精子救済! 精プルースト

青キング(Aoking)

精子救済! 精プルースト

 人間世界とは別の外界に精プルーストという人間の雄の性欲を外界から司る妖精使いがいた。

 プルーストは発散されずにいる精子を救済するため、この度も人間世界を覗いている。

 早速、救済するべき精子を見つけた。

 どこだろうか。大陸から海を隔てた東、これは日本という列島だ。

 駅から出てきた中年男の内部からプルーストは精子たちの救難の声を聞いた。 

精子を救済するためオタマジャクシのような形をした精父を人間界へ放つ。


「いってら、ちゃんと精子を助けるんだぞ」


 目標の男へ向けて精父が導かれていくのを視認してから、プルーストは愛読書の精典に目を通した。



 長い残業続きで疲弊した身体を引きずるようにして中年男が歩いていると、急に股間に活力が漲ってきてしまった。


 なんだろう、急にムラムラしてきたぞ。


 自身の感情の変化に不可解を覚える中年男の目には見えていないが、彼の股間にはプルーストより遣われた精父が憑りついていた。

 プルーストの差し金など露知らない中年男は歩きながら、いつもは気に留める余裕もなかった往来の人々に目が向かう。


 往来の中で散見する若いOLのぴっちりとしたスカートから伸びる脚線、ガードレールに行儀悪く腰掛ける臍みせの服装をしたティーンエイジャーの少女、他にも性欲の対象になりえる女性がやたらに目につく。


 周囲の男の顔などジャガイモにしか見えなくなってくる。

 女性を視界に入れているだけなのに、すでに下半身は熱くなり、性欲の解放を訴えるように全身の血が股間へ集まっていくのを感じた。


 こんなムラムラしたの何時ぶりだろう?


 疲労で眠っていた性欲が急激に蘇った中年男は、かろうじて勃たないでいる突起が無意識に起きないように気を付けながら、理性を発揮して往来を進む。

 帰宅してしまえばどうとでも、と彼は考えていたが、性欲が収まることはなく街頭広告に写る女優の顔を見るだけで、犯している想像が頭に湧いてきてしまう。


 AVでも久々に観るか?


 忘れていたアダルトな媒体に俄然性欲の食指が伸び、何を観るか脳の本能的な部分が取捨選択していく。

 団地妻、JKブルマ、隣家住まいの愛しのお姉さん、パイズリ爆乳女医、マッサージ店の特別メニュー、眼鏡店の美人店員、雨後の筍のごとく次から次へと情炎昂るシチュエーションが脳裏に過っていく。

 今にも起きそうな股間を制御しながら男は歩き、なんとか自宅マンションまで帰り着いた。

 自宅に着いた途端スーツのズボンが突き破れそうになるのを、急いでズボンを脱いで開通を防ぐ。

 皮鞄からスマホを取り出すと、上半身はスーツで下半身はパンツだけの格好でソファに腰を下ろして目的の動画を探しながら、すでに起きたアソコを握る。

 過去に観たことある動画の再生が始まるなり、男の精父は大量の精子とともに外へ放出された。


 

 男の外へ放出された精の父子は、天涯を全うしたように晴れやかな死に顔で精力を失っていく。

 プルーストは父子の死に顔に満足して鷹揚に頷く。


「また精子が助かったのう」


 男が出し切って恍惚に浸るまでを見届けたプルーストは、次の救済する精子を探して人間界の広く見渡した。

 滞留してしまっている精子は多いのか、すぐに対象は発見される。


「次はそこか。今助けるからのう」


 様々な事情で精子を出せないでいる人間界の男のもとへ、再びプルーストの手によって精父が遣わされた。

 これを読んでいる今現在も、どこかで助けを待つ精子がいるのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

精子救済! 精プルースト 青キング(Aoking) @112428

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