にんにく増し増し、ひなまつり
カズサノスケ
ひなまつり、にんにく増し増し、どんぶり飯
「瑠美ちゃん、ひな祭りだし、たまにはお婆ちゃんと女子会ランチでも?」
72歳になる祖母。この春に私が女子高を卒業する前祝も兼ねて自身が女学生時代に通っていたお店の味を、という事らしい。いつも背筋がピンとしていて、振る舞いの一つ一つがお上品で、生け花もやれば琴も。かつてお嬢様学校に通っていた人なのだからきっと――ちらし寿司、すし屋だ、ゴクリっ。
――と、連れられて来たのが82歳になる女将が昔も今もずっと1人で切り盛りして来たという『大衆食堂まつり』。店構えはお世辞にも…、というしかない。
「春江ちゃんはいつものアレよね?」
「はぁいっ、瑠美ちゃんも同じでいいわよね?」
春江さん、と呼ばれるところしか見た事のないお婆ちゃん。あまり声を張る事のないお婆ちゃん、何だか様子が違って――若返った様な。
「お待ちどうさま。にんにく増し増し餃子定食だよ」
げんこつ2/3くらい?とても一口じゃ頬張り切れない存在感あり過ぎな餃子が3つ。ゴロっとしたじゃがいもとにんじんが入った豚汁は、もはやスープ薄めの肉じゃがと呼んだ方がいいかもだ。そして、どんぶりに白いご飯がで――んと、脇には厚切りの沢庵が5切も。
「いただきまぁす」
ブチュリ、お婆ちゃんが音を立てて餃子にかぶりつくとにんにくの香りが溢れ出す。それを口の中に封じ込めようと言わんばかりにご飯を掻き込むと、ずずずっ、と豚汁をすする。
――こ、こんなに品のない食べ方をするお婆ちゃん、初めてだ。
あっけに取られて眺めていると、温かい内に、と勧めてくる。私は、いつも通りに品のかけらもなく餃子、ご飯、豚汁、沢庵かじりのご飯、といく。
「今時の女学生が羨ましいでしょ。ねえ、春江ちゃん?」
「ええっ。私達の時代は、女が大口なんか開けてはしたない! ですもんねぇ」
女将さんとお婆ちゃんの昔話が始まる。食べ盛りの女学生が男性達の目を気にせず大口を開けて――と、3月3日に始めてみた男子禁制営業。それがいつしか3の付く日は全てに拡大したのが大衆食堂まつりの、ひな祭りサービス、なのだそうだ。
そうだ、と気が付けば店の中は女性ばかりで、大口開けてかつ丼に、海老フライ――。負けじと私も餃子一かじり。
にんにく増し増し、ひなまつり カズサノスケ @oniwaban
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