瞳に悪魔を、花束にアメジストを

@siki_oriori

瞳に悪魔を、花束にアメジストを/四季 折々

作者:四季 折々


【色分けされている台本】

『瞳に悪魔を、花束にアメジストを』(60分 その他 3人用)

作者:四季折々

https://taltal3014.lsv.jp/api-server/public/share/script/7320


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【登場人物】


アルノー♂:騎士。ジプシーを毛嫌いし、自国のためと力を振るう。

      プライドが高く、話し方も高圧的なところがあるためか、怖がられることが多い。


べレニス♀:心優しい女性。褐色の肌、紫色の瞳を持つ。

      ロジェと共に旅をしている。コンプレックスを抱いている。

      愛称は「ベス」。


ロジェ(不問):老人。褐色の肌。

        ベレニスと共に旅をしている。ベレニスのことをいつも気遣っている。

        親ではないが、代わりのような存在。


スラム(不問):貧困外に住んでいる子供。


ジプシー(不問):貧困外に住んでいる人。騎士に殺される。


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【配役一覧】※兼役あり


アルノ—(♂):


ベレニス/スラム(♀/不問):


ロジェ/ジプシー(不問/不問):


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比率:1 :1:1


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オンリーONEシナリオ2526

2月、誕生石アメジストをテーマにしたシナリオです


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ー台本使用規約についてー

・各種配信媒体にて、上演することは自由です。

 使用する際、任意ではありますが、励みになりますのでご連絡をいただければ幸いです。

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・何かございましたら、ご連絡いただければ幸いです。

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・著作権は放棄しておりません。


皆様に楽しんでいただけますよう、上記を守って遊んでください


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※サリュ―:フランス語で、挨拶を意味します


※グーテ・ナハト:ドイツ語で、おやすみを意味します


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以下、本編




アルノー:(M)雄大な自然、伸びて手入れのされていない背高草。近くにある湖は、山の影や空を模写しており、波紋が広がればその姿を隠す。

      そんな場所に、か弱そうな少女がそろそろと歩いている。背の高い草のせいだろうか、歩きづらそうに顔をしかめており、近くにいる俺に全く気付く素振りがない。



アルノー:おい、お前。こんなところ一人で、何している。



ベレニス:はっ!ご、ごめんなさい!怪しい者じゃないです!



アルノー:この辺りに集落などないはず……どこの者だ!



アルノー:(M)そう、この草原では、ただただ広大な土地が広がっているだけで、人が住むにはあまりにも過酷な環境だった。

      山菜にしても、採れるものと言えば、ろくに腹が膨れないほどの微々たるものしかない。

      近くにある湖の魚が唯一の救いだろうが、果たしてどれくらい生息しているのやら。

      ゆえに、好き好んでこの地に根を張るモノなどいやしない。しいて言えば、草木を餌にしている動物くらいだ。



アルノー:答えろ、どこの者だ!



ベレニス:……私は訳あって、流浪の民をしてます。今夜はこの地に根を下ろし、明日になればまた違う場所へと放浪する予定です。この辺りで定住しているわけではありません。



アルノー:ほぉ。



ベレニス:ところで…あの、失礼を承知でお尋ねします、高貴な方とお見受けします。なぜこのような場所に…?



アルノー:答える義理などない!それよりも、こんなところで何をしていたんだ。

     その魚はなんだ。まさか、盗みを働いたがゆえに逃げおおせようと考えて…!



ベレニス:あ、これは…あそこの湖で捕った魚です、盗みなどしていません!



アルノー:誰が信じられるか!どうせ街に入り、盗んだのだろう!

     (剣に手をかける)貴様ぁ…!



ベレニス:まさか、そんなこと!どうかここは見逃していただけないでしょうか。

     もちろん、明日には去る予定ですので、どうか…!



アルノー:いや、騎士の名において見逃すことはできかねる。最近のこともあるしな…。

     罪の潔白を証明して見せろ!そのために俺は、貴様を監視させてもらう。



ベレニス:そんな…。



アルノー:貴様に拒否権はない。さあ、身を置いている場所まで、案内してもらおうか。



アルノー:(M)ジプシーとは、根無し草ゆえに、娼婦の真似事や、金がなく盗みを働く奴、乞食など、犯罪を犯すものが多いとされている。

      さらにここは国境(くにざかい)に近いこともあり、なおのこと警戒していたのかもしれない。だが、私は――。





ベレニス:(タイトルコール)瞳に悪魔を、花束にアメジストを





アルノー:(M)話を聞くと、どうやら一人ではないらしい。

      兎にも角にも、少女について行き、身を置いている場所へと案内させることにした。

      ――数分歩くと小さなテントのようなものが見えてくる。麻のような布に、いくつかの木を組み合わせた三角型のテント。

      素材も相まって簡素な造りをしているため、2、3人入るのがやっとの大きさだ。入口らしき隙間を、少女が先頭で中に入ろうとする。



ベレニス:こちらに、身を置いてます。少々お待ちください、中にもう一人いますので…。



ロジェ:(中から声をかける)ベス、おかえり。おや……誰かいるのかい?



