第40話

頭の中でぐるぐると言葉を探していると、日野くんが口を開いた。


「急にすみません」


「ううん、大丈夫だよ」


「あの…昨日の質問。逆にしていいですか?」


コクリと頷いた。


「相原先輩、今好きな人は?」


「いるよ。」


心の扉の鍵を日野くんが一つずつ開けていく。


「へぇー。どんな人ですか?」


「サッカーやってる人」


「他には?」


その時がじりじりと近づいてきているのを感じる。


この時間を楽しむかのように、日野くんとちょっとずつ答え合わせをしていく。


「年は一つ下」


「他には?」


「一緒に応援団やってた人」



「俺?」


「…うん」


俯いて、小さく答えた。


ザッ


視界の端で日野くんが立ち上がるのが見えた。


私の前にしゃがみ込むと、日野くんの手がそっと私の手に触れる。


驚いてぱっと顔を上げると、思っていたより近くに日野くんの顔があった。


ドキドキドキドキ


聞こえちゃうんじゃないかってくらい、心臓がうるさい。


すると、日野くんはニコリと笑って「俺が好きなのは相原先輩だよ、ずっと」と言った。


大好きな笑顔がそこにあった。


「私も、日野くんのことが…好きっ」


同じ気持ちになれたことが嬉しくて、涙がぽろぽろと溢れてしまう。


「初めて、好きって言ってくれた…」


「これからはたくさん言うからっ」


「…じゃあ、もう一回、付き合って下さい」


「はいっ…末永くよろしくお願いします。」


口を結んで、にやけないように懸命に堪える。


「変な顔っ」


と言って日野くんは笑った。


その笑顔につられて、私も泣きながら笑った。


「もう絶対離れんなよ…二葉」


「うん、離れないし離さないっ」


ぎゅっと抱きついた後、ゆっくりと体を離すとどちらからでもなく自然と唇が重なった。


少ししょっぱいキスの味とあまりの幸福に体中がビリビリとする。


「二葉も名前で呼んでよ」


「…勝利、大好き」



たくさん遠回りをした。


でも、遠回りをしたからこそ今の二人がいる。


臆病で不器用で、自分の気持ちはうまく伝えられないけど…


これからは何度だって言ってやる。


日野くんが、勝利が好き。大好きだと。


end.

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遠回りの二人 @shirokuma333

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