第37話 一方その頃、召喚者達③
SIDE はやと
ボンボッボ「なに!?ギュウシー領が平民の手に落ちただとぉ!!おのれ愚民共め…」
ダンジョンで帰ってきた僕達はすぐ不機嫌な王様の姿に呆れてしまう。
あの様な為政者ではこの国には不満が溢れているだろう事は容易に想像できる。
選ばれし者だとか言われて担がれて居ることにも違和感があるし、魔族が悪だという話にも根拠がなく、話の端々から安易で幼稚な議論が展開されていた。
しかし、今の段階で下手な行動をしてしまうとリスクが高すぎる。
情報を収集してひかるとえあさんの安全が確保する責任が僕にはある。
龍宮院の男児として!
それに、どみんくんの行方も気になる。
もし生きているならどこからか情報がこの王都にも伝わって―――
ボンボッボ「なにぃ!?自由都市『ベッコニング』ぅ!?―――町長に……はぁッ!?あのハズレスキルの男が…カンスイドミンというのか!そいつが町長としてギュウシー領を治めるだとぉ!!ふざけおってぇ〜!!」
はやと「ぶっ―――!!」
ひかる「うげっ!?」
えあ「うふふ♡流石どみん様ね〜」
思わず吐き出してしまった。
いや、生きていてくれて嬉しいけど…町長って…?
そんなキャラだったかなぁ?
ひかる「ど、どういうことだ?人見知りのくせに…アタシがここぞで
えあ「あーあ、残念でしたわね〜。よしよししてあげましょうか?」
ひかる「うるせぇ腹黒!どみん…まぁ自分でなんとかしちまうよな、あの爺さん家の親父でも勝てないし」
はやと「え!?こうじ総理が勝てない!?そんな人いるのか?」
ひかる「あー、そういや親父『天狗』の推薦で、今総理大臣だっけ?似合わねぇ〜www。そういや隼人坊っちゃんは親父と知り合いっていうかえあ穣と一緒に黒鉄流を護身術で習って、一目惚れだっけ?節穴だよなマジでw」
はやと「そ、それはともかく…どみんくんが町長…みたいだけどこれからどうする?」
えあ「もちろん!この国を掌握してどみん様に帰ってきてもらいますわ!」
ひかる「アタシはこのゆーしゃパーティーを抜けて、一人でもどみんに会いに行くぜ?」
えあ「会いにいってどうするんですの?どみん様の迷惑になるだけでしょう?」
ひかる「心配して悪いか?幼馴染なんでぇ〜、そんな悠長なこと言ってらんねぇんだ?おっと失礼、お嬢はどみんとまともに話したこともない赤の他人だもんな〜?」
えあ「ふふふ、今のうちに吠えていればいいですわ猪女」
ひかる「まぁせいぜい夢でも見てな腹黒」
はやと「ちょっと、まぁまぁまぁ」
自分に群がってくる女性にも辟易していたが、女性の仲裁も辟易する。
どみんくんもこの状況を知ればイヤになるだろう。
それにしても、王に報告しているあの肌白い考古学者とか言う男、何者なんだ?
たしか『ラークレー』とか言う名前だった。
軟腰で丁寧な印象と薄暗く笑う嫌な感じがする。
しかし、どみんくんが独立区域の町長なったのは突拍子がなさすぎて本当ではないかと思う。
とにかく、情報が出たということは無事だということ。
はやくダンジョンで強くなって、合流しなくては…。
ラークレー「偉大なる王に対して私は矮小な身です。なれど進言がございます。よろしいでしょうか?」
ボンボッボ「ふむ、申してみよ?」
ラークレー「よろしければ、私を『ダーディラード』に推薦していただきたく存じます」
ボンボッボ「ほぉ…しかし、な?」
ラークレー「もちろん実力を見て頂いて判断していただきたく存じます」
ボンボッボ「ふっ、イグル・シルフィードが抜けた穴を狙ってきたのか?ず太い奴だ、よし!はやと殿、相手をしてやってくれぬか?」
はやと「僕がですか?」
―――王城 訓練場―――
ラークレー「では、どちらかが「参った」と言うまでの試合としましょうか?」
はやと「構いません、いい試合をしましょう!」
今の状況下では実力を示す事でしか安全は保証されない。
目の前の学者には悪いが圧倒的な力で制圧させてもらう!