ベレニス:(中に入る)あ…ロジェ、実は…。



アルノー:(中に入る)サリュー、実はこちらの………あぁなんだ、お前もか。

     こいつが一人歩いていたのだが、お前の娘か?。



ロジェ:このような場所に、なんと……。



アルノー:質問に答えろ!



ロジェ:…血は繋がっておりませんが、家族のような存在です。私の自慢の子で…。



アルノー:(言葉に被せる)ならばしっかり、手綱を握っていろ!こんなところをうろつかせるなど、何を考えている!



ロジェ:……僭越ながら、その子が外にいたのは、食料確保のため致し方ないこと…。



アルノー:ならばなおのこと、我が国に立ち入らないよう監視をさせてもらう。こんなところにジプシーがいたんじゃ、たまったものじゃない。

     私は、この近くにある国の騎士だ!拒否権はもちろんない、従ってもらう。いいか、妙な動きを見せれば、即座に首と胴体を切り離してやるからな。



ロジェ:その子が何か粗相をしたのなら謝ります。明日にはここを去る身、騎士様のお時間を取るわけにはまいりません…。

    何卒ご容赦を…。



アルノー:いいや、お前らジプシーどもは、我が国にどれほどの不利益をもたらしているか…!

     目を離した隙に何をしでかすか、わかったものではない。これは命令だ、再度拒否をすれば……!



ロジェ:……仰せのままに。それにしても、随分と殺気立っておられますが、いったい…。



アルノー:質問もするな!スベテにおいて、私の許可なく発言すること禁ずる!



ロジェ:せめて、お名前だけでも!



アルノー:(被せるように嘲笑う)はっ、ジプシーに名乗るなど名などないわ!貴様らはただのジプシーで、俺は騎士。

     決して慣れあうつもりはない、心しておけ!



ロジェ:……かしこまりました。騎士様の仰せの通りに…。



ベレニス:ロジェ……。



アルノー:では、俺は報告があるのでな。また明日、貴様らの監視をするためにここへ来る。

     いいか、くれぐれも逃げおおせると思うなよ…?





0:アルノー、出ていく





ベレニス:ねえ、これからどうなるんだろう。



ロジェ:……大丈夫だ。すぐに解放されるよ。

    それよりも、今日は何を捕ってきたんだい、ベス?



ベレニス:あ…えっとね、ちょっと歩いたところに湖があって、魚を捕まえたの。



ロジェ:おお、なんと立派な。良く捕ったね。これは明日の楽しみにして、先日罠に引っかかったウサギを食べようかね。

    さあ、用意を手伝っておくれ。



ベレニス:うん!ミルクもあるから、シチューがいいな!



ロジェ:ああ、いいね。それじゃ、準備をしよう。





0:翌日の朝。テントに影。入口の布を上げ、アルノーが姿を現す





アルノー:やあジプシーども。歓迎のアイサツは無しか?



ロジェ:騎士様、これは失礼いたしました。こんな朝早くにお越しいただくとは……朝食を一緒にいかがです?



アルノー:冗談を。ジプシーどもと食卓を囲むなど、身の毛もよだつ。それよりも、あの女はどうした。逃がしたなどとバカげたこと……!



ベレニス:(テントの外から)ロジェ、薪を拾ってきたよ!だから……あ、騎士様、おはようございます……。



アルノー:……。



ロジェ:おお、ベス、ありがとう。どれ、すぐ行くから、少し外で待っていなさい。



ベレニス:(騎士を気にしながら)あ、はい…待ってる、ね。




0:べレニス、覗いていた顔をひっこめ、外で待つ




ロジェ:……余計なお世話かもしれませんが、視野は広い方が、余裕を持てますよ。



アルノー:何を!



ロジェ:戯言だと思ってくだされ。私はただ、そう見えただけでございます。



アルノー:はっ、見当違いも甚だしい!俺はただ、お前らが何をしでかすか。



ロジェ:我らは何もいたしませぬ。騎士様には信じられないかもしれませんが……。



アルノー:信じられるものか!ともかく、俺は騙されんぞ。せいぜい皮を被っておけるのも今の内だ!



ロジェ:…しっかりと胸に留めておきます。

    では、あの子が待っておりますので、これで失礼して…。

    (外に出る)待たせたね、ベス。さあ、ご飯にしようか。





0:ロジェ、外に出る





ベレニス:(小声)…大丈夫だった?酷い事されてない?



ロジェ:大丈夫だよ。ほら、せっかく作ってくれた朝食が逃げ出してしまう。しっかり食べないと、今日動けなくなってしまうよ?



ベレニス:…うん!昨日捕った魚、上手く捌けてるかな?



ロジェ:どれ……ああ、上手くなったね、ベス。とても美味しそうだ!



