ほのぼのとしながらも、深いテーマ性も感じさせられる、そんな素敵な紙ヒナさんの話でした。
「穢れ」を浄化するために水に流されてしまう「紙で出来た雛人形」。
もともと、雛祭りとは「穢れ」を肩代わりしてくれる人形を水に流すという「流し雛」が主だったとされる。
本作の主人公は、そんな風に「大事に飾られる雛人形」ではなく、「目的のために消費される道具のしての紙雛」となっています。
しかし、そんな風に水の中へと消えていくだけの「儚い存在」でも、消える間際のその旅には、とても充実した時間が待っていた。
「そもさん」、「せっぱ」
問答形式で様々な生き物と会い、「この世の中とは」という答えを得ていく紙雛。
たとえ短い時間でも、紙雛は多くのものを見て多くのものに触れ、とても豊かな経験を積み重ねていく。
その姿は力強く、「生きる」こととか「この世界」というものを肯定してくれるように感じられました。
読むと前向きな気持ちになれる、とても素敵な作品です。