第4話

脚本


ーここはイタリアの某警察署


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<俺、なーんかヤバいことやらかしたっけなぁ>


ルーチョはダルそうにポケットに手を入れながら上司のいる部屋に向かった。


〈今頃なら俺、画家のはずなのに...何で国家憲兵の制服着てオッサンの元に向かってるんだろ…〉


ルーチョはぼんやりと今までの人生を振り返る。



幼い頃のことはほとんど覚えていない。

ただ物心ついた時に両親が事故で亡くなって歳の近い兄と離れ離れになり、遠い親戚の養子として迎え入れられたのは覚えている。


そこからがほとんど地獄の日々だった。


1日中ピアノのレッスンやテーブルマナーや帝王学の勉強漬け。


そんな青春時代を送ったルーチョは18歳の時に倉庫にあった要らなそうなアンティークを養父に無断で売り飛ばした金で美大の受験費用と学費に充て、こっそりと名門美大を受験する予定だった。


ところが家出した当日、試験会場を間違えて隣のカラビニエリ(伊の国家憲兵)の試験を受けてしまい、落ちてしまった美大をもう一度受験するお金が足りないので金銭的な理由からそのままカラビニエリになってしまった。


その日から無気力な毎日をルーチョは送っていた。


相変わらずパトロールと称してハトにエサやったりジェラート食べてたりナンパしたりサボりまくっていた。


そして今、ルーチョは上司から急に呼び出されたわけである。


ルーチョは30分遅刻して上司のいる部屋にたどり着いた。


場面転換 ■ 上司の仕事場


ルーチョ「失礼しまーす。マルコ上官はいますか?」


マルコ「モグモグ、ルーチョ君、丁度いい所に来たなぁ〜モグモグ」


マルコはルーチョが遅刻して来たのを全く気にせずカップケーキを食べていた。


ルーチョ「カップケーキを俺に奢ってくれるために呼んだんですか?」


マルコ「違うよ〜ルーチョ君、君にはこの男を調べて欲しい」


マルコはルーチョに写真を渡す。


ルーチョ「えっ!?」


〈父さん!?...なわけはないよな。...となるともしかして〉


そこには一人の青年がタバコの吸い殻が転がっているローマの下町を歩いているだけの写真。しかし青年には只者ではないオーラが出ていた。


まるで汚い掃き溜めに世界遺産の彫刻がそびえ立っているようだった。


しかし男の顔を見ると亡くなった父親と別の所に養子に行ってしまった兄の面影があるような気がするとルーチョは感じた。だが顔は冷たい印象を感じる。


〈兄貴...か?でも兄貴がこんなキリッとしてるわけがねぇーな。泣き虫だけどよく笑ってたから〉


ルーチョ「...この人は?」


マルコ「さぁ?私にもわからんよ。複数のマフィアがらみの事件で必ず関わっているらしい重要人物だそうだ」


マルコはバインダーを取り出しペラペラとその男の資料や写真を取り出してルーチョに見せた。


マルコ「なーんとなくルーチョ君に似てる気がするんだよね〜というかそっくり、親戚だったりする?」


ルーチョは無言で頭を振って否定した。


マルコ「だよなぁ〜でもその男の方がキリッとしていてモテそうだな、ルーチョ君はなーんか抜けてっからモテないんだよなぁ」


〈うわぁー大きなお世話だ〉


マルコ「まぁ、何かの縁だ。顔が似てるし、とりあえず人手か足りないから

この男を調査して欲しい。期待してるよルーチョ君」


〈えー何じゃそりゃ〉


ルーチョ「はーい。調査行ってきまーす」


やる気の無い返事で上司の部屋を後にするのだった。


場面転換 ■スペイン広場

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いつもはやる気が無いルーチョだがこの男が何者なのか気になり調査(という名前のナンパで女の子に尋ねる)を積極的にするようになる。