アルノー:(M)先ほどの発言、言葉に、体が動かなくなってしまった。

      外にいる少女は笑っている。あの老人と朝食を共にし、楽しい様がわかるキラキラと光る瞳。

      とても、眩しい…。





0:――2日後。





アルノー:(M)――そして2日が過ぎ、今日も太陽が南西に差し掛かって夕刻となっていく。

      老人は相変わらずテントの中におり、外にあまり出ようとしない。ゆえに、少女がまた食材を調達するため、移動を始めようと声をかけてきた。



ベレニス:……あの、私はこれから、この先の湖へ行き、魚を捕りに行きます。騎士様は一緒に来られますか?



アルノー:無論だ。テントのあいつはともかく、外をうろつくジプシーが何をしでかすかわからないからな。



ベレニス:…わかりました。では騎士様………手伝ってください!



アルノー:……なんだと?

     (剣に手をかける)お前、誰に物申しているのかわかっているのか!



ベレニス:……はい、けれども、こう一緒にいて、見ているだけでは退屈かと思いました!



アルノー:だからなんだ。それが手伝うことにどう繋がる!



ベレニス:(間髪入れずに)私は!そんな退屈な騎士様とお話がしたいんです!



アルノー:……。



ベレニス:…少しでもいいんです、私は、”騎士様”とお話がしたいんです。



アルノー:(M)震えながらも、彼女のまっすぐな目が、スベテを見通すアメジストのような瞳が私を映す。



ベレニス:……。



アルノー:(M)真実を映し出すように、私を”誠実”に捉えるそれが、私の心を掻き立てる。



アルノー:高貴なる騎士は、そのような庶民の真似事など……しかもジプシーと一緒に!



ベレニス:ここは国の外です!広大な大地に、身分も格差もありません!…ですから、ほんの少しでいいんです。自然を楽しんで、会話を楽しんで、もっと楽にしてください…。



アルノー:(M)随分と豪胆な申し入れだった。私に貶され、罵声を浴びせられ、理不尽なことをされているのにも関わらず。その証拠に、緊張した体は細かく震え、まるで獲物として狩られる小動物のようだ。



アルノー:……私が怖くないのか。



ベレニス:怖くないと言ったら、嘘になりますが…けれども、怖がってたら始まりません。



アルノー:はは、私は貴様らジプシーどもと慣れあうつもりはないと申したはずだ。それを――。



ベレニス:(遮るように)騎士様、ここには、私たちしかいません。…囚われなくて、良いんですよ。



アルノー:……囚われること、なく。……お前は、不思議な奴だな。



ベレニス:……。



アルノー:……今回だけだ。お前の行動や考えが、国に害をもたらすものではないか、確認するだけだ。



ベレニス:…!

     ふふ、では行きましょう、騎士様!初めてお会いした場所の近く、あの湖に行きます!

     あの、意外とあそこにいろんな魚がいてですね…!(アルノ—の手を引く)



アルノー:おいっ、貴様気安く…!はぁ……。



アルノー:(M)手を引いて、嬉しそうにはしゃぐジプシー。本来であれば振り払うところを、何故か委ねて進む。

      不思議な、娘だ。そして、その紫色の瞳に宿る強さも。





0:テントに戻る2人。宵闇の中、ロジェとアルノー、べレニスは焚火を囲んで、夕飯を取っている





ロジェ:どうですかな、騎士様。ご自身で捕った魚は、口に合いますかな?



アルノー:……あぁ。



ベレニス:それはそうでしょう!その魚を、ロジェと私で調理しているんですから!

     それに、使っている香辛料や調味料も前にいたところでいただいて、香りもいいですし、味にも変化を付けられるんです!



アルノー:そうか。



ベレニス:それから、捌き方なんですけど…!



ロジェ:ほらベス、お喋りもいいが、ご飯が冷めてしまうよ。



ベレニス:あ、せっかく作ったのに!(ご飯を頬張る)もぐ、もぐ。



アルノー:…自然と共に、力強く生きているのだな。



ロジェ:ええ、そうです。…放浪して2か月経ちますが、しかし自然を舐めていると痛い目に合います。

    それこそ、ここまで来るのに、いろんなことがありました。

    以前住んでいた国とは、また違う生活をし、適応していかねばならないのです。



アルノー:…なるほど、このように生活ができているのも、順応したからゆえに、か。



ロジェ:自然だけでなく、いろんな国や街での適応も求められます。

    …この子には、過酷な旅路でしょう。



ベレニス:大丈夫よ、ロジェ!私、毎日楽しいわ!



アルノー:そうか、強いのだな、貴様らは……。

     (小声)アルノー、……アルノーだ。



ベレニス:…!アルノー、様!あ、べレニスです!!



ロジェ:ふふ、ロジェです、アルノー様。



アルノー:べレニスに、ロジェか…。すまなかったな。



ベレニス:ふふっ、明日も一緒にご飯を捕りに行きましょう、アルノー様!



