イエロスリクレイム

田んぼの左上

第1話「邪竜」

 最近、妙な夢をみる。


 忘れるべきでないことを忘れたような感覚に陥る


 覚えているのはそこには5人が立っていると言うこと…


 これが何を表すのか


 何かを伝えようとしているのか


 俺には全くわからなかった。


 ただ一つ、聞いたこともないのに聞き慣れた声で一言


 「…って」


ーー超大陸国家アナトス


 小さな宿屋の息子で冒険者のジェイクは最近見る妙な夢について考えぼけぇっとしていた。その途端後ろから強い衝撃が加わった。


「ジェイ!シャキッとしなさい!全くあんたって子はね?…」


 長い説教が始まると思った。


 母さんが話し出して30秒もしないうちに勢いよく扉が開いた。


「すまないけどまだ開店前な…」


 そこに立っていたのは身なりの良い冒険者だった。おれは冒険者の端くれだからわかるがあの冒険者たちはこの国のS級冒険者。冒険者は話出した。


「近々古来よりの敵、ゴート達のガーディアンだったとされる邪竜の討伐が議会で可決された。この作戦は多くの冒険者が必要なため招集にきた。明後日までに王都東門に集合してくれ」


 母さんは心配していた。しかしこれは絶好の出世チャンス。流すわけにはいかなかった。


「俺…行きます!」


冒険者は少し頷き感謝すると言って立ち去った。


「ジェイ」


「分かってるよ母さん」


「聞きなさい」


「…」


「必ず帰ってきなさい。」


とても危険な仕事だ。冒険者関連に疎い母でも直感的に感じたのだろう。しかし死ぬことなんてさらさら考えていない。それにS級冒険者も何人も来るんだ。負けるはずがない。


「母さん、帰ってきたらガウのチーズとピグのピグバラ焼食わせてな」


 俺は早速準備にかかった。


ーー2日後王都東門

 そこにはとてつもない人数が集まっていた。

B級冒険者1500人

A級冒険者243人

S級冒険者15人


総勢1758人が邪竜の討伐に動員された。そして帰還した人数6人、討伐は成功した。


ーー邪竜の巣

 そこには邪竜と言うにはあまりにも美しく、聖なる龍と言うにはあまりにも残酷な龍がいた。攻撃を仕掛けた瞬間B級冒険者の半分が即死した。邪竜の尻尾の振り払いの風圧で上半身がミンチになったのだ。俺は無事だったが腰を抜かし立たなくなってしまった。目の前で同期や先輩、憧れてたA級冒険者が次々と死んでいく。また1人、また1人と、彼らと目が合うたびに俺は涙が溢れた。S級冒険者は粘ってはいるがダメージを与えてるようには見えない。S級冒険者達が死んだ。5人以外死んだ。俺は見てることしかできなかった。そして気を失った。しかし目の前の映像が脳内に流れてきた。もちろんそこに俺の意思はない。

 俺には分からない。しかし知っている、そんな動きだった。誰もが倒せなかった邪竜と渡り合い討伐した俺の動き、自分に酔いしれそうになった。まるで沢山の戦士が集合したような動き。S級冒険者達も驚いていた。そしてついに邪竜の逆鱗に剣を突き立てた。その瞬間霧が晴れるような感覚になった。様々な知識が流れてくるようだった。そしてこの邪竜、いや古代龍ヴェリオスについても、ヴェリアスはゴートに使える龍だった。そしてゴートの知識も流れてきた。しかし理解はできなかった。ただそこには5人しかいないはずのゴートとは別の6人目がいた。



           次回「憂のモルガナ」

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イエロスリクレイム 田んぼの左上 @tanbonohidariue

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