ルーチョ「チャオ!お姉さん、実は人探ししているんだけどこの写真の人見た事ない?」


お姉さん1「知らないけどこのお兄さんイケメンね」


お姉さん2「スーツも似合うしセンスいいわね~」


〈うわー、写真の奴がイケメンってだけで俺に見向きもしないし奴がどこの誰かもわかんねーからツマンネー〉


ルーチョは少し落ち込んだので近所のスーパーでパン買って鳩にエサをやっていた。


陽照「あの...すみません」


ルーチョ「どうしたの?観光客かな?道に迷ったのならあっちに交番があるからそこで聞いた方がいいよ〜」


陽照「いや、そうではなくて...あっ、申し遅れました。僕は陽照和と申します」


陽照はルーチョに名刺を渡した。


『探偵兼歴史研究家 陽照和』と書かれている。横に記載されていた住所も近所なのでどうやらこの東洋人はここに住んでるらしい。


ルーチョ「歴史研究家さんが何の用?」


陽照「その写真の男...リクの事を多少知っているものです」


ルーチョ「!?」


陽照「あなたの上司のマルコさんに『ルーチョさんと会わせて欲しい』とお願いしたのですが...もしかして僕のことマルコさんからお聞きしてないですか?」


ルーチョ「いやー、聞いてないっすけど。あの上司もいい加減な人だから」


陽照「...そうですか。良かったら私の職場が近所にあるので寄っていきますか?リクについての話も職場の方が話しやすいので」


ルーチョ「じゃあ遠慮なくお邪魔しまーす」


場面転換 ■ 陽照和の職場兼自宅


ルーチョ「うおっ、家の外観は普通の家だけど中は和風だ!畳まである!!」


陽照「日本生まれですので、故郷を思い出す和風のインテリアにこだわっています」


陽照は書斎にルーチョを案内した後、お茶とお菓子を用意してくれた。


陽照「さて、この写真の男、「リク」について知っている限りご説明いたします」


陽照は電子黒板のスイッチをつけ、綺麗にまとめられた資料をルーチョに見せる。


陽照「写真の男は20代前半にしてイタリアを中心にヨーロッパ、アメリカを牛耳るマフィアの真の裏のボスになった男です」


ルーチョ「そっ、そうなんだ」


陽照「お聞きしたい事があるのですが、あなたの祖父はルカルド、父はルイジーノですか?」


ルーチョ「な、何で知ってるの?」


陽照「僕はルカルドさんと友達だったのです。よく勘違いされてるのであらかじめ年齢を言っておきますが僕は50歳なんですよ」


陽照はルーチョに写真を見せる。若かった頃のルカルドと陽照が写っていた。


ルーチョ「え!?そ、そうだったの?全然50歳に見えないしむしろ俺より年下だと思ってた!!...アジア人ってマジで老けにくいんだね」


陽照「話を戻します。単刀直入に言わせていただきますがこの写真の男、リクは貴方の兄です」


〈えっ...そんなわけない。そんなわけないはずだ!!〉


ルーチョ「そんな人が兄貴なはずがないので人違いだ!」


陽照「ですが、ルイジーノさんの子どもはあなたと『ルカ』さんですよね。『ルカ』さんが『リク』だったのです」


ルーチョ「俺の兄貴はイタズラするけど優しくて泣き虫な奴なんだ!!あんな兄貴が何でマフィアのボスなんかになってるんだよ!!」


陽照「もしかして、ルカルドさんのご職業が表の仕事は起業家、裏の仕事はマフィアだったのをご存知なかったのですか?」


ルーチョ「えっ、つまんねー冗談言うなよ何で爺ちゃんがマフィアなんか...」


陽照「このタトゥーを見た事は?」


電子黒板に狼が描かれたマークが表示された。


ルーチョは目を見開いた。


〈このマークは見覚えのある。爺ちゃんの周りのボディーガードの人やメイドさんが体についていたマークだ...〉


ルーチョ「...そんな、まさか」


陽照「マークには見覚えあったのですね。となると『ロムルスとレムスの呪いの件』についてもご存知ない可能性もあるのか」


〈ロムルスとレムスの呪い?学校で習ったけどローマ作った偉い双子だろ?何で呪い?〉


ガシャーン


外からガラスの割れる音がした。


ジリジリジリジリジリジリジリ


陽照「む...?近所の銀行でサイレンがなってますね。何か事件でしょうか。緊急事態ですのでこの話は後、行きますよ!」


ルーチョ「えっ?どこに」


陽照「あなたの出番ですよカラビニエリさん!一緒に行きましょう!」


ルーチョ「え、俺なの!?俺マジで弱いよ、アダルベルトさん(ルーチョの養父)に引っ叩かれるし」


陽照「誰ですか?知りませんよ!たとえ弱くても治安を守るのが公僕の役目でしょ!」


場面転換 ■強盗にハイジャックされた銀行


強盗「手を挙げろ!変な事したら人質を撃つぞ!!」


無抵抗に手を挙げる銀行員と客を見て強盗は少し満足気だ。


強盗「よし、それで良い。俺は裏口から逃げるぜ!!ギャハハ!!!!」


強盗は裏口の扉を開けた。すると


ガンッ


強盗「グヘェ!!」


木刀で殴られてしまった。


木刀の持ち主は陽照和である。


陽照はルーチョを引っ張って木刀持って銀行に向かいそして銀行裏口から突撃して見事に強盗を捕まえた。


陽照「観念しなさい!!ルーチョ君、パトカーを呼んでください。強盗を連行しますよ」


強盗(...クソッ、させるかよ)


〈...は?なんだこの強盗、まだ抵抗するのか!?...というかなんだこの感じ、強盗は口を開けて無いのに気持ちがわかる...気がする?〉


ルーチョの頭の中には何故か強盗が懐に隠してたスイッチを取り出して爆発させるイメージがよぎった。


ルーチョ「陽照さん、そいつ怪しいです!!」


陽照「ウワッ!!」


陽照が柔道技で抑えていた強盗がバカ力で起き上がった。



強盗(こうなったら爆破スイッチを押してやる!!ヤケクソだ!!)


強盗は胸元からスイッチを取り出した。


〈まずい...!!〉


バンッ


スイッチはルーチョの拳銃で軽く撃たれて転がっていった。



強盗「アッ!!お、俺のスイッチが!!」


陽照「ナイスですルーチョ君!!」


陽照は強盗を思いっきり背負い投げして気絶させた。


強盗はピクピクしていたが動かない。


それを見て人質だった銀行員と客は陽照とルーチョに拍手喝采した。


場面転換 ■パトカーの中


陽照「そういえば、何故爆弾のことがわかっていたのですか?」


ルーチョ「...なんでだろう?あのおじさん(こうなったらこの銀行ごと破壊してやる!)って言っているような気がしてヤバいと思ったら体が勝手に...」


陽照「そうですか...」


陽照は考え込んだ顔でルーチョを見た。


ルーチョ「報告書書くのめんどくさいな

〜なんて書こう」


陽照「内容を考えるの手伝ってあげましょうか?」


ルーチョ「やった!ラッキ〜陽照さんグラッゼ!!」


リムジンがパトカーとすれ違う


場面転換 ■ リムジンの中


リク「...何の騒ぎだ?」


高級なスーツを着た男ーリクが後部座席から銀行あたりを見る。


運転手「どうやらテロの未遂事件があったそうですよリク様」


部下「確か...解決したのは新人のカラビニエリらしいですね」


部下はリクにタブレットを渡す。


自分に似ているカラビニエリを見てリクは目を細めて言った。



リク 「...この間抜けそうな奴がか」

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ロムルスとレムスの共闘 @hinatakuti

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