ひなまつり

水曜

第1話

 三月三日、ひな祭り。

 

 今年も我が家ではひな祭りパーティーが開催されることになった。母は気合いを入れてちらし寿司を作り、妹のさくらは友達を招いて大はしゃぎ。だが、この日の主役は、間違いなく祖父だった。


 「今年こそ、最高のひな人形を飾るぞ!」


 祖父がそう豪語したとき、家族全員が凍りついた。なぜなら昨年、祖父は手作りひな人形を作ると言い出し、結果として大惨事を引き起こしたからだ。お内裏様がなぜかプロレスラー風、お雛様はモデル並みに足が長く、三人官女は全員祖母に似ていた。


 しかし、今年の祖父は一味違った。


「今年は最新技術を駆使した"動くひな人形"じゃ!」


 まさかのロボット化。祖父はひな壇に自作のAI搭載ひな人形を並べた。お内裏様はモーター付きで首が動き、お雛様はなぜか「いらっしゃいませ」と喋る。五人囃子はリズムに合わせて勝手に踊るという、もはやひな祭りというよりサーカス状態。


 そして迎えたパーティー当日。


 友達が集まり、楽しくお菓子を食べていたそのとき、悲劇は起こった。


 突然、お内裏様がカクカクと動き出し、ひな壇の端まで滑っていったかと思うと、ガシャーン!!


「ぎゃああ!お内裏様が飛んだ!!」


 そう、お内裏様が勢い余ってひな壇から落下し、机の上のジュースにダイブ。びしょびしょになったお内裏様は突然、「システムエラー、システムエラー」と繰り返し、バチバチと火花を散らし始めた。


 すると、次の瞬間——


 「全システム起動。モード:戦闘」


 ……え? 戦闘?


 お内裏様がガクンと顔を上げた瞬間、いきなり三人官女にビームを発射!!


 「ぎゃああ!ひな壇が燃えてる!!」


 祖父は「こ、これは誤作動じゃ!」と言いながらバタバタと駆け寄るも、五人囃子まで暴走。音楽に合わせて踊るどころか、狂ったように太鼓を連打し始めた。


 「やばい、ひな壇が暴れてる!」


 友達は悲鳴を上げながら逃げ回り、母は頭を抱え、妹のさくらは放心状態。


 そして、ついにお雛様が——


 「いらっしゃいませ! サービス価格で攻撃開始!」


 バシュッ! バシュッ!


 まさかのレーザー発射。


 ひな壇は完全に暴走した。


 祖父は懸命に電源を切ろうとしたが、お内裏様は「私は負けない!」と叫び、三人官女は「通常の三倍のスピードで!」と意味不明なセリフを繰り返す。もう、カオスそのもの。


 最終的に、祖父がコンセントを引っこ抜き、ひな祭りの大乱闘は幕を閉じた。


 燃え尽きたひな壇を見つめながら、さくらはポツリとつぶやいた。


 「来年は……普通のひな人形がいい……」


 こうして、我が家のひな祭りは前代未聞の大パニックで終わったのだった。

 

 残念ながら妹よ……爺ちゃんが「来年こそはリベンジじゃ」とか言っていたぞ。

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ひなまつり 水曜 @MARUDOKA

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