一冊目 時計塔
時計塔の窓には、世界中の雲が封印されているんだ。
だからこの村も雨が降らないし、毎日晴れてて幸せだよねって、長老さまや、パパやママはよく言う。でも、僕はおかしいと思うんだ。だって、毎日晴れてるのなんて当たり前だし、雨が降るなんて言われるけど、どんなものか全然わかんないし。
そんなことを考えていたある日、僕の頭の中に、妖精みたいに高い声が、話しかけてきた。
「ウフフフフフ,ヒミツノミチヲオシエテアゲルヨ!!!!」
秘密の道?そんなのあるわけないじゃないか、だって僕はもう暇つぶしとしてこの村をどこもかしこも隅々まで探索して回りきっちゃったんだから。
ちょっと疑って周りを見渡してみたけれど、変わったものなんてどこにもない。
なぁんだ、やっぱり嘘なんじゃないか。
そう思って歩みを進めた。
すると、いつもは村の子供達やお店の人で騒がしいはずの通りが静かなことに気がついた。
人の足音一つしない通りを見るのはこれが初めてだ。
久々に鼓動が高鳴るのを感じた。体全体が、誰もいない通りに惹きつけられているような、そんな感覚さえした。頭の中では「異常だ」とわかっている。わかっていて、一歩足を後ろに引こうと思ったのに、足が地面に焼きついて離れない。
心が飛び跳ねているみたいだ。
僕は日常が変わるような気がして、一歩足を踏み出した。
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