アルノー:(M)外ではあるが、食卓を囲んでの談笑。久しぶりの温かさに、戸惑うばかり。

      相も変わらず、少女、べレニスの笑う顔に引きつけられてしまう。



ベレニス:アルノー様?私に何かついてますか?



アルノー:いや、なんでもない。随分と美味しそうに食べるのでな。



ベレニス:でも、そんなに見つめられると、恥ずかしいです!



アルノー:それは、すまなかった。



アルノー:(M)いつもより食事が美味しく感じたのは、自分で捕ったからだと、自分に言い聞かせた。

      しかし、これから起ころうとしている出来事について、俺はすっかり忘れていたのだ。



アルノー:では、馳走になった。明日も来る。



ロジェ:ところで、いつまで我々を監視するのでしょうか?



アルノー:…そうだな、貴様らに話すか。

     監視する理由だが、この地はまもなく戦場へと変貌する。



ベレニス:戦場!?そんな雰囲気は、感じられませんが…。



アルノー:いや、隣国のスパイがたびたび足を踏み入れていてな。

     最近、自国の軍事情報が洩れていたことが発覚した。

     それゆえに監視体制が厳しい。



ベレニス:だから、あそこにいたのですね!



ロジェ:もしや、私らをスパイだと?



アルノー:いや、ここ数日一緒に過ごしてみて、お前たちはスパイでないと確信した。

     そこの……ベレニスの目が、な。



ベレニス:私、ですか?



アルノー:…その、紫の瞳がな、まっすぐで。



ベレニス:あ…これは、その…。



ロジェ:(被せるように)アルノー様、彼女の瞳を、どう思いましたかな?



アルノー:……とても、綺麗だ。



ベレニス:え、綺麗……ですか?



アルノー:あ、ああ。……あまり見ない色だが、とても誠実に見つめてくるお前が、眩しいと感じる。



ベレニス:そんなっ!



ロジェ:(被せるように)ははは!そうですか、貴方はそう感じますか。

     ……ベス、よかったね。



ベレニス:……。



アルノー:あ…では、俺はこれで失礼する!もう監視体制は解いてやるから、いつ発ってもいい。



ロジェ:そうですか。ベス、どうする?



ベレニス:私は…その、明日は…。



ロジェ:(溜め息)……じゃあ、明日まではいようかね。明後日にはここを発とう。

     さっきの話を聞いて、あまり長居してはいけない。



ベレニス:うん、わかってる。

     アルノー様、明日も来ていただけませんか?少し、お話が…。



アルノー:構わない。国の外で見張りをする、それが俺の仕事だからな。

     さて、ではいい加減帰るとしよう。……また明日、べレニス。



ベレニス:は、はい!アルノー様!





0:アルノー、その場を離れ、べレニスとロジェ、2人になる





ロジェ:……。



ベレニス:…ロジェ、私の目、綺麗だって。



ロジェ:そうだね。



ベレニス:おかしいのに。おかしいのにね……すごく嬉しかったの。



ロジェ:ああ、そうかい。



ベレニス:こんな目を持って、生まれてしまった私が、許せないのに……すごく嬉しいの。



ロジェ:ベス。



ベレニス:ロジェ、私はおかしい…!喜んじゃいけないのに!ダメなのに!!



ロジェ:……。



ベレニス:初めて、言われた……綺麗だって。

     こんな、”悪魔の瞳”を。



ロジェ:落ち着きなさい。気持ちはわかるが、もう過ぎたことなんだ。

    ……彼は綺麗と言ってくれただろう?



ベレニス:(うなずく)……。



ロジェ:彼はウソをついていたかい?



ベレニス:ううん、そんな感じは、しない。



ロジェ:そうだろう?なら大丈夫だ。

    …明日、それを話すのかい?



ベレニス:うん…。



ロジェ:それなら、しっかり胸を張って、悔いが残らないように話してきなさい。



ベレニス:……わかった。

     ありがとう、ロジェ。今日はもう寝るね。グーテ・ナハト。





0:べレニス、テントへ入る





ロジェ:……ベレニスに、幸あらんことを。

    (溜め息)神様は、あの子に試練を与えすぎる。私も彼のように、あの瞳に何度救われたことか。

    (テントを見る)……おやすみ、ベス。いい夢を見るんだよ。





0:翌朝、アルノーがテントを訪れる





アルノー:サリュー、べレニスはいるか?



ロジェ:おお、アルノー様。湖の方へ行くと言っておりました。ベスが伝えてくれと。



アルノー:そうか、わかった…感謝する、行ってくるとしよう。



ロジェ:もし、ベスの話を聞いて…貴方様が…。



アルノー:私が、なんだ?



