刑事総務課の羽田倫子は、安楽イス刑事でもある その八
久坂裕介
第一話
毎日、雨が降って
梅雨だろうが湿度が高くて
だがふと見てみると、新人職員の
これではいけない! 私も彩理ちゃんを
実は私は『
それで新藤刑事がこのことを言いふらされると
「ちょっと、
そして私は、鑑識課の隣の部屋に入った。中には鑑識課の
ふと見ると由真さんは、ツナギのような青い鑑識課の制服を着て髪型はショートカットが
そして黒いスーツを着た新藤刑事も、いつも通りイケメンだった。軽くパーマがかかった髪に、
まあ、新藤刑事ったら今日も
だが、そんな彼と私が二人でひそひそと話をすると、
なぜなら私は、
そして私は、そんな新藤刑事に聞いてみた。
「私がまた、ここに呼ばれたっていうことは、また警察が解決できない事件が起きたって言うことですか?」
すると新藤刑事は、低くよく通る声で答えた。
「ああ。その通りだ」
それを聞いた私は、この部屋にあるパイプイスに座ってふんぞり返った。そして目の前には事務用の、グレーの机がある。取りあえず私は私が事件を解決させるためのアドバイスをしなければならないという
「それで今回の、解決できない事件って何ですか?」
「それは、高級自動車の
なるほど、窃盗事件ですか。それにしても自動車窃盗なら、
私は推理小説を書いているので、色々な犯罪に
「はあ、自動車の窃盗ですか。そんなの、がんばって捜査してくださいよ」
すると由真さんは、少し困った表情になった。
「倫子ちゃん。その気持ちは分かるけど、話だけでも聞いてくれないかな~?」
む。いつもお世話になっている、由真さんにそう言われると私も話くらい聞かない訳にはいかない。でも、タダで事件を解決するためのアドバイスをするのは、やる気が出ない。なので私は新藤刑事に、聞いてみた。
「その事件を解決したら、どんな報酬がもらえるんですか? 報酬は何ですか?」
そうだ。刑事総務課の私が事件を解決するアドバイスをするのなら、報酬をもらわないとやってられない。すると新藤刑事は少し考える表情をしたあとに、答えた。
「報酬は、
私はそれに、
そして科捜研を見学できたら、私が書く警視庁の刑事が主人公の推理小説も、よりリアルになる! 私は
「新藤刑事! 早く話を、聞かせてください!」
すると新藤刑事は、事件の資料を見ながら説明を始めた。
●
事件が起きたのは、一週間前。車を盗まれた被害者は
車にはもちろん多くの
もちろん捜査第三課の刑事たちは、すぐに捜査を始めた。盗まれた車は、日本に十台しかない車だ。だからそれを
そしてディーラーにある、車を売った
だが刑事たちは、確信していた。坂下圭太が、車を盗まれたことを。それは彼が見せた防犯カメラに、車を盗まれた瞬間が映っていたからだ。だから刑事たちは次に、その車を買った十人を調べてみた。
すると十人とも車を買った
おそらく犯人は日本に十台しかないという、
なので刑事たちは、車に付いている
おそらく犯人が車を盗んでから、坂下圭太の指紋を
●
私は由真さんが
「なるほど……」
すると新藤刑事は、私を
「どうだ、倫子? どうやって捜査をすればいいのか、分かったか?!」
なので私は、答えた。
「まあ、そうですね」
それを聞いた新藤刑事は真剣な表情で、更に私を急かした。
「なら、教えてくれ! どうやって捜査すれば、盗まれた車が分かるんだ?!」
「それではまず
だが新藤刑事は、疑問の表情だった。
「は? 匂い? それで、どんな捜査ができるんだ?」
「いいから事件を捜査している捜査第三課の刑事たちに、そう伝えてください。そう言えば、分かるはずですから」
それでもやはり新藤刑事は、疑問の表情だった。
「だから匂いで、どんな捜査を?……」
なので私は新藤刑事に、はっぱをかけた。
「もう! いいから捜査第三課の刑事たちに伝えてください! そうすれば、分かるはずですから! 早く事件を解決させたかったら、そうしてください! おそらくディーラーの担当者も、グルですから!」
すると新藤刑事は、この部屋から出て行った。
「わ、分かった! とにかく捜査第三課の刑事たちに伝える!」と言い残して。
それを聞いて安心した私に、由真さんがやはり疑問の表情で聞いてきた。
「いや、私にも分からないんだけど。どうして被害者の匂いを警察犬に憶えさせると、盗まれた車が見つかるの」
なので私は、答えた。
「盗まれた車から被害者の指紋を拭き取ることはできても、匂いまでは無くせないと思うんですよ」
「え?」
とにかくこれで盗まれた車は見つかるだろうと確信した私は、この部屋を出た。
「あ、由真さん。コーヒー、いつも通り美味しかったですよ。ありがとうございました」と言い残して。
●
昼休み。私は刑事総務課の自分の席で、まったりとしていた。なぜなら警視庁内の食堂で食べたランチが、美味しかったからだ。今日は彩理ちゃんと二人で、何とピザを食べた!
