いい話――じゃない怖い怖い怖い



木戸という人間へ宛てたメールから始まる本作。

喪失と再会を繰り返す夢の美しさと哀しさが綴られて、個人的な手紙のように始まる。
温かい気持ちになり、けれど切ないヒューマンドラマ……だと思ったら一変。

途中から何かが壊れていくような違和感、そして狂ったように崩れていく文章。
その流れで突然現れる一文に、人の終わりを見るような気持ちに。

一転して刑事視点。事件の捜査の場面になるものの、刑事すら「夢」に取り込まれてしまうような終わり方になっていて、結局怖いんだけど……どうなったのよ……となんとも言えないゾワゾワが残る。

怪異がはっきりと姿を見せるわけではなく、じわじわと忍び寄るタイプのホラー。
夜、思い出してトイレに行けなくなるかも。