君へ…「元カレ」

あかり紀子

LINE

出会いはサークル 同じ趣味を持つ仲間の中にカレはいた

最初は何も感じなかった

それなのに気付いたらカレを目で追い

カレの声が心地よくて

カレに話しかけられるのが嬉しくて


月日が流れ 私はカレのことが好きなのだと気付いた

それでもカレは人気者で カレもまた誰にでも優しくて

私に優しくするのも ”誰にでも”の中のひとりだと思っていた


初めてLINEが来た時には 心が今まで経験したことがないくらい

舞い上がっていた

「元気?」

たったひとことのLINE

それなのにどうしてこんなに心が躍るんだろう


それから私がピンチの時にはいつだってすぐに気づいてくれて

「元気?」

たったひとことのLINE

「元気だよ」

返す私に

「うそつきだね」と返すカレ


そうだよ 私はうそつきだよ

自分にも みんなにも

いつだって弱音がはけない


カレはそれを見通すかのように

「うそつきな人きらいじゃない むしろ好き」

と返してきた


どういうこと?

これはどういう意味?


私を混乱させないで 私の好きをこれ以上大きくしないで

返事が返せないまま終了したLINE


それからも私が落ち込んでいる時には必ず「元気?」とLINEがくる

相変わらず「元気」と返す それだけの関係だった


なのに「君が好きなんだ 放っておけない」なんて言われたら

私の気持ちは抑えきれなくなる


必死に抑えて「放っておいてくれて大丈夫」と震える指で返す

カレの”好き”の意味を考える

みんなと同じくらい”好き”なのだと言い聞かす


カレは人気者 私だけのものになるなんてあり得ないと言い聞かす

カレは優しい 私にだけでなくみんなにと言い聞かす


だけどあの日

初めて電話した時に言われた「好き」は私の気持ちのたがを外してしまった

溢れ出した私も好きだと伝える私を 気持ちが溢れ出した私を

優しく受け止めてくれた


ずっと想い合っていたのに私が言わないから先に進めなかったんだとカレは言った

最初に好きになったのは私…

そう思っていたのに同じ時期にカレも私を好きになっていたのだと分かった


この日 私たちは想いを伝え合い恋人となった



遠距離恋愛を自分がするなんて思ってなかった

だけど毎日のLINEは私たちの心の距離は縮めていった


そう思っていたのに…


月日が流れLINEの回数も減ってきたなと感じていたあの日


カレのLINEから「別れよう」の文字

理由を聞くと彼女が出来たと


そうか…

だからLINEの回数も減ったのか


その短い文字たちがカレを私から遠ざけていく


「分かった」


私も短い文字だけを送り返した


私たちの恋はたったこれだけで終わった


そう思っていたのに…


「逢いたい」

消せずにいたカレのアカウントから信じられない文字

心はザワザワした 指が震えた


私は返信することが出来ずそのままアカウントを削除した


風の便りで聞いた話 カレは別の人と結婚したと

あの日「逢いたい」と送ってきたのはどんな意味があったのだろう


もう確かめることも出来ず 私たちは別々の道を歩むことになった

あの日の言葉の意味は もうどこを探してもない

あるのは私の中の カレへの想いだけ


それから何年も忘れられなかった


だけど…


カレとの想い出は 私の中の想い出の箱にそっとしまい

隣にはお揃いの指輪をした男性がいる

そしてカレは本当の意味で元カレとなった

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君へ…「元カレ」 あかり紀子 @akari_kiko

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