またまた「鶴の恩返し」をハッピーエンドにしてみた

菊池ゆらぎ

第1話

与平は、ある日罠にかかって苦しんでいた一羽の鶴を助けました。


後日、与平の家を「女房にしてくれ」と一人の女性ツルが訪ねてきました。

夫婦として暮らし始めたある日、ツルは「織っている間は部屋を覗かないでほしい」と約束をして、素敵な織物を与平に作って見せたのです。それは高値で売れました。


ある日、与平の兄がぶらりとやって来ました。

兄は家を出て炭焼きをやってなんとか暮らしを立てていました。


気は優しいが風采の上がらない弟に、突然美しい嫁が来たことには仰天しました。

しかも美味い酒や料理を出してくれ、すっかりいい気分になりました。


が、夜更けになり、ツルは「織物をするので失礼します。絶対に覗いてはなりません」と納屋に引っ込んでしまいました。


兄は「ちょっと覗いてみよう」と。

与平は「いけません!約束は守らないと!」と必死で止めました。

しかし、納屋に行ってしまったのです。


「おー!鶴だ!鶴が機を織ってる!」と兄が奇声を上げて走って来ました。

「俺は鶴を捕まえて鍋に入れて食ったことがある…祟りなんだ!」とワナワナ震えています。

そして身支度をして逃げるように去ってしまいました。


与平は出てきたツルに

「兄が覗いて本当にすまなかった。お前は本当に鶴なのか?」


「はい、私は以前助けていただいた鶴です。自分の羽根を取って織物を作っていました。しかし正体を知られたからにはここにいられません」


「頼む。行かないでくれ。愛しているんだ。しかし俺の畑を耕して得られる収入では2人で暮らしていくのは大変だ。かと言ってお前の身体も心配だ。…随分痩せたじゃないか」


2人は考え込みました。


しばらくして雪原に2人の姿が見られるようになりました。たくさんの鶴に餌をやっているのです。

村人たちは「自分の食べるものにも困っていたのに、いい身分になったのう、与平」と声を掛けました。

「織物で儲かってるもんな。それにしても良い嫁さんをもらったな」と肩を叩く者もいました。


彼らは知りません。鶴たちから羽根を頂戴していることを。そしてツルがそれを織物に織り込んでいることを。


2人は末永く仲良く暮らしました。 

(終わり)   

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またまた「鶴の恩返し」をハッピーエンドにしてみた 菊池ゆらぎ @kiku2134max

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