最終話

      ~数ヶ月後~





「いつでもどこでも神の御加護を。みんなの聖女アイドル、リタでーす!」

「「「うぉーーーーっ! リタちゃーーーーん!!!!」」」


 祭壇ステージの上で割れんばかりの拍手と声援を受けているのは、リタ。ではなく、その名を語ったクインである。


「ブレアくん。今日もリタのステージは大成功のようだね」

「あっ。これはこれは、いらしてたのですか」


 ブレアに声をかけてきたのは、教会事務所司祭長社長。つまりブレア達のボスだ。


「リタがいなくなり、クインが代わりに聖女アイドルになると言い出した時は、いよいよ教会事務所を畳まねばならんと思っていたが、まさかこんなことになるとはな。おかげで信者の数は急増。お布施はガッポリ。笑いが止まらんのう、フェッフェッフェッ!」

「まったく。何がどう転ぶかわかりませんな」


 あの後ブレアが意識を取り戻した時、リタは既に旅立った後だった。

 もはやこれまでかと諦めかけたブレアだったが、そこで張り切ったのがクインだ。


「リタの代役やるなら、全力でやらなきゃ」、「リタの可愛いさはこんなもんじゃない」などと言い、必死でレッスンをこなし、完璧なパフォーマンスをこなしたのだ。

 その結果、デビューしてすぐに大ブレイク。今や、押しも押されぬ人気聖女アイドルとなっていた。


「そういえば、本物のリタから小包が送られてきました。なんでも、先日ダンジョンで倒した、レジェンド級のドラゴンの鱗だそです」

「おぉっ、素晴らしい。早速換金しよう。彼女も幸せそうで嬉しいよ」

「そ、そうですね」


 大ブレイクした偽聖女アイドルと、冒険者として活躍中の本物の聖女アイドル。二人の聖女アイドルに振り回されたブレアとしては色々複雑だが、今更どうすることもできないだろう。


(どうか、偽物だとバレませんように。みんなの憧れの聖女アイドルに、スキャンダルは厳禁だ)


 こうして、クインの演じる女装の偽聖女は、今日も元気に信者ファンを魅力するのであった。


「ラスト一曲! みんなを神の下へと昇天させちゃうぞーっ!」

「「「リタちやーーーーん!!!」」」



 完

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聖女と書いてアイドルと読む! だけどこの聖女、実は偽物です 無月兄(無月夢) @tukuyomimutuki

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