匂い

よつ葉あき

元カレ


​─────あ。


反射的に振り向いてしまった。

2人組の男性が歩いてるのが見える。


もしかして⋯⋯。


と思わず歩みを止め彼らを見続けていると横顔が見えた。


⋯⋯違った。



「ちょっと! 急に立ち止まってどうしたの?」



先に行ってしまった友人が、私が付いてきていない事に気付き大きめな声で言った。

私は駆け足で追いつくと「ごめん、なんでも無い」とまた友人と歩きはじめた。



もう顔も声も思い出せない───元カレ。


別に未練なんてないはずなのに、ふとした時にその匂いを感じると思い出してしまうのだ。


カレに柔軟剤、シャンプーを聞いて買ってもみたがどうも違う。

ほんと、なんの匂いなんだろ。



「この後、ファミレス行く?」

「あ、うん」



こんな会話で、私の中からまた──元カレは消えた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

匂い よつ葉あき @aki-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