推理のロジックがとても美しく、自分でも謎を解いてみたい、と自然に考えさせられる作品でした。
主人公はかつて猟師をやっていた老人。彼は孫娘の香が学校でいじめに遭っていたことが原因で死んだと知り、復讐を決意する。
いじめの首謀者である沙織子を殺害する方法を模索し、「つらら」を使うのが最適であることに気づく。
ネックとなるのは、「つらら殺人」。推理クイズなどの「基礎編」でも登場する、定番中の定番な殺害方法。
このアイデアが使われたのは、古くは大坪砂男(「魔法少女まどか☆マギカ」を書いた虚淵玄の祖父)の「立春大吉」という作品にまで遡れ、いわゆる古典中の古典、基本中の基本とも言えるほどの有名なもの。
そのアイデアを「倒叙」という形で緻密に描き込むことで、「第一級の推理ゲーム」として昇華させているのが本作品の特徴です。
その上で、探偵役である「守田守(もりた・まもる)」が論理的に解決するという形式を取り、「読者への挑戦状」が出されているのも面白かったです。
「なぜ、守田は主人公の老人に疑いを持ったか?」
「主人公の老人が取っていた、『違和感のある行動』とは何か?」
「主人公の老人が見落としてしまった、『明らかな不自然ポイント』とは何か?」
この三つのポイントを読者は一緒に考えていくことになります。
二つ目は割と一目瞭然。一つ目はしっかり読み返すと「なるほど」と思える点が。そして三つ目は「うーん」と頭をひねらされる。
そして最後まで読んですっきり。なるほど、と気持ちが晴れやかになりました。
「つららで殺害」という定番トリックをリアルな世界観で描出してみせ、更に推理としても緻密に組み立ててみせた本作。
読み物としても推理ゲームとしても第一級の楽しさがありました。
これから読まれる方は、是非とも二話目の出題編のところで一度立ち止まり、一緒に提示されたポイントについて考えてみて欲しいです。
とてもしっかり組み立てられた推理作品。強くオススメします!