『うちのクラスに、AIがいるらしい』
そんな、なんとなく不穏さを匂わせて始まる本作。
進学校の特進クラスで、それほどクラスメイトとの強い絆を求めていない、良く言えば他人との距離感を保って生活している高校生達がメインで描かれます。
はじめは、「AI=人間じゃない」「自分達とは別のもの」という雰囲気だったのに、物語が進み、クラスメイト達の見えなかった気持ちや関わりが明かされていくと、徐々に“クラスにいるかもしれないAI”の存在への考え方にも変化が見え始めます。
それでも、作者様が描かれているのは、どこにでもいる高校生達の瑞々しい青春の風景。
不器用に頑張って。
目の前のことに必死で。
将来に向けて模索して。
そして、誰かを好きになって。
その姿はとてもキラキラして、とても眩しいです。
今を生きるのに一生懸命な彼等は、果たしてクラスメイトの中にAIを見つけるのでしょうか。
この物語は、AIとの共存に希望の未来を感じさせる物語でもあり、“生きる”ということがどういうものなのかを、改めて教えてくれる物語でもあると思います。
そして、単純に、めちゃくちゃ心揺さぶられて泣きます!
最後も感動して泣いたぁ……(TT)
どうぞこの感動をあなたにも。
お勧め致します。
【KADOKAWA 児童書編集者主催】「人工知能×青春小説」応募作です。
まず最初に、「AI」という存在には根幹的な問題があります。
と言っても難しい事ではありません。現在、積極的にその存在が社会に浸透しつつあり、それはすごく利便性がある反面、人の仕事を奪ってしまう事や、又は「クリエイティブな世界」においては非常に問題視される状態でもあります。
現段階ではある領域に達した人間の想像力を上回る事はないのですが、残念ながらそこそこの領域ですとよく出来たものです。語弊はありますが、ここカクヨムという世界で例えるなば、「AI」が小説に取り組めば「才能はないが、1000冊以上の読書経験のある素人が、バランスよくこじんまりとまとめた作品」くらいは書けます。
正直、なんか微妙です(笑)。
で、僕の考える「根幹的な問題」というのは「AI」だからどうとかではなく、「便利なものを手にした人間側の問題」という事です。例えばスマホを手にして「依存症」になったり、ゲームに熱中して「廃人」になったり、極端に言えば「核」を手に入れて政治で使う事でもあります。
つまり、目先の問題であーだこーだ言うのでなく、シンプルに「常に問題は使う人間側にある」という事です。
さて、本作です。僕の杞憂するそういう点に対し、筆者様はひとつの答えを提示してくれています。「AI」が秘密裏に人間としてクラスに存在する、サスペンスな設定に思えそうですが、そこは筆者様のとても素敵な筆力で、しっかりたっぷりきっちり「青春」しております、もうね、キラキラして眩しいです(笑)。
お勧め致します。
このテーマは決して軽々しいものではありません。ですが必要以上に重くならず、丁寧にそして誠実に書かれた今作は、無類の完成度を誇っていると断言出来ます。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)
人格を持った人工知能に人権は不要なのだろうか?
手塚治虫の『鉄腕アトム』は本当はただのヒーローものではない。
その世界ではロボットたちは人格と自我を持っていても人間じゃないという理由で差別されている。
それは人種差別の暗喩でもあった。
現代は技術の進歩でその暗喩が暗喩でなくなる可能性が高まっている。
もし、AIが人格を持ち自我を持ったならば、心があるのならば、それをただの道具、機械として扱っていいのか? ましてや、実際の人間の人格や自我や心をそのまま写し取ったAIに人権はないといっていいのか?
青春まっただなかの多感な高校生のクラスに、そんな繊細な倫理上の問題がいきなり放り込まれる。
最後まで目が離せない。そして考えざるを得ない。
人間とは何か? 人格とは何か? そして人権とは何か?
『鉄腕アトム』だけでなく、すごいんだけどどこかドジでマヌケなネコ型ロボットの『ドラえもん』や、もっとおマヌケなアンドロイドの『究極超人あ~る』まで生みだした日本。
ワタクシはかれらにも人権を認めてあげたい側の人間だ。
異論は認める。でもしっかりと考えて欲しい。人間とは何だろうね。
「AI×青春小説」コンテスト応募作品
第6話まで読んだ時点でのレビューにあります。
時は20xx年。AIやドローンが身近な労働力として普及した世界でのお話です。
幾つかの高校にAIが生徒として紛れているという報道と、すでにその内の数名は見つかっているという噂が流れ、主人公「佐倉日奈」のクラスではAI探しが始まった……と、こう書いてしまうとミステリーやサスペンスのようですけど、これは青春小説です。ラブもあります。
AI探しにやっきになる生徒がいれば、疑いを掛けられる者もいたり。クラスに壁ができる中で体育祭が近づいたり。怪しい女記者が嗅ぎ回ったり。
日奈を中心とした生徒たちの物語に今後も期待です。
ご一読の上、最新話まで追いついてみてはいかがでしょうか!