二冊目 鏡

家の中で、ふとした瞬間に鏡を見ることは、よくあることだろう?

お風呂に入った時、お風呂から出た時、歯磨きをしてて暇な時。

そんなとき、よく鏡で自分の顔を見るんだ。その度に思う。「いっつも同じ顔しててつまんねぇな」って。


そんなある日、学校のやつらに肝試しに誘われた。


日曜の夜9時に学校の近くの公園に来いってさ。まあ行ってやってもいい。別に、幽霊とか信じない主義だし。


そうこうしている間に、約束の時間が来た。母さんには「ごめん、ちょっとおばさんに手紙出してくるね」って言ってある。


おばさんには悪いけど、それが1番手っ取り早いんだ。母さんと父さんは僕がおばさんに子供の頃懐いていたのを知ってるから。



♦︎♦︎


公園に着くと、もう仲間たちは出揃っていた。「遅いぞー」「おい、懐中電灯ある?」「誰も持ってねぇよ」「俺ある!!」飛び交う言葉の中に、俺も入る。


「なんだよ、みんなで一つしかねぇのかよ、じゃあ一人ずつ行くっきゃねぇな」


そんな俺の言葉に、俺のいちばんの親友が賛成すると、みんな賛成し始めた。


♦︎♦︎



一番手は言い出しっぺの僕になった。

ミッションは簡単で、一人一冊ずつ図書館から本を持ってくるだけ。

持ってきた本は最後に肝試しをする人が全員分の本を持って返しに行くらしい。


僕はテキトーに一冊選ぼうと思って目についたものを一冊、手に取ろうとしたけど、なんだか別の本を選んだ方がいいような気がした。


でも、そんな予感だけで行動を変えるような人間になった覚えはないし、予感がするからといって行動を変えたら、なんだか予感に負けた気がして癪だ。


だから、僕は勢いよくその本を本棚から引き抜いた。


まあ、当たり前だが…何も起きなかった。

やっぱり予感なんて当たらない。そんな予感に一瞬でも惑わされた僕が馬鹿馬鹿しい、と思った。


仲間のところに帰るまでの間、(歩きながら読むのはあんまり良くないのは分かっているけど)、懐中電灯の光で僕はその本を読もうと思って、日記を開いた。


どうやら誰かの日記らしかった。


読み進めていくうちに、それがおばさんのものだって分かった。


僕はなんだか、これ以上ないくらいに面白い気分になってきて、勝利感、というか、達成感というか、あるいはそのどちらでもないようなものを自分の心の中に感じた。


その時、図書館の扉の塗装がはげて黒ずんで、鏡みたいになっているのが視界の端に入った。


普段なら絶対にしないけど、なんだか覗き込んでみたくなって、衝動で覗き込んでみた。


そこからは、闇夜が僕を静かに見つめ返していた。

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青の書物庫 @chlorine_4989

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