第21話 新たなる未来
黒幕の名前が明るみに出て、騎士団が正式に動き出したことで、一連の襲撃騒動はひとまず収束を迎えた。
表向きは別の貴族が首謀者として逮捕され、その背後にバルド・デュアルテが関与している疑惑も記録される。これまで「鬼畜オヤジ」による悪行だと思われていた事件の一部は、実際にはバルドの息のかかった手下たちが起こしていた、という事実が次第に明るみに出たのだ。
それから数日後。王都の広場では、珍しく快晴の空が広がっていた。
幸太郎はロゼッタに呼ばれて騎士団詰所へ向かうと、そこにはアリシアと椿が既に揃っており、机の上の書類に目を通している。
「これが、正式に認められた罪状と、あなたへの賠償書面よ。一連の事件はこれで終わりになるわね」
ロゼッタがそう言って腕を組むと、アリシアは「ええ」と軽く相づちを打つ。
「これであなたも“鬼畜オヤジ”なんて呼ばれずに済みそうね。もっとも、周りの目が完全に変わるまでには時間がかかるかもしれないけど」
幸太郎は素直に頭を下げる。
「それでも十分だよ。ニーナもだいぶ元気になってきたし、屋敷も前より落ち着いてる。みんなが協力してくれたおかげだ。ありがとう」
椿は少し恥ずかしそうに目を細める。
「私こそ、留学生としてこんな大事に関われるなんて思いませんでした。今ではご主人様のために動けることが、誇りに感じます」
そこへ、外から走ってきたミウが「ご主人様!」と呼びかけながら駆け寄ってきた。
「ニーナさんが図書館で少し動けるくらいには回復して、今日は自分で買い物に行きたいって……元気そうでした!」
幸太郎はくすぐったいような笑みを浮かべ、ミウを見つめる。
「よかった……ほんとに心配だったからな。あんな恐い目に遭わせてしまって……。でも無事で何よりだ」
ふと横を見ると、アリシアが小さく咳払いをしている。
「それにしても……あなた、このところ随分とみんなに優しいじゃない。私にも先日、紅茶を用意したりしてくれたし。前とは別人みたい」
幸太郎は照れながら頭をかく。
「ゲームの知識っていうか、いろいろ彼女たちの好みは把握してたから……それを普通に役立ててるだけだよ。変に気取ってるわけじゃないんだ」
アリシアはわざとらしく扇子を開き、横を向いて微かに笑っている。
「そう……でも悪くないわ。あまり調子に乗ると叱るけどね」
ロゼッタは「ふふ」と呆れ交じりに肩をすくめる。
「本当に仲良くなったわね、あなたたち。最初からこうしていれば、もう少しスムーズだったのに」
幸太郎は苦笑しつつも、内心の温かさを噛みしめていた。
「俺だって、最初から鬼畜なんて呼ばれたくなかったさ。でも、今はこうして仲良くできてる。やっぱり、変わろうと思えば変われるんだな」
椿が小さく拍手するように手を重ねる。
「では今夜は、改めて屋敷でお茶会をしませんか? 私、東洋のお菓子を少し作ってみたいんです」
ミウは大きくうなずいて「いいですね!」と声を上げ、アリシアは扇子を仰ぎながら「お菓子もいいけど、私は紅茶を淹れてもらいたいわ」と口にする。
幸太郎は彼女たちの姿をぐるりと見回す。ロゼッタと椿、ミウ、それにニーナ――不在だけれどすぐに戻ってくるはずだ。
(本当に、こんな素敵な人たちと一緒にいられるなんて、転生するまで想像もしなかった。俺、ずいぶん変わったんだな……)
あらためて幸太郎はゆるく笑みを浮かべ、みんなを見つめながら決意を言葉にする。
「よし、じゃあ今夜は盛大にやろう。おいしい紅茶とお菓子で乾杯だ。……これからも、よろしく頼むよ」
その言葉に、アリシアは軽く扇子を閉じて視線をそらし、ミウは笑顔で「はい!」と答え、椿は深くうなずき、ロゼッタは少しはにかんだように目をそらす。
皆の温かい視線を受けながら、幸太郎はゆっくりと歩き出す。
屋敷に戻ったら、ニーナも微笑んで迎えてくれることだろう。そんな期待と安堵が交じり合った思いが心に広がっていた。
“鬼畜オヤジ”なんて呼ばれた過去は確かにあった。だが今は仲間たちと手を取り合い、新たな未来へ踏み出そうとしている。ゲームの世界の知識を活かしながらも、もう鬼畜ルートなど選ばない――そう心に誓った幸太郎がそこにいた。
エロゲの鬼畜キャラに転生して、普通に仲良くしてハーレム築きました 三坂鳴 @strapyoung
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