助けなかった車の事故が黒歴史の後の話。
逢坂 純(おうさかあつし)
ヘルプマークの効用
幼い頃同様、誰かを助けられる人に未だになれていません。
それどころか他人に配慮される今の自分が常にいます。
僕はヘルプマークというタグを外出する際には、必ず付けていきます。
ヘルプマークというのは、役所でもらえる「配慮が必要です」という印です。
精神障がいの方はもちろんのこと、妊婦さんや高齢者など市役所に行けば、誰でも貰えるものです。
僕の友人にもヘルプマークを付けて配慮が必要な人がいます。
彼は外出先で「何か忘れ物をしたんじゃないか?落とし物をしたんじゃないか?」という不安を常に持っている人です。
僕は外出時にはある程度気を張っているので、一応ヘルプマークを携帯ホルダーに付けて首からぶら下げているものの、他人に迷惑をかけないように日々、心がけています。
それは障害理解のない人にとっては、そして症状の重い当事者にしたら「障がい者を舐めんなよ!」と言われるかも知れません。
実際、道を歩いていたら、向こうから自転車を走らせてやってきた高校生に睨まれて「障がい者、舐めんなよ!」と言われたことがあります。
しかし、それは実際のことではなく、幻聴と妄想でした。
最近、同じ当事者の友人とヘルプマークを付けてラーメンを食べに行きました。
そのラーメン店は、人気のラーメン店らしく開店から行列が並ぶほどの店でした。
僕と友人がラーメン店を訪れたのは、繁忙期が終わり、時間はもう昼のピークが過ぎた頃でした。
僕はチャーシュー増し増しでラーメンを頼みました。
10分ほどしてラーメンがテーブルに運ばれてきました。
ラーメンはあごだしラーメンと言われる魚の出汁を取ったラーメンでした。
ラーメンは行列ができるほどの人気店であり、十分美味しく満足しました。
そしてそのラーメン店の名物であるチャーシューを楽しみに食べました。
チャーシューは肉の塊のようなぶつ切りの丸ごとチャーシューでした。
僕はそのチャーシューを楽しみにしてガブリとチャーシューにかぶりつきました。
しかしチャーシューを食べると、そのチャーシューの中心部は冷たかったのです。
繁忙期の時間だったら、熱々のチャーシューを食べられたのかも知れません。
しかし、その時食べたチャーシューは冷たかったのです。
作り置きして切っておいたチャーシューを冷蔵庫に一時、保存しておいたのかも知れません。
僕はそれを店員に告げることができませんでした。
店内にはまだお客が数人いました。
僕がその場でラーメンに文句を付けたら「ヘルプマークを付けた頭のおかしな人が何か言っている」としか思われないのだと思ったのです。
ヘルプマークを付けていることで、僕は正しいことを言っていても、変人扱いされるのではないかと危惧したのです。
ヘルプマークが本当に必要な時、本当に助けになることを祈りながら、僕はこれからもヘルプマークを付け続けます。
助けなかった車の事故が黒歴史の後の話。 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808
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