第11話

「嘘でも冗談でもねえよ。本気でもねえ女にこんなこと俺が言うと思ってんのか」


「っ、」




そうだ。この男は甘いセリフを女に平然と吐き出すような奴じゃない。愛想が無くて言葉数の少ないこの男の言葉だからこそ、それは本物だと思える。




心が、震えた。


じわりじわりと温かいものが全身に伝わって視界が歪んでいく。




「…すき、」


「ああ」


「大好き」


「知ってる」




口角をゆるりと上げて当然だと主張するそれにはやっぱり私は一生勝てない相手に恋をしたんだって思った。


でも、負けてもいい。



このムカつく男の隣に居られるのなら、それでもいいよ。相手が他の誰でもない私が惚れた『本庄連』なら。




「俺の前から消えたりすんなよ」


「消えない」


「ああ」


「絶対に消えたりしない」




ぽろりと漏らした本音。



当たり前のように目の前にいた人が消えるって心に結構な打撃を与えるよね。


分かる。分かるけど、それは昔の話でしょ?

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