ロジェ:…いや、これ以上は無粋ですな。話を聞いてやってください。



アルノー:あ、ああ。



アルノー:(M)べレニスの目について、違和感を抱いている。

      夜に俺が言った、綺麗、という単語に対して、複雑な心情が顔に出ていた。

      それはべレニスだけではなく、笑っていたロジェにもだ。

      ざわつく心を胸に、俺は足早でべレニスの元へと向かう。





0:アルノー、その場を後にし、湖へ向かう

  しばらくすると、湖が見え、座って水面を覗き込んでいるべレニスを見つける。

  アルノーは話しかける





アルノー:…お嬢さん、こんなところで座っていると、落ちて魚のエサになってしまうぞ?



ベレニス:そしたら、その魚の腹を掻っ捌いて、私を助け出してくれますか?



アルノー:はは、そんな魚は、俺の剣で三枚におろしてやる。

     華麗にな。



ベレニス:それは、私も巻き添えですね。



アルノー:見くびるなよ?俺は何といっても、騎士だからな。お前を助け出すために、魚の解体ショーなんて朝飯前さ!



ベレニス:……。



アルノー:……すまない、遅くなった。



ベレニス:いいんです。私が、どこへ行くか言ってなかったのが悪いんですから。

     (立ち上がる)…本当に、ここの湖はとても綺麗です。



アルノー:そうだな。広大な大地で、唯一のオアシスだ。



ベレニス:ええ。…そして、鏡のように真実を映し出します。



アルノー:…ベレニス、もしかして、何か気に障ったことを俺は言ったか?

     もしそうなら、謝る。



ベレニス:……いいえ、違うんです。

     ただ、この目が…綺麗だと言われたのがよくわからなくて。



アルノー:ああ、お前のその目か。私は、騎士の名に誓って嘘はつかない。

     綺麗だと言ったのは本心だ。



ベレニス:それが、おかしいんです!

     …私の住んでいたところでは、この目を……”悪魔の瞳”と呼びました。





0:回想シーン





ベレニス:(M)私の生まれは、とても世界が狭い、小さな農村。貧しくて、食うものに必死な毎日でした。

      唯一、ライ麦やてんさいを育て、街の商人に渡し賃金を稼ぐ。それでようやく賄えるぐらい、貧困に塗れた村でした。

      その中でも私は異質で、村全体から標的にされていました。





0:外にいたベレニス、家に入る





ベレニス:…ロジェ、ただいま。



ロジェ:おかえり……ああ!



ベレニス:……。



ロジェ:どうしてこんなに傷を…またやられたのかい?



ベレニス:……。



ロジェ:べレニス…さあ、こちらへおいで。とりあえず、手当をしよう。



ベレニス:(手当を受けている)…私の目、”悪魔の瞳”なんだって。悪魔を飼っているから、この村は貧しいって、作物が育たないんだって、みんな言うの。



ロジェ:そんなわけないよ。ベスの目はね、神様からのギフトだ。素敵な色に染め上げてくださった。



ベレニス:でも、不吉な色だって…父さんと母さんにも似てない、気持ち悪い目だって…!



ロジェ:そんなことないよ、ベスの目は……。



ベレニス:(被せるように)今日だって、石を投げられた!!



ロジェ:……。



ベレニス:私は、存在自体が罪だって言われたわ!色が違うだけで、人と一つ違うだけで、スベテを否定されたの!

     生まれたことが罪なら、私はどうしたらいいの…?

     母さんも、私を産んで早くに死んだ…父さんも私を恨んで、いつも怒ってばかり…。

     私には、ロジェしかいないの…。



ロジェ:ベス。



ベレニス:なんでみんな、私を嫌うの!私が何をしたって言うの…。



ロジェ:…ベス。



ベレニス:(遮るように)私だって……好きでこんな目に生まれたんじゃないっ!!



ロジェ:(遮るように)ベレニス!



ベレニス:…!



ロジェ:こちらを見なさい。



ベレニス:……。



ロジェ:いいかい。お前のその目は、真実を映し出す。



ベレニス:真実…。



ロジェ:見ている世界が、みな違うだけ。けどお前は、しっかりと広い目で見ようとしている。



ベレニス:…それが、なに?



ロジェ:…お前がここにいるのが嫌なら、私と一緒に、外の世界に行くかい?



ベレニス:え?



ロジェ:ずっと辛い思いをして、私のところに訪ねてくるお前さんを、もう見たくないんだ。

    もっと幸せになってほしいんだよ。



ベレニス:…しあ、わせ?



ロジェ:そう。お前の幸せを作りに、一緒に旅をしないかい?



ベレニス:で、でも、この目を持っている限り、私はどこに行っても不幸を呼ぶ!

     今日だって、お前のせいで雨が降らない、作物が育たない、病気になった……とか。

     私じゃないにせよ、これのせいで……!



ロジェ:(被せるように)ベレニス!



ベレニス:っ!



ロジェ:……お前は、この世界に毒されすぎたんだ。

    外の世界はね、お前の目を蔑んだり、石を投げたり、汚い言葉を浴びせることはない。絶対とは言い切れないが、少なくとも、ここよりは良い所が多いだろう。



ベレニス:…私は、ここにいなくて、いいの?

