その夜。ベッドで横になりながら、スマホで検索窓を開く。ぼんやり、調べるか調べまいか、なんて。悩み続けて、下手したら、短い針は一周してしまったかもしれない。


 何に悩んでるのか。幼馴染の名前をネットで検索することの後ろめたさ?毎日ぼんやり過ごしている私との非対称さを知ることの恐怖?


 いやいや。ストーカーでもなければ、私は私だ。何も悩むことなんてない。



 勢いをつけて起き上がり、震える指で「胡桃沢朝陽」を調べる。


 珍しい名前、というのもあってか、すぐにグループの特定ができた。



〈Spark1ing《スパークリング》〉という、6人組のメンズアイドル。HPはきれいに整備され、トップページに載っていたのはライブの予定。


 会場は、俗にいう「メン地下」のような規模ではなく、Zeppやらなんやら、2000人キャパを越えるようなところばかり。


 心臓がまたバクバクする、知りたいわけではないのに、指が止まらない。メンバー一覧からくるみくんのページを開く。


〈胡桃沢朝陽-Asahi Kurumizawa-

 愛称:くるみ/メンバーカラー:ブルー

 センター=レッドなんて誰が決めた?〉


 バチバチにきまった宣材写真。THE王子様、みたいな感じの衣装には、青が散りばめられていて。



「…あお、」


 そんな、ね。たまたまでしょう、思い上がりだ。首を横に振って、邪な考えを払拭させる。





 Spark1ingは事務所内オーディションで結成されて、結成からまだ3年ほどだが、驚異的なSNSバズなどや事務所の力を経て、ここまで上り詰めたようで。

 ネットの海を渡ると、グレーな噂もなくはないが、そんなのあてにしてたら仕方ない。


 今更になって沸いてきた罪悪感にそっと蓋をして、思い出したようにソシャゲのログインに励む。


 明日も朝が早い、物思いにふける時間なんて、私にはないのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スパークリング、スパークラー 藤宮ひめ @myme_o0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