第10話 さんぽ

生きていることを ひとつの価値として 日々の暮らしを

確かなものにしようと アキレス腱をしっかりと使って走った。

地面は私を押し上げたし 空気は私を 洗ってくれた。


苦しみは情けの親 悲しみは愛の親。 そう叫びながら

私は姉に手をひかれながら 春になりゆく 二月の冬を

笑いながら 踊りながら 語らいながら 走っていった。


「不思議ね、生きていることは不思議ね」 そう寧音が言うものだから

私は嬉しくなってバウバウ笑ってしまう。 「不思議ね、

生きていることは不思議ね」 私だって同じことを考えている。


生きていることを ひとつの価値として 日々の暮らしを

確かなものにしようと 四肢をしっかりと働かせて 走った。

生きていることは ほえたくなるほど 美しい祝いだった。


お姉ちゃんがいてくれたから。 私は、きっと世界で

いちばんうつくしい獣。 私は、きっと世界で いちばん愛された妹。

分かるかな、寧音 あなたが生きていることが、私にはとっても。


嬉しいんだ (その時、冬の嵐があばれるように吹きぬけました。

私は鼻がいいので、しっかりと気がついていたのです。 この冬の香りの

中には 確かに春の香りがすると。) 私が、寧音の方を向いて


バウ! と笑うと 私の大好きなお姉ちゃんは 私に向かって満円の笑みで

ほほえんだのでした。

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美しき獣(抄) 高田 @dokokanotakada

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