     外に出て、幸せになって、いいの?



ロジェ:(抱きしめる)ああ、ベレニス…!お前は、望んでいいんだよ。



ベレニス:(M)私は、悪魔を飼っている。ずっとそう思っていました。

      けれども、ロジェは、ロジェだけは私を見ていてくれたんです。



ベレニス:ロジェ、この植物は、なんて言うの!



ロジェ:これかい?これはね――。



ベレニス:(被せるように)ロジェ、あそこの動物はなに!?



ロジェ:ベス、あんまりはしゃがないでおくれ。遠くへ行くんじゃないよ!



ベレニス:(M)旅に出てからは、少しずつですが、世界を…見ました。



ロジェ:こら、ベレニス!ケガをしたら言いなさい!



ベレニス:でも、これくらい大した傷じゃないよ?

     石投げられてた時よりも…。



ロジェ:(被せるように)それを当たり前にしないでおくれ。ケガをしたら、誰でも痛いんだ。

    その痛さに慣れるんじゃない!



ベレニス:……ねぇ、ロジェも、痛いの?



ロジェ:私かい?私はケガなんてしてないよ?



ベレニス:でも、痛そうな顔をしてたよ。



ロジェ:…そうだね。ここが、心がね、痛いんだ。



ベレニス:(M)当たり前だと思っていたことは当たり前じゃなくて、ケガなんて大したことなくて、でもロジェにとっては痛くて。

      私の日常は、間違っているものだと、叱って教えてくれました。



ロジェ:ベレニス、街はどうだった?



ベレニス:……ロジェ、私、買い物できたの!

     追い返されなかった!



ロジェ:おお、そうかい!良くできたね、偉いよ、ベス。



ベレニス:……でも、顔はやっぱりね、嫌そうだったの。

     目を見た途端ね、少しムッとしてた。



ロジェ:でも、買い物はさせてくれたんだろう?

    それだけでも前進じゃないか、違うかい?



ベレニス:…確かに、そうかも。だって、物を売ってくれたわ。



ロジェ:うん、うん。あの中ではそうもいかなかったが、外はこんなにも広いんだよ。



ベレニス:うん!へへ…。



ベレニス:(M)今歩いている世界が私を自由にしてくれる。

      知らなかったものが、溢れている。幸せな気分を味わわせてくれる!

      それでも、どうしても心に纏わりついてくるんです。この呪われた目の存在が。





0:回想終わり





ベレニス:…ですから、貴方の言ってくださった、綺麗が理解できないんです。



アルノー:……。



ベレニス:放浪しているのは、ロジェが気を遣ってくれているんです。

     そこに留まって、何か災害や災いが起きても、私のせいにされないように。



アルノー:だがそれは、お前のせいではないだろう。



ベレニス:…どうなんでしょう。結局私は、いまだにあの世界に囚われているんです。人のこと、言えないですよね。

     でも、これのせいで、私はいつも後ろ指差されてきましたから…。



アルノー:……お前は、それをずっと抱えて生きていくのか?



ベレニス:はい、恐らくそうなると思います。

     狩られる獲物は、狩られる恐怖をずっと覚えていますから。



アルノー:そうか。

     では、ロジェが君にしたように、私からも払拭できるようこれをあげよう。





0:アルノー、アメジストのネックレスを渡す





ベレニス:これは?



アルノー:アメジスト、という宝石だ。



ベレニス:とても、綺麗です。



アルノー:君の瞳は、それと同じ色をしている。透き通っていて、そして力強く、スベテを見通すような…そんな美しい紫色をしている。



ベレニス:そんなこと…。



アルノー:それに私の国では、魔除けの石とされており、悪魔を払う力があるとされているんだ。



ベレニス:えっ。



アルノー:悪魔を宿しているのなら、それを持って行け。…効果があるかはわからないが。



ベレニス:アルノー様…。

     これで、私は悪魔を追い出せるでしょうか。



アルノー:ああ、きっと追い出せる。



ベレニス:……お優しいんですね。最初のころとは打って変わって、驚きです。



アルノー:はは……。



ベレニス:…アルノー様は、どうして騎士になったんですか?



アルノー:……私が騎士になった理由だが、単純にいろんな人を守りたいんだ。

     弱気を助け、強気を挫く!それが俺のモットーだったんだ。

     それこそ、ジプシーも助けようと、俺は奮闘した時もあった。





0:回想





ジプシー:ごほっ、ごほっ!





0:ジプシーのいる路地裏を、通りかかるアルノー





アルノー:は!

     (駆け寄る)大丈夫か!……刺し傷!?内臓が傷ついて、吐血しているのか…今すぐ医者を手配するから、待っていろ!



