スパイ猫、アレルギー全開!

紫峰奏

スパイ猫、アレルギー全開!

よぉ、俺の名前はハル。世界一のスパイ猫だ。まあ、スパイとしてはまだまだ半人前だけどな。いや、半猫前か。でも、ひとつだけ言わせてもらうと、俺はちょっと変わり者だ。なにがって、俺、猫アレルギーなんだよ。お前も猫だろって? ……まあ、確かにそうなんだが、他人の毛はどうも受けつけねぇんだ。


やってらんねぇよな。だって、猫が苦手ってスパイ猫としてどうすんだよ? 任務中に、他の猫に出会ったらすぐアレルギー発症するんだぜ? まじで。鼻水、くしゃみ、目のかゆみ、全部ひっくるめて最悪のコンボ。


「ハル、行くぞ」ムギが耳元でささやく。猫スパイ団の仲間だ。


「行くけどさ……ほんと、今日はアレルギーがひどくなりそうな予感しかしねぇんだよにゃ」俺はポケットからアレルギー薬を取り出し、さっと飲み込む。


今日の任務は、チョコレート工場への潜入だ。なぜかというと、イヌ連合が、猫を犬に変えてしまうチョコレートを作ってるらしいんだよ。やばくね?


でも、その前に……あいつらが飼ってる他の猫たちに会ったら、俺、すぐにアレルギー反応が出るんだよな。最悪だ。


とりあえず、工場の裏口から忍び込んだ俺。だが、しばらく歩いたところで、何かイヤな予感がした。そこに、他の猫たちが集まってたんだ。


「あーっ、ダメだって! 何でこんなとこに猫がいるんだよ!」心の中で絶叫しながら、すぐに後ろを向いた。


だって、猫ってだけでアレルギーが発症しちゃうんだから、無理だって。目がかゆくて、鼻がムズムズしてきた。おいおい、頼むからくしゃみが出ないでくれ……


だが、もう遅い。くしゃみが止まらねぇ。「ハックション! ハックション!」あっという間に、工場内に響き渡るくしゃみの音。


「あれ、誰だ?」猫たちが俺を見て、ビックリしてるのがわかる。


「おい、あんた、スパイ猫だろ? 体調管理ぐらいちゃんとしろよ」一匹の猫が俺に向かってきた。いや、風邪じゃねぇんだよ、アレルギーなんだよ!


「うるさい! 近寄るにゃ!」俺は必死に後退するが、目はぼやけてるし、鼻水は止まらねぇし。最悪だ。こんな時に限って、アレルギーを引き起こす猫が近くにいるんだもんな。


さらに、他の猫が集まり始める。まあ、イヌ連合を阻止するには致し方ないが……


その瞬間、工場の奥からあいつ、レオが現れた。「おっと、ハルか。お前、アレルギーで鼻水だらだらじゃにゃーか」ニヤニヤしてやがる。


「あー、もう、うるせぇ! こっち来んにゃ!」俺はアレルギー薬を飲みながら必死に言ったけど、もう遅い。くしゃみが止まらない。チョコレートの匂いがさらに俺の鼻を突き刺す。


「お前、犬になった方がいいんじゃねーか?」レオが笑いながら言ってきた。


「犬になんてならねぇよ!」俺は必死に反論する。だって、俺、猫だし。アレルギーさえなければ、任務も完璧にこなせるのに!


そこで、やっと気づいた。爆発装置を作動させるタイミングだ。目が霞む中、俺は必死に爆弾のスイッチを押し、工場が爆発する瞬間を見届けた。


「ふぅ……やっと終わった」俺は薬の効果が効いてきたものの、まだ少しふらふらしてる。


「お前、大丈夫か? アレルギーひどくにゃかったか?」ムギが心配そうに近づいてきた。


「お前が心配するんじゃねぇよ……俺のことは俺がなんとかすんだよ。アレルギーぐらいな」ふらふらと立ち上がり、少し誇らしげに言った。


「まあ、スパイとしてはバッチリだったけどな」ムギは苦笑しながら答えた。


工場を出て、優子さんの家に戻った後、またアレルギーの薬を飲んで、やっと落ち着いた。優子さんに心配されながら、俺はしばらく休むことにした。


「ハル、また体調悪いね。病院行った方がいいのかな?」優子さんが心配そうに言う。


「問題ねぇよ……でも、やっぱりスパイ猫の仕事はやめられねぇな」俺はニャーっと言って、また寝始めた。


これからもハルは戦い続けるーー。


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スパイ猫、アレルギー全開! 紫峰奏 @shihou-kanade

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