こちらもただダンジョンに潜って遊んでいたわけではない―――
はやと「【勇者】【コマンド 勇敢Lv3 スピリットハイ】」
この【スピリットハイ】は精神強化・身体強化・魔法防御強化をするバフコマンド。
まずは小手調べだ!
はやと「【聖剣Lv2 オーラスラッシュ】!」
訓練用の木刀が黄金に輝く。
渾身の一撃を放つ―――
ピタッ
はやと「どうして避けないんですか?」
ラークレー「ふふふ、お優しい。確かにこれは試合であって死合ではありません。しかし、仮にも国家最高戦力『ダーディラード』に私は臨もうというのです。殺す気で構いませんよ勇者様」
はやと「わかった、もう寸止めはしない―――いくぞ!【オーラスラッシュ】」
ラークレー「【闇魔法Lv6 闇の衣】」
ぐっ!?砂場に思い切りバットを叩きつけたような感触。
包まれ、沈み込む…抜けない!
ラークレー「硬い、というのは脆いものです。逆に柔らかいというのは時としてどの様な硬度より勝る―――」
はやと「【聖剣Lv4 シャインバースト】」
剣先から黄金オーラが膨張して破裂する【シャインバースト】。
岩石を粉砕する魔法剣を放つと、ラークレーは仰け反り後退する。
どす黒い質量のあるモヤのような物体も払拭し、剣を構え直す。
ラークレー「【闇魔法Lv3 ダークランス】」
ふと思考にちりちりする違和感を自信の足場から感じたので直ぐ様飛び上がると、地面から先程の黒いモヤが鋭く槍のような形状で無数に飛び出てきた。
飛び上がらなければ串刺しだっただろう。
ラークレー「上空は逃げ場がないですよぉ?【闇魔法Lv5 ブラックアウト】」
次の瞬間―――僕の周囲は闇に包まれ平衡感覚と音、視界を奪われた。
しかし相性が悪い―――
はやと「【聖剣Lv2 オーラスラッシュ】」
木刀に黄金のオーラを纏うと周囲の闇を振り払うとラークレーに向かって木刀を投げる。
はやと「うおおおおおおお!」
ラークレー「ははっ!いいね!【闇の衣】」
投げた木刀は弾かれた。
しかし目眩ましにはちょうどいい。
はやと「【勇敢Lv8 オーラレーザー】」
間髪入れず指先から超密度のレーザービームを放つ今の僕に出来る最大火力のコマンド。
指先から放たれたレーザービームは音速程の速さで、鉱石を溶かす熱量で、ラークレーに飛んでいく。
ラークレー「いいねいいね!勇者召喚から数週間でLv8!私も少々本気になりましょう!【闇魔法Lv9 ダークフォース】」
先程のモヤより濃密な漆黒の塊がラークレーの前に展開され僕の放ったレーザービームと衝突し「ジジジジジ」という重低音の衝突音がするとふわっとレーザーも漆黒も消えた。
その瞬間全速力で相手に向かって走る。
相殺したこの一瞬の瞬間が最大のチャンスだと僕の直感が告げたのだ。
弾かれた木刀を拾いつつ構え―――
はやと「【オーラスラ―――】……参りました」
ラークレー「素晴らしい!この誰が見ても私が不利な状況で足元の【ダークランス】に気づくとは…今回の勇者は侮れませんね…」
木刀がラークレー目と鼻先に迫った所で陰から先程の【ダークランス】が既に喉元まで迫っていた。
一重の差だが、僕の負けだった。
えあ「大丈夫はやとさん?」
はやと「ごめんえあさん、負けてしまったよ」
えあ「しょうが無いわ、相手が悪かったのよ。気にしないで」
ボンボッボ「ぼあっはっはぁ!いい試合であった。そこの考古学者、貴様を特別に『ダーディラード』にしてやろう!」
ラークレー「はっ!身に余る光栄!」
ボンボッボ「さて、大臣。他の『ダーディラード』を集めよ!おっと異世界の勇者諸君、ダンジョン帰りで疲れておるだろう?客室でゆっくりと休まれよ。オイ!ランラッラ!案内せよ!」
ランラッラ「はい、お父様」
ランラッラ姫に連れられて、半ば強引にその場から引き離される。
『ダーディラード』を集めて話す内容などあの王の性格を考えれば容易に想像できる。
はやと「(待っていてほしいどみんくん、必ず助けに行く!)」
異世界町中華忍帳 ハイドロネギ @sussee
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