ジプシー:…どこの誰か存じ上げないが、いいよ。この傷は、お偉いさんにやられたんだ……。

     ジプシーだからと、何してもいいと、酒で酔っ払いながら、刺してきたんだ…何度も、何度も。



アルノー:なんだと…!?



アルノー:(M)私のいる国では、ジプシーは汚物だと、俺は知ることになったんだ。



ジプシー:はぁ……はっ……よく見ると…あんた…刺してきた野郎の格好とほぼ同じだな…。

     ははは、なんだよ。助けるふりして、あんたも…ぐぁ…ごほっごほっ!



アルノー:おい、しっかりしろ!



ジプシー:う、触んな…!こんな…こんなこと…ただ惨めなだけだ…。お前に助けられようなんて……屈辱だっ!

     ぐぅ……ああっ!



アルノー:くそっ!



ジプシー:へへ……こんなところ……生まれてくるんじゃ、なか………った……。(絶命する)



アルノー:…おい!そんな……どうして……。



スラム:お前らのせいだ。国のためと言っておきながら、まるでゴミのように扱うじゃないか。



アルノー:違う、そんなこと…!



スラム:(遮るように)違くない!現に、そこで死んだ奴は、いつも騎士に虐められていた…そいつが何かしたかよ…!

    なんで殺したんだよ、なぁ!



アルノー:……すまない。



スラム:謝るくらいなら、そいつの命を返せよ!なぁ、返してくれよ!!!



アルノー:……すまない。





0:回想終了





アルノー:俺は、その時に初めて知ったんだ。ジプシーやスラムといった貧民街の連中は、俺の知らないところで酷い目に合っているのだと。



ベレニス:そんな、ことが…。



アルノー:騎士団に掛け合って、そのジプシーを殺した犯人を突き止めようとしたんだ。

     けれども、取り合ってくれない。そうして何年かするうちに、俺は諦めたのさ。



ベレニス:(俯く)……。



アルノー:俺は徐々に染まっていった。ジプシーは悪だと、助ける必要のないただのゴミだと。

     ……けれど俺は、その中で心を壊していったんだ。むしろ悪魔を飼っているのは俺の方さ。



ベレニス:違いますよ!アルノー様は、すごくお優しんです。

     こう……上手く言えないんですけど、守りたいのに守れない…太刀打ちできない悔しさで、仕方なく…という感じじゃないんですか?



アルノー:さて、どうだろうな。……もう忘れてしまったよ。



ベレニス:…自分の心を守るのに、必死だっただけなんですよ、アルノー様。



アルノー:そうかもな。けれどな、お前たちジプシーに会って、その心を思い出させてくれたのは…ベレニス、君だ。



ベレニス:わ、私?



アルノー:ああ。君が、『囚われなくて良い』と言ってくれたおかげだ。それを聞いてハッとしたよ。

     しがらみに囚われていたのは、俺だったんだ。君たちを、ジプシーとして一括りにし、本質を見ようとしなかった。

     ……改めて、すまなかった。



ベレニス:あ、もう、いいんです!顔を上げてください!

     確かに、私も最初は驚きましたけど…そういった事情があるなら仕方ないです。それに、私もロジェも、気にしてませんから。



アルノー:そうか…。私も、君たちの事情を知らずに追い詰めてしまったからな…。

     では、おあいこ、ということでどうだろうか。



ベレニス:あ……ふふ、そうですね。おあいこです。



アルノー:はは、やっと笑ったな。

     やはり、ベレニスの笑う顔はとても眩しいな。



ベレニス:え。



アルノー:そうだ、いいか?私は目だけではなく、君の笑う顔も綺麗だと思っている。

     コロコロ変わる表情に、まっすぐな心、何よりも、こちらが思わずつられて笑ってしまうような…。



ベレニス:え、えっと、アルノー様、恥ずかしいのですが…!



アルノー:ふはは、狼狽えて困った顔も、またおもしろいな!



ベレニス:もう、からかわないでください!



アルノー:ははは!



アルノー:(M)彼女の笑った顔が、俺の心に入り込んでくる。太陽のように輝いており、平和を運んでくれるような温かい言葉に、気持ちが緩んでいく。

      ——だが、終わりは一瞬だった。



ベレニス:ふふ…。

     え、あ……ぐふっ!



アルノー:……ベレ…ニス?



アルノー:(M)彼女の胸のあたりに、一本の槍。



ベレニス:ア…アルノー…さ、ま。



アルノー:(M)スベテの時が止まったように、ゆっくりと刃がこちらに向かって進んでくる。



ベレニス:あ、ああっ!



アルノー:ベ……ス。

     はっ!きっさまあ!!!



