俺の妖精 [KAC20253]

蒼井アリス

ギャップすごすぎ

 俺の幼馴染は無頓着である。何に無頓着かというと、自分の容姿についてである。


 幼い頃のあいつは女の子と間違えられるような可憐な子どもだった。透き通るような白い肌、茶色がかったふわふわの髪、光が入るとグレーに反射する瞳。それはもう天使のような子だった。


 成長して中学生になると、かわいいとか美しいと言われることを毛嫌いするようになり、がさつな振る舞いや乱暴な言葉遣いを好むようになった。

 まあ、元来の性格も繊細とは程遠い野生児のような奴だったから路線変更でもなんでもないのだが。


 こんな調子で、初対面の人は王子様のような外見のあいつが王子様らしからぬ振る舞いをすると腰を抜かすほど驚く。口が悪くて毒舌家、喧嘩はめっぽう強くて大食い。何から何までイメージを裏切る。

 本人に言わせると「勝手に自分の好きなイメージを俺に押し付けてるだけだろ。知ったこっちゃねーよ」とけんもほろろな対応だ。外見だけに惹かれて近寄ってくる人たちは実際のあいつを知ると落胆して去っていく。最終的にあいつの周りに集まってくるのは外見よりも中身を好ましく思っている連中だけになる。


 あいつの裏表のない真っ直ぐな性格は、人間関係の駆け引きが苦手な連中には居心地がいいのか不器用な奴ばかりが集まってくる。そして極め付きは喧嘩好きなヤンチャな奴らだ。

 綺麗な顔をしたあいつが強いことを快く思わないヤンチャな奴らにしょっちゅう喧嘩を売られ、その全員を返り討ちにして負け知らずのあいつはそっち方面の奴らの間では伝説になっているらしい。綺麗な顔をして笑いながらボコボコにするからサイコパスとか悪魔とか呼ばれてたりする。


 そんなあいつも俺と二人きりになると特別な顔を見せる。整った顔立ちで手足が長くバランスのいいスタイルをしているあいつが一番美しくなる瞬間。それは俺のキスを受ける瞬間。

 瞳はとろみを帯び、頬がほんのり上気する。その瞬間、あいつの周りにオーラのようなものがブワッと現れ輝き出す。キスを重ねるたびにそのオーラは踊っているように揺れる。


 その息を呑むような美しい光景は世界中で俺しか見られない。俺だけに与えられた特権だ。

 サイコパスとか悪魔と呼ばれる男が俺だけの麗しの妖精に変わる瞬間。そして俺が世界一幸せな男になる瞬間だ。



 End

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺の妖精 [KAC20253] 蒼井アリス @kaoruholly

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