まさか食堂でピザを出すとは、思わなかった。食堂で出すピザは
そして食べてみたら、やはり美味しかった! ピザの種類は
そしてトマトソースの
そして私はスマホのメモを出して、考え込んでいた。今度、書く予定の推理小説のアイディアを考えていた。それは異世界を
うーん。毒の魔法を使うというのは、
つまり勇者は剣に毒の魔法をかけて剣によるダメージではなく、あくまでも毒で魔王を倒す。うん、これだ! これでいこう!
そこまで私が推理小説のことを考えていると、スマホが鳴った。見てみると、予想通りのメッセージが表示されていた。『新藤だ 今すぐに、いつもの場所にきてくれ』
ふむ。どうやら事件は、解決したようだ。それならば、報酬をもらわねば! そうして科捜研の見学という報酬に期待して、私は鑑識課の隣の部屋に向かった。
そこにはやはり、由真さんと新藤刑事の二人がいた。私は早速、新藤刑事を急かした。
「どうです? 事件は、解決したんでしょう? つまり、盗まれた車は見つかったんでしょう? それだったら科捜研の見学という、報酬をくださいよ!」
だが新藤刑事は、冷静に答えた。
「まあ、待て。その前に、聞きたいことがある」
「え? 何ですか?」
「まず、今回の事件はディーラーもグルだった。なぜそれが、分かった?」
「ああ、そのことですか」
私は、説明を始めた。
「まず、盗まれた車は日本に十台しかありません。そして被害者の坂下圭太さんは、確実にその車に乗っていました。それなのに顧客リストに、坂下圭太さんの名前が無かった。それなら当然、車を売るディーラーの担当者も
「なるほど……」
そして新藤刑事は、再び聞いてきた。
「俺が坂下圭太さんの匂いを警察犬に憶えさせろと捜査第三課の刑事たちにアドバイスしたら、彼らは『そうか! その手があったか!』と
なので私は、再び説明した。
「最初、刑事たちは坂下圭太さんの指紋が車に付いていないか調べました。私はこの方法は、とても良いと思いました。でも残念ながら、指紋は犯人によって拭き取られていました。そこで私は、考えました。それなら被害者の、匂いで探したらどうだろうと。
被害者は盗まれた車に一年以上、乗っていました。それなら盗まれた車に、被害者の匂いが染みついているのではないかと考えたんです。まだ盗まれて一週間ですし、犬の
それなら警察犬が坂下圭太さんの匂いが染み込んだ車を、発見できると考えたんです」
「なるほど……」
そして新藤刑事は、付け加えた。
「犯人は日本に十台しかない、その車がどうしても欲しくて盗んだそうだ。そして確実に自分のモノにするために、ディーラーの担当者に金を渡してニセの契約書などを作らせたそうだ」
なるほど。これで確実に、事件は解決したようだ。ならば、報酬をもらおう。私は、新藤刑事に聞いてみた。
「それで新藤刑事! 科捜研の見学という報酬は、いつくれるんですか?」
すると新藤刑事は、あっさりと答えた。
「ああ、あれか。あれは、ダメだ」
それを聞いて、私は少しキレた。
「は? ダメ? ダメって、どういうことですか?!」
「ああ。俺は、科捜研に聞いてみたんだ。刑事総務課の職員を、見学させたいと。だが、断られた。科捜研は関係者以外、立ち入り禁止だそうだ。刑事の俺はいいが、刑事総務課の職員はダメだそうだ」
私は、激しく落ち込んだ。
「そ、そんな……」
でも、どうしても科捜研を見学したくて私は
「それじゃあ、私は刑事ということにしましょう! それなら、見学できますよね!」
だが新藤刑事は私の提案を、あっさりと
「そんなもん、ダメに決まっているだろう。もしお前が刑事じゃなくて、ただの刑事総務課の職員だと科捜研にバレたらどうなる。俺の信用は、無くなる。だから、そんなことはできない」
でも私は科捜研を、どうしても見学したかった。そうすれば今よりもリアルな、推理小説を書けるからだ。だからもう一度、聞いてみた。
「絶対に、ダメですか?」
すると新藤刑事は、両腕で
「絶対に、ダメだ」
そして落ち込んでいる私を無視して、新藤刑事はこの部屋から出て行った。するといつものように、由真さんが声をかけてきた。
「残念だったわね~、倫子ちゃん。でも事件を解決してくれたお礼と言っちゃなんだけど、コーヒーを淹れるけど飲む?~」
私はもちろん、頷いた。そして由真さんが淹れてくれた美味しいコーヒーを飲むと、不思議に元気が出てきた。やっぱり美味しいモノには、人を元気にする力があるんだなあ。なので私は、刑事総務課に戻った。午後の仕事をするために。もちろん由真さんに、ちゃんとお礼を言ったあとに。
だが刑事総務課の自分の席に戻った私は、ため息をついた。今回の犯人はどうしても日本に十台しかない車が欲しくて、盗んだそうだ。だがそれは窃盗とういう、立派な犯罪だ。そうしなくても車を手に入れる方法は、別に何かあったはずだ。それなのに……。
犯人は犯罪者としてメディアに
刑事総務課の羽田倫子は、安楽イス刑事でもある その八 久坂裕介 @cbrate
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