アルノー:(M)彼女の後ろには、敵国であろう紋章と服、そしてギラついた目をしている人の姿。

      帯刀していた剣で、相手の利き腕を刺し、武器から手を離させる。

      利き腕にさしていた剣を抜き、その勢いを力任せに振りかぶる。息の根を確実に止めようと、首に目掛けて一閃。

      見事に命中し、切った先からは勢いよく血が噴き出す。もがき苦しみ、やがて重力に従って体を大地に任せ、ピクリとも動かなくなった。



アルノー:はあ、はあ……ベ、ベレニス!ああ、血が…。



ベレニス:ア、アルノー…さ、ま?わたし…。



アルノー:喋るな…!



ベレニス:おけ、が…は?



アルノー:いや、ない……だが、ベスの方が……ああ、止まらない、こんな…!



ベレニス:あ……ふふ、初めて、わたし、を…ベス、と…ごぼっ。



アルノー:喋るな…。

     


ベレニス:う…アルノー様、きいて、ください…。私は…。



アルノー:頼む、喋らないでくれ、ベレニス!



ベレニス:いいえ、聞いて、ください!



アルノー:……!



ベレニス:ごほっ!はあ…はあ……あな、たに…惹かれて、いたんです…ごほっ!

     一緒に、魚を、捕って、ごは、んを食べて…話して…すごく、楽しかったんです。



アルノー:ああ、俺も楽しかった…!



ベレニス:目も綺麗って……褒めてくだ、さって…初めて、幸、福だと…思えたんです。



アルノー:当たり前だ、お前に不幸などありはしない。それまでは試練だったのだ、私と出会うための!



ベレニス:ふふ……初めて、この目が……運んでくれたと…。初めて、この目が、良かったと、こころか、ら…そう……。

     アル、ノーさ、ま……。



アルノー:……ベス?……ああ、ベレニス!

     うそ、だ……嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!うわああああああああああ!!!!!





0:アルノー、ロジェの元へ帰ってくる





ロジェ:ああ、おかえりなさ……!ベス、ベス!!



アルノー:(M)抱えているベレニスの元へ、ロジェが駆け寄る。

      特に何も抱くことなく、俺はただ見つめていた。



ロジェ:どうして…アルノー様、いったい何が…!



アルノー:……すまない。



アルノー:(M)起こった出来事を話した。自分でも気味が悪いくらいに、淡々と。

      ロジェは取り乱しながらも、何とか受け入れようとしていることに対し、俺は無感情だったのだ。



ロジェ:…最後にベスは、幸せと、幸福と…そう言ったのですね。



アルノー:……ああ。



ロジェ:そうですか…。アルノー様、ベレニスを、この地に埋葬してあげてもよろしいでしょうか?



アルノー:……ああ。



アルノー:(M)そうして、彼女が好きだと言っていた湖の近く、ロジェと共に地へと還してあげた。

      お決まりの、木の棒を十字架に見立て、縄で縛った後に立ててやる。

      さわさわと周りの草木が揺れるが、不思議と心は波立たない。



ロジェ:……アルノ—様。ベスの目は、どうでしたか?



アルノー:…ああ。とても、綺麗で、温かくて、眩しい。それ以外の言葉は無粋だ。



ロジェ:そうでしたか。



アルノー:……私と過ごしたことで、幸福だと言ってくれた。たかが、紫の…アメジストのような目を褒めたくらいで。

     一緒に飯を食って、話して、それで幸せだと…。そんなことで…。



ロジェ:それほどまでに、嬉しかったのですよ。そして、貴方様の言葉だから、です。



アルノー:…本当に、どうしようもないジプシーだ。くだらない。

     それでいて、くだらない俺は……そんな君に……。



ロジェ:……私は、今夜ここを発ちます。アルノー様、お世話になりました。(去ろうとする)



アルノー:ロジェ!

     ……私は、約束する。私の心を、国を、揺るがないものにすると。



ロジェ:………どうか、お元気で。





0:ロジェ、振り向かずに歩き去る

  アルノー、墓の前で座る





アルノー:……ベス。やはりこれは、お前が持っていろ。あちらでもどうせ、自身の目を蔑み、自身を貶すんだろう。

     アメジストで悪魔を払い、もう怯えなくてもいいんだと、お守り代わりに着けておけ。





0:アルノー、アメジストのネックレスを十字架に掛ける





アルノー:ベレニス、俺もお前に、惹かれていたらしい。もっと早く出会っていれば、お前と共に生きられたかもしれないな。

     ……それも、分からないが(苦笑する)。



―間―



アルノー:今の時期、花が咲いてなくてな。だから、これが花束の代わりだ。

     受け取ってくれ。

     …約束するよ、守れなかったベスの代わりに、他の者を守れる騎士になると。

     どうか、俺のそばで見守っててくれ。



アルノー:(M)その言葉に呼応するかのよう、一陣の風が吹く。

      少し強めの風によろめき、俺はさらに苦笑する。まるで、背中を叩かれたかのようだ。

      気のせいかもしれない。だが俺は、立ち上がり、受け入れるように両腕を広げる。

      そして――。







アルノー:ありがとう。







~fin~

タイッツー

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瞳に悪魔を、花束にアメジストを @siki_oriori

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