輝く一歩
辛巳奈美(かのうみなみ)
輝く一歩
15歳の彩音は、アイドルグループ「Shooting Star」の大ファンだった。特に、センターを務める葵にあこがれていた。葵のステージでの圧倒的な存在感、力強い歌声、そして何よりも、誰をも魅了する笑顔。彩音は、何度も葵のライブDVDを繰り返し見ては、真似してダンスの練習をしていた。そのたびに、自分もいつか葵のようになりたいという夢が心の中で燃え上がった。
彩音は内気でおとなしい性格であった。クラスメイトと話すのも苦手で、いつも一人で過ごしていた。教室の片隅で、ひっそりと本を読む彩音の姿は、周囲からほとんど目立つことはなかった。彼女にとって、周りの笑顔や楽しそうな声は、どこか遠い世界のものに感じられた。しかし、そんな彼女にも一つだけ心を奮い立たせる存在があった。それが葵だった。葵の笑顔を見るだけで、彩音は勇気をもらえた。いつか自分も、あんな風に誰かを笑顔にできる存在になりたいと、心の底から願っていた。
ある日、彩音はShooting Starのオーディションがあると知る。最初はためらった。自分には無理だと。心臓がドキドキと激しく打ち、手汗が滲む。それでも、夜な夜な夢に出てくる葵の笑顔を思い浮かべるたびに、胸に湧き上がる熱い想いを抑えきれなかった。あのステージに立ちたい、あの笑顔のようになりたい――その強い願望が、彩音を突き動かした。
オーディション当日、彩音は緊張で手が震えた。大きな会場に集まった他の応募者たちは、華やかで自信に満ち溢れているように見えた。その中で、彩音は自分の内気な性格が邪魔をして、思うように動けない焦りを感じた。心臓がますます速く打ち、呼吸が浅くなっていく。自分の心音が耳元で鳴り響き、まるで全身が震えるようだった。脚がすくんでしまい、前に進むことすら難しく感じた。それでも、葵の笑顔を思い出すたびに、心の中で「負けない」という決意が芽生えた。自分がどれだけ弱くても、ここで逃げるわけにはいかないと。深呼吸をし、心を落ち着けるように努めた。
結果は不合格だった。悔しさで涙がこぼれた。全身が震え、足元がふらつく。それでも、心の奥底で何かが変わった気がした。オーディションを通して、自分の弱さと向き合い、それでも前に進もうとしたこと。それは、葵へのあこがれが、自分自身を成長させてくれた証だった。彩音は自分が挑戦したことに誇りを感じた。
彩音は、アイドルになる夢を諦めなかった。葵のように、誰かを笑顔にできる存在になるため、一歩ずつ、着実に歩んでいくと決めた。その一歩は、小さくても、確かな光を放っていた。彩音は、その光を胸に抱きながら、未来へと向かって進んでいった。
輝く一歩 辛巳奈美(かのうみなみ) @cornu
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