第12話

「私、これでも一途な方なの」


「そうかよ」


「だから信じて」




私に覆い被さる男の頬を両手の平で包み込んで、真っ直ぐに見つめる。一瞬たりともブレたりしない。


真っ黒な瞳が細く柔らかく笑った。



ドクン、と心臓が甘く跳ねる。




「…明美」


「っ、名前知ってたの?」


「当たり前だろ」




何この人、こんなに甘かった……?


いつも無愛想で口数も少なくて、タバコばっかり吸うような男だったのに。



顔に熱が集まるのが自分でも分かる。つまり当然目の前の蓮にも分かってしまうわけで…。慌てて自分の顔を隠したけど、




「あけーな」


「うっさい、」


「明美は俺に一生負け続ければいいんだよ」


「っ…!ばっかじゃないのっ」




一生って、その意味分かってんのかな…。



でもそうなればいいと思う。


蓮になら一生、死ぬまで負け続けてもいいかもしれない。






「好きだ、明美」








ーendー




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

惚れた男 宮野藍 @miyanoai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る