第十一話 ゾアの告白②ー風雲急を告げるー
それはかつてアヴァロンにて起きた事。
「これで今月何件目だ?」
「6件目だな」
聖第二都市アヴァロンでは違法薬物ラクロスが流行していた。その結果、都市直属の部隊アヴァロン隊には密売人の取締命令が頻発している。
「流石に何かがおかしいだろ」
ゾアでも気づく。確かに違法薬物はキメると気持いいのだろうが、沢山の組織が取り締まられているのにいつまで経っても無くならない。
そこには、何者かの意図があるはずだと睨んだ。
「ティティア、何か知らないのか?」
「私が知りたい位よ。善良な一般市民を薬漬けにするなんて許せないわ」
銀製正義(アルギュレオス・テミス)と呼ばれるだけあってユースティティアは正義を重んじる。
ゾア達は密売人達のアジトを壊滅させ探索をしていた。すると…
「おい、なんだこれ」
ゾア達が見つけたのはアジトの地下室、そこには牢獄が備え付けられており中には人間が幾人か閉じ込められていた。
「もう密売人達は捕まえたわ。安心して、今助けるわ」
そう言ってユースティティアは剣を振り鉄格子を容易く切り刻む。
駆けつけたユースティティアとゾアが見たのは信じられない光景であった。
「は?これ…」
ゾアでさえ目を背けたくなるような光景。
市民達が牢に繋がれラクロスによって薬物中毒にされている姿だ。
そればかりか市民達は痩せ細り、目は血走り、髪は白くなっていた。
副作用による吸血衝動が起きているのだろうか。
「ユースティティア、これはもしかして…」
「うん、副作用による吸血衝動どころじゃない。今この都市に蔓延しているラクロス、その本当の効果は吸血種化だ」
ゾアが剣の切っ先を半吸血種となっている市民へ向ける。
吸血種は不死となり一生死ねない体となる。
そうなった者たちがこの国で捕まると永遠に苦しみを味わうことになるのだ。
だから完全なる吸血種になる前に、不死性を獲得する前に殺してあげる事がこの者達への救いとなるのだ。
「ゾア!辞めて!」
ユースティティアは声をあげて必死にゾアを止めようとする。
しかし、ゾアは動きを止めようとしない。
「ユースティティア!ここで介錯してあげることが!俺達に出来る全ての事なんじゃないか…」
ユースティティアは息を呑む。
「だけど…だけど!」
まだユースティティアは認められない。
これが最善だとは分かっているのだ。
分かっているのだが………
「……して」
何か声が聞こえた。
「ころして…」
今度はハッキリと。
救いを求める者達の声が。
「ユースティティア…」
それでユースティティアは決断をする。
この国の聖者として、アヴァロン隊の隊長として、正義を重んじ市民を愛する一人の人間として。
「分かった、介錯をしましょう。だけど私もやるわ。ゾアだけに業を背負わせない為に」
そう言って剣を握るゾアの手に自らの手を重ねる。
そうして―――
首が飛び、鮮血が噴き出し2人へ飛び散る。
「隊長!その血は?」
他の隊員のとこに戻った2人は自分達が被っている血について尋ねられる。
「これは私達の力不足の証。後で皆を集めなさい。薬について新しく伝える事があるわ」
そう言って2人はその場を去る。
表情に陰りを残して―――
少年と魔女 てむてむ餅 @mutiri0506
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