死でも二人を分かてない
もつ煮込み
第1話 私は目を憑けられる
「やだよ..愛ちゃん...もっと一緒にいたいよ...」
病室の中で一人の少女が涙ながらに訴える。
ベッドに横たわるもう一人の少女はもう長くないのだろう。周りにいる大人達も涙を流しながら、二人の少女を見守っている。
「ごめん、ね..はるちゃん...」
少女は少し困った顔で謝りながら、傍らで涙を流す少女の手を握る。
「私が、死んじゃっても..はるちゃんのこと...ずっと、見守っているからね...」
「うん..はるも、絶対に愛ちゃんのこと忘れない...忘れないからね!」
「ふふっ...ありが、とう」
そう言い残すと、一人の少女は笑顔のまま息を引き取った。
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「はぁ、またあそこにいる...」
朝から憂鬱な気持ちになりながら、私は踵を返し通学路とは別の道で学校へ向かう。
私、
周りのクラスメイトは花の女子高生として高校生活を謳歌しているが、私はと言うと入学からひと月、これといった交流も無く一人ぼっちの学校生活を過ごしている。
私自身が他人とのコミュニケーションが苦手というのもあるが、この様な寂しい現状にはもうひとつ大きな理由があった。
私は振り返り、先程まで通ろうとしていた横断歩道を見る。
「縺薙▲縺。隕九※?溘%縺」縺。隕九※?溘%縺」縺。隕九※?溘%縺」縺。隕九※?」
男が、横断歩道の脇に立ち、道行く人を見つめながら何かをずっと呟いている。
サラリーマンだろうか?スーツを身にまとい、その場から動かず...正確には動けずに立ち尽くしていた。
男の右足は膝から下がひしゃげ、足首があらぬ方向に向いている。スーツも所々が破け、中のシャツも赤く汚れていた。
そして何より、男の後頭部はまるでその空間だけ切り取ったかのように大きく凹んでいる。
そう、私はいわゆる視える体質なのだ。
私は、物心ついた時からこの世のものでない存在が視えていた。そのせいで幼い頃は周りから不気味がられ、学校ではイジメにあうこともあった。
母からはそういった存在とは目を合わせず、無視していれば危害は無いと教えられている。
たが、過去のイジメによるトラウマや、私のせいで周りの人達が、奴らから目をつけられるのでは無いかという恐怖心から、私は他人との交流を避けるようになっていた。
しかし最近、そんな他人との交流に無縁な私でも、一つだけ対人関係で悩みを抱えている..
「あ!比良坂さん、おはよう! 今日もこっちの方から登校してるんだね!」
それが、今まさに私に挨拶をしてきた彼女、
井桜 遼は私と同じクラスで、学級委員長を務めている。社交的で明るく、入学からたった1ヶ月でクラスの中心的存在となり、クラスメイトから信頼を置かれている。
「お、おはよう...井桜さん。」
「今日もいい天気で良かったね〜」
そう言い、彼女はへにゃっと笑う。その柔らかい笑顔が快晴の空と相まって、眩しく感じる。
「そういえば、比良坂さんって最近よく朝から会うけど、こっちよりも反対側から登校した方が早いよね? 何か理由とかあるの?」
「いや..何となく、あそこの横断歩道が気になって...」
「あぁ、少し前に事故があった場所だっけ? 確かに、通学路で事故があったら気にもするよね〜 また事故が起きたら怖いもん。」
「あ、うん...」
本当は横断歩道にいるあいつが怖くて避けているのだが、今は適当な返事で話を合わせる。
なぜなら内心では、ここで彼女に会うくらいなら、無理をしてでもあの横断歩道を渡るべきだったと、遅すぎる後悔に会話どころではなかったからだ。
別に私は彼女のことが嫌いで避けたいのではない。問題は彼女ではなく、その後ろにいるもう一人だ。
私は、チラリと彼女の肩越しへ目をやる。
「キ、エロ..縺薙?豕・譽堤賢...チ、チカzU..クナ...」
そこには肩まで伸びた黒髪と、見ているこちらまで血の気が引くほど青白い肌をした少女がいた。
少女は、その青白い両腕を井桜さんの両肩に乗せて、まるで自分の獲物を逃がさないかのように、ガッシリと掴んでいる。さらに肩越しから覗く表情は、まるで怨みを塗り固めたかの様におぞましく、じーっと私を睨みつけていた。
(だあぁぁぁぁ!! もう、こいつ本当に怖えぇぇよぉぉぉぉぉぉ!!!)
私は叫びたくなる程の恐怖心を、何とか喉の奥まで飲み込む。
これが私が井桜 遼を避ける理由。
彼女は悪霊(推定)に憑かれているのだ。
私が普段から視ている幽霊達は、無視さえしていれば基本的に無害である。何もせず、ただ同じ場所で陽炎のように立ち尽くしているものが殆どだ。
だが、稀に何かの目的を持って動き回り、自ら生者に関わろうとする幽霊もいる。
そのような奴らは基本的に全部ヤバい。一度でも関わりを持つと、何処までも憑き纏われて最後にはあちら側へ連れて行かれてしまう。
井桜さんに憑いているこいつは、正にそのヤバい奴らの典型だ。彼女に執着して、彼女に近づく者全てに怨嗟の目を向けている。
いつ襲われるか分からない恐怖感と、その存在に全く気づいていない井桜さんの眩しい笑顔とのギャップで、心臓が口から
(こ、怖いッ..! 何回みても慣れない...怖すぎて吐きそうッ...!)
「えっと、比良坂さん大丈夫? もしかして具合悪い?」
井桜さんが心配そうにこちらの顔を覗き込む。
必然、井桜さんの後ろにいるそいつも至近距離で私に怨嗟の表情を向けてくることになる。
「...ヴォエェ」
「比良坂さん!? 本当に大丈夫!?」
「だ、大丈夫..ちょっと口から出そうになっただけ。」
「何が!? あと女の子が出しちゃいけない音が出てたよ!!」
グロッキーになっている私の隣では井桜さんがアタフタと、心配そうに色々と介抱しようとしてくれていた。
その心遣いは嬉しい反面、後ろにいる悪霊(?)が井桜さんが近づく度に、私に物凄い睨んでくるから、その度に心臓が口から吐き出そうになる。
(早く..早く、学校に着かないかな...)
そんな事を思いながら私は、1人と1幽霊と一緒に学校を目指すのだった。
死でも二人を分かてない もつ煮込み @mo2_253
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