健太君の一日

@comcom1089

12月7日

「おきたらくらかった。いつもそうでちょっとざんねんな気持ちだけど暗いのはいいらしいから、がまんした。ぼくえらい!とりあえず何書けばいいかわからないけど、きょう起こったこと書こうとおもう。きょうはおとうさんに起こされた。とても怒ってた。いつもはちゃんとおきるのにおきなかったからなのかな。ちょっとかなしかった。でもおとうさんはぼくのために怒ってくれたらしい。悲しかったけどそれをきいてうれしかったからよかった。学校に行くじゅんびをした。さむかったから行くのは嫌だったけど、それをいうとおとうさんがかなしむからいわなかった。はやくふくを着て、いつももっていくものをもって、くつをはいて家を出た。

学校はちかくて、ぼくだったらはしって3分でつく!みんなは5分かかるらしいけどね。ぼくもさいしょはもっていくものがおもくて、10分くらいかかって先生によく怒られていたけど、さいきんは慣れてきてはやくなった。いまではほめられるくらいはやくなったからうれしい。みんなとあそびたい。さいきん、こうたとかあゆみのこと見かけないなあ。なにしてるのかな。さみしいけど、げんきだったらうれしいな。そんなこと考えてたら、学校についた。はやくついてすごい!っていつものようにほめられた。うれしかった!

きょうのじゅぎょうはいつもとちがって、人をしあわせにするのをきいた。しあわせにするってよく分からないけど、いつもは情報とか体育とかするけど、いつもとちがったからうれしかった。じゅぎょうはむずかしかった。ひとをしあわせにするためにはじぶんをぎせい?にするのが大事らしい。ぎせいのいみがわからないけど、先生のいうことはいつもすごいからよかった。

じゅぎょうがおわった。ぼくの一日はこんな感じ。そしていま、まいにちこのにっきを書くようにいわれているから、このにっきを書いている!これが書きおわったら、とくべつじゅぎょうがあるらしい。とてもわくわくする。あしたもげんきでいたいし、はやく友だちにもあいたい!」


 拙い言葉でそう綴られていた日記は2045年12月7日が最後であった。小汚く、薄暗い部屋の中に男はいた。男が日記から目を離しあたりを見渡すと、小さなベッドと机、そして写真立てが置かれているのみであとは何もなかった。日記を机に置いて、写真立てを見ると、迷彩柄の服を着た三人の子供が壊れた大きな機械を背後に笑顔で写っていた。男はしばらく立ち尽すと、大きなため息をついた後、一歩一歩踏みしめるように部屋を出た。

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