好きな人の好きな人はボクっ娘で

姫野みすず

負けかたと落としかたはおてのもの

 わたしの好きな同級生の男の子はグラマラスな年上の女が好きなんだとか……なによ、わたしだって同じ年齢になればこんな女のプロポーションぐらい余裕でこえられるのに。

「●●ちゃんだよね、■■くんから話はきいているよ」

 こんな女とあそばないといけないなんて。■■くんはなついちゃっているし、いやになっちゃうわ。

「どうも、はじめまして。わたしのことは気になさらず■■くんと二人でたっぷりあそんでください」

「えー、●●さんも一緒にあそぼうよ」

「■■くんがそういうのならしかたないわね」

 わたしと■■くんとの仲を邪魔しようとする女がにやついている。ちっ、気づかれてしまったか。




「ということなので、わたしは■■くんとは普通です」

「オッケーオッケー。お姉ちゃんは男女の関係とかよく分からないから心配しないでいいよ」

「分かっているじゃん!」

 思わず大声を出してしまう。さいわい■■くんは怪獣映画にむちゅうのようでテレビにかじりついたまま。

「■■くんのああいうところが好きなの?」

「ちがう」

 あと、さりげなくわたしを後ろから抱きしめるな。

 数年で……わたしもこの女と同じようなやわらかくて大きいものが手に入るとは。

「なにかとくべつなトレーニングとかしているの?」

「ごめん。なんの話かな」

「なんでもない」


 わたしを後ろから抱きしめた状態でソファーに座った女が顔をのぞきこんでくる。そっぽをむくと、女は考えごとをしているのかうなり声をあげた。

「なんか分からないけれど……●●ちゃんはかわいいとぼくは思うよ」

「大人っぽくないのに?」

「大人っぽく。あー、あははは。なるほどねえ……では●●ちゃんにいいことを教えてあげよう」

「なに」

「大きくなった男は大人よりも子供っぽいほうが好きになっちゃうんだよ」

 なんだか分からないがこの女の偏見だろう、たぶん。


「今より大きくなった■■くんが子供っぽいほうが好きになったとしても、現在の■■くんは大人っぽいほうが好きなんだから意味がないような」

「■■くん、●●ちゃんをぼくよりも大人扱いしていると思うけどな。ぼくのことはお姉ちゃんと呼んでくれるけど、●●さんってさっきは口にしていたしさ」

「そ……そうかな?」

「そうだよ。そうだよ。絶対に■■くんは●●ちゃんのほうを大人扱いしているって」

 うん、グラマラスなこの女が言うなら間違いないか。

「わたしはすでにあなたに勝っているのね」

「そういうことだね。ぼくの人生は負けっぱなしさ」

「今度、わたしが人生の勝ちかたを教えてあげるわ」

「それはとっても楽しみ。そのときはぜひ●●ちゃんと二人きりで会いたいな」

 わたしを抱きしめているグラマラスな女が、ちろりとヘビみたいに舌を見せていた。

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