英雄の里帰り
テマキズシ
英雄の里帰り
英雄が死んだ。彼は私の友だった。
エイリアン共から我らの母星を取り戻すために、敵の母船に自爆特攻を仕掛けたのだ。
私は彼が特攻を仕掛ける前に渡してきた手紙を手に取る。彼は母星から抜け出す前に、家族をエイリアン共に殺されている。この手紙は故郷に眠る家族達に宛てられたものだった。
「…ようやく……終わったよ。お前のおかげだ。ありがとう。」
あの悍ましいエイリアンとの戦いは数十年にも及んだ。最初はボロ負けだったが、同じエイリアンにやられた宇宙人同士で同盟を組み、何とか戦況を押し返す事が出来た。
自動ドアを通り、ガラス張りの廊下から外を見る。美しい宇宙の光景も、もう慣れてしまった。しかし今日はいつもの光景から一つだけ違う物がある。
我らのふるさと。母星が目の前にあった。
今ではこの宇宙船から産まれた子のほうが多い。しかし廊下を見渡すと若い子たちが呆然とその星を見ている。彼らも分かっているのだ。この星こそが私達のふるさとだと言うことを。魂で理解しているのだ。
「……ああ。」
涙が止まらない。ようやくあの悍ましいエイリアン達から取り戻すことができたのだ。
多くの仲間が奴らに捕まり、体を解剖され道具として利用されてきた。奴らの研究所を襲撃した時は、並べられた女子供の死体を見て吐き気を覚えたのは記憶に新しい。
しかしそれ以上に気味の悪かったのはエイリアン共の姿だ。
我らとはまるで違う生命体。目が2つしかなく、鱗も無い。白や黄色、黒色といった様々な色の皮膚が丸出し。
この世の存在とは思えない姿だった。
だが今は奴らのことなんて忘れよう。ふるさとに帰れるという喜びを胸に、我らは地上に降り立った。
英雄の里帰り テマキズシ @temakizushi
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