思い出
中原恵一
思い出
目が覚めたらゴミ捨て場のテッペンに捨てられていた。
自分が何者なのか思い出せない。
雨が降りしきる中、周囲を歩き回るも人影はなく、ゴミをかき分けるブルドーザーの運転席には人型の風船が置いてあるだけだった。
延々と広がるゴミ山の真ん中に黒い直方体のような建物があった。
中にはゴミの中から回収されたと思しき破けた服や靴、割れたお皿、壊れた音楽プレイヤーなどがガラスケースの中に展示されている。
どうやらここは博物館らしい。
しばらく展示をみていると、ボサボサ頭の不健康そうな男が現れた。男はここの管理人を名乗った。
「ここは……どういうところなんですか?」
あなたが尋ねると、
「ここは思い出を保管しておく場所です」
男は答えた。
「私の思い出もありますか?」
「はい」
男はあなたを案内した。数多くの展示品が並ぶ中で、あるガラスケースの前でぴたりと足を止める男。
「これがそうです」
男が指差した先にあったのはよれよれになった一冊のポルノ雑誌だった。
思い出 中原恵一 @nakaharakch2
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