混沌と化したキラキラしたもの

長月瓦礫

混沌と化したキラキラしたもの


『キラキラしたもの、普遍的なもの、どうですか~?』


今日もテレビで何かが宣伝されている。

よく分からない輪のような何かが取り上げられている。


『普遍的ってなーに!』


『みんなが持っているもの!』


十字の目を盛るピエロが天使の輪をドーナツのように食べる。

天使はピエロの十字の目を逆向きにして、輪っかを奪い返した。

ピエロは天使の羽を素揚げして、天使はピエロの鼻を包丁でむきはじめる。


何がやりたいのか、よく分からないCMだ。

妙に頭に残るリズムでアニメが展開されていく。


『キラキラっと契約しませんか~? 今なら安寧の未来が約束されています!』


天使とピエロは両手を上にあげて丸を作ると電話番号が表れる。

ここに電話したヤツは何人いるだろう。

少なくとも、二人知っている。


「兄さん、あんねいって?」


「……パパとママがいない時間、かな」


「じゃあ、ずっと遊んでいられるんだね」


「そうだな。何か食べるか?」


冷凍庫を漁るとアイスが出てきたから、チョコレート味を翔に渡す。

残っていたバニラ味の封を切る。

定期的に掃除しているから、そんなに古いものではないはずだ。


学校の宿題は終わったのに、これ以上、何をやらされるのか。

ずっと遊んでいたいけど、それはできないのは分かっている。


時間もパパもママも消えればいいのに。

そんな考えが浮かんでは消える。消えるだけだ。


「ごめんな。もうちょっと勉強ができればよかったんだけど」


「そんなことないよ。ちょっとやりすぎなだけだって」


いつも笑っているが、傷が絶えない。

ばんそうこうはいつになったら消えるのだろうか。


『ソレっ、キラキラタライ~っ☆』


CMが終わり、アニメの続きが始まる。

妖精が杖を振ると、壁の額縁がすべて吹っ飛んだ。

サングラスが家から出てきて妖精を追いかけまわす。


『ソレっ、お前もキラキラになーぁれっ☆』


杖を振るとサングラスが爆発し、消え去った。

空が一気に暗くなり、星が降ってくる。


『キラキラ光る~夜空のおほしさま~♪』


妖精が踊っていると、画面に虹色のノイズが走る。次の瞬間には元に戻っている。

もう何度も繰り返しているから、何が何だか分からなくなる。

叩いても蹴っても変わらないからもう諦めた。


「テレビ、直さないのかな」


「新しいのを買う気もないみたいだし、別にいいんじゃないか?

壊れたらスマホで見ればいいだろ」


「それもそっか」


二人がもう少しで帰ってくるから、部屋に戻らないといけない。

俺はテレビを消した。

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混沌と化したキラキラしたもの 長月瓦礫 @debrisbottle00

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