別れた人
上田 由紀
別れた人
久しぶりに、あなたを待つ街角。
私は腕時計に目を落とす。
まもなく約束の時間が訪れる。
今にもあなたが現われそうで、鼓動が早くなる。
緊張と興奮が頂点に達しようとしていた。
一時、目を閉じ、呼吸を整える。
再び目を開けると、目の前にあなた。
ドキリ、と胸が高鳴る。
何ヶ月ぶりだろう。
以前よりあなた、素敵に見える。
今、隣にいるのが信じられない。
ますます魅力を増したあなた。
心、揺さぶられる。
また、あなたに恋をしそうだわ。
どうしてくれるの?
ううん、違う。
きっと私の中で、恋は終わってなかったのかもしれない。だって別れてからも、ずっとあなたを愛してた。
2人、グラスを重ね、酔いが回り、
私を見つめるあなたの眼差しが、熱を帯びる。
胸の奥に押し込めていた恋慕が渦巻く。
隣に座るあなたの体の一部が、私に触れる。
偶然を装うかのようだが、私の目には故意に映る。
私を求めてるの?
また、やり直すことができるのかしら?
私は以前の2人に戻れるような期待を抱く。
あなたから、未来へと繋がる台詞が聞けるのを待ち望む。
帰り際、あなたが私を見つめる。
私は期待を捨て切れずに、あなたの口元を注視する。
じゃあまたね、とあなたは言う。
その言葉をどう解釈したらいいのか、私は一時思い悩む。
また会いたい、という意味なのか。
それとも、ただ単に、社交辞令としての言葉なのか。
釈然としない気持ちのまま、
うん、またね、と言う。
私は後ろ髪を引かれる思いで歩き出す。
歩きながら振り返ると、あなたは立ち止まったまま、私を見ていた。
やっと、やっと会えたのに、キスさえもしてくれないのね。
私の気持ち知ってるくせに、その気にさせて。
あなた、なんてずるい人なの……。
別れた人 上田 由紀 @1976blue
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