あなたに会いたくて
桔梗 浬
ずっと好き
「郵便です!」
暖かな日が差し込む時刻、場違いなほど大きな声がインターフォン越しに響き渡った。
「日時指定便のお届けです。佐々木由香さま宛です。サインください」
定型文を読み上げるような配達員に「ご苦労様です」と声をかけ、私はそれを受け取った。
そのシンプルな封筒の裏を見ると、そこには懐かしい人の名前が書かれていた。
「……雄馬!?」
とくんっと私の心臓が跳ねる。
雄馬は私の……大切な人。
あれからもうすぐ2年。
私の時計は止まったまま、退屈な日々をただ無駄に過ごして来た。
今頃どうして。
私は陽の当たる窓辺で深呼吸をしてから手紙を開く。
そこに書かれている雄馬の言葉を受け止めるには心の準備が出来ていない。それでも彼の言葉を読まずにはいられなかった。
『大切な由香へ
誕生日おめでとう。
何から書けばいいかわからないけど、僕に残された時間、何か僕にできることはないかって、あれからずっと考えていたんだ。
もうすぐお別れの時がくる。それは君もよく知っているよね。だから、今君にちゃんと伝えなければならないと思い、この手紙を書いています。
多分君を目の前にしたら言えなくなるから、ちゃんとここに残しておくね。
今までありがとう。本当に……ありがとう。
生まれて来てくれて、僕と出会ってくれて……ありがとう。
そして僕を選んでくれて、本当にありがとう。
ずっと一緒にいたいって思ってた。
でもさ、出会いがあれば別れがあるって誰かが言ってた様にさ、その日が来ただけのことなんだって、今はそう思うことにしてる。
だからその瞬間が来るまで、僕は由香を全力で愛します。
だからどうか泣かないで。
それでも君は、その時が来たらきっと泣くのだろうね。
でも、どうか笑っていて欲しい。
それが僕の最後の願いだから。僕は君の笑顔が一番好きなんだよ。
これから出逢う、君の大切な人たちと
いつも笑って過ごして欲しいんだ。
僕が居なくなっても、君は一人じゃない。
君にとって大切な人たちはすぐそこにいる。
だから、由香。
笑って。
次の誕生日を一緒にお祝い出来そうにないから、君の誕生日にメッセージを贈るよ。
いいかい。
家に閉じ籠ることもこれで最後にしよう。
僕はとても幸せだった。
君が居てくれて、微笑んでくれて、励ましてくれて……。
人を心から大切に想う事を教えてくれてありがとう。僕は君が思う以上に、君に出会えて本当に幸せなんだ。
知ってると思うけどさ、由香、大好きだよ。
またね!
雄馬』
「雄馬……」
滲む文字をぐっと胸に押しあて、私は空を見上げる。空はどこまでも青く、二人で病室から眺めたあの時の空と同じだった。
「無理だよ……会いたいよ」
その時封筒がパサっとずれ落ち、中から一枚の写真が顔をのぞかせた。
それは二人で写っている写真だった。
変顔を決め込んでいる雄馬と、大笑いしている自分の自撮り写真だ。
「何これ……変な顔。あは」
そこにはペンで『元気出せ由香!』と書かれていた。
私は雄馬の変顔を見て爆笑したあの日を思い出す。
辛かったのは雄馬の方なのにね。
「ありがとう……最高のプレゼントだよ」
泣いているのか笑っているのか、自分でもわからないほど私は涙する。
「ありがとう……私も、大好きだよ。またね雄馬。大好きっ」
END
あなたに会いたくて 桔梗 浬 @hareruya0126
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