともあるかもしれないよ?」
「なんて?」
「恋人にだってなれるってことさ」
ムッキムキすぎる身体にははっきり言って興味はない。
普通の加護持ちに羨望の眼差しを送りつつ打ちひしがれた。
「間に合ってます」
ああ、
妖精の生贄 夕山晴 @yuharu0209
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