少女。鷹匠にあこがれ、霊鳥を追い回す

緋色 刹那

🦅🤩

 霊鳥、金色鳳凰こんじきほうおう。新たな後継者が選ばれたとき、その者が国にさらなる繁栄をもたらすかどうか予言する鳥。


 その霊鳥が今……名もなき野っ原で、年端もゆかぬ少女に追い回されていた。


「鳥さん、待ってー! 私と契約して、相棒になってよー!」


(しつこいな……)


 気まぐれに助けるのではなかった、と霊鳥は後悔した。


 散策中、人間の少女がトンビに拐われそうになっていた。見かねた霊鳥が助けたところ、妙に懐かれてしまった。


「私ね、鷹匠になりたいの!」


(タカジョー?)


「ほら、私さっき、鳶に襲われたショックで気絶してたでしょ? あれで前世の記憶を思い出したの!」


 少女は別の世界から転生してきたのだという。

 幼い頃より「タカジョー」という鷹を操る職人に憧れていたが、極度の鳥"嫌われ"体質で、どの鷹も懐いてくれなかった。その後、タカジョー見習いをクビになり、気分転換に訪れた「ドーブツエン」で、脱走した火食鳥ヒクイドリに襲われ、命を落とした。


「だからね、これは運命だと思うの! 私を嫌うどころか、助けてくれたらアナタなら、私の相棒になってくれるんじゃないかって!」


(無理だな)


 霊鳥は高度を上げ、少女を撒く。人目につかぬ荒れ小屋で、人の姿に


 霊鳥は鳥ではない。この国の新たな後継者たる皇子だった。


 皇子は幼い頃から空に憧れ、いつしか鳳凰に姿を変え、空を飛ぶまでになった。その力は王の後継者たる証であり、誰にも知られてはならない秘密だった。


 新たな後継者がさらなる繁栄をもたらそうがもたらすまいが、鳳凰は現れる。民の前に現れるのは、新たな後継者なのだから。


  🦅


「すっごーい! 鳥さん、皇子様だったんだね!」

「?!」


 信じがたいことが起きた。撒いたはずの少女が、足もとで目を輝かせていた。


「見たのか? というか、なぜいる?」

「私、視力と速さは鷹並に高いから!」

「忘れろ。さもなくば、お前の命はない」

「えー」

「いいな?」

「はーい……」


 少女はトボトボ去っていく。

 これでいい。二度と会うことはないだろう。


「あの娘が、王宮勤めの鳥使いにでもならない限りは……な」


 この国にもタカジョーに似た職業が存在する。「鳥使い」といって、多種多様な鳥を操り、王宮のあらゆる雑事をこなす仕事だ。


  🦅


 十年後、少女は鳥使いとして皇子の前に現れた。鳥に嫌われる体質は相変わらずで、腕に止めた小鳥に激しく突っつかれていた。


「皇子様、ひっさしぶりー! ねー、私の相棒になってくれませーん?」

「ぎゃーッ!」

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少女。鷹匠にあこがれ、霊鳥を追い回す 緋色 刹那 @kodiacbear

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