第7話 アナタよりワタシは不幸?
全てを、何もかも
全てを諦めたら
とても楽になった。
とても。
幸せそうな、
苦労知らずの金持ちクソ女を
妬むことも
無く‥なった。
無神経な女に言われた。
自分の幸せは自分で決めるもの。
だから私はあなたのように、
左右されない。
成功した者が、
何も手に入れられない負け犬を
何の努力もしてないなどと蔑んでも。
諦めなければ夢は叶うとかね。
諦めることで楽になれたから
この不幸を全て
受け入れることができた。
どうしてワタシは不幸なんだ?
そんな風にもがいて、抵抗しているあいだは
まだ何かを期待している
バカなワタシだった。
自分が一番幸せと
私は恵まれていると、
信じて疑わないような、
思い上がっている女を見て
どうかその幸せがいつまでもと
心の中で、
願っている。
願っている。
良い人を気取って
ワタシは良い人になる。
友人にも恵まれなかった。
ワタシの友人は皆、意地悪だった。
ワタシが良いとつい口にしたものを、
後からこっそり盗んで行った。
ワタシを嫌な友達にしたのは、
アンタ達。
アナタの為、
アナタを応援していると言いながら
ワタシを傷付ける。
傷付ける言葉を平気で言う。
その人の正義を押し付けられ、
ワタシが我慢するのが当たり前?
何も言わずに逃げたワタシが悪者?
ワタシが悪いの?
出し抜こうとする奴らばかり。
ワタシを妬んで。
だから
友達なんていらない。
人間関係なんて薄っぺらいもの。
所詮、自分が大切なもの。
そういうふうにしか考えられないワタシは
"素敵な人生"を送っている人間から見ると
可哀想な人間なのだろう。
低め安定の人生でいい。
何も求めず、希望も捨てる。
期待したら必ず裏切られる。
どうせロクな男と出逢えないなら
ワタシにはもう必要ない。
良いのは初めだけ。
好きな男は振り向かないし、
嫌いな男には好かれる。
男と出逢い、好きになり、
恋愛からその存在を大切に
する、されるという継続的な関係。
ワタシにはなぜそれができないのだろう?
ワタシの何が欠けているのだろう?
ドラマや映画のように
男と簡単に出逢うなんて。
普通の良い人なんて、
ワタシには出逢うことはできないのだろう。
クズばかり掴むなら
無理して掴みに行く必要も無い。
オトコたちもワタシを
必要としないだろう。
そこそこ生き延びられるくらいの、
金は手に入れた。
てきとうに楽をして暮らす。
相手は簡単に裏切る。
人生なんて、
何が起こるかわからない。
一億二千万円という判決が下りた財産分与。
ワタシの元に来るべきものならば
手に入れるだろう。
殺してやりたいくらい栄介を憎んだ。
アイツも同じ気持ちだろう。
いや、それ以上だろう。
金しか無い奴だから。
今となっては、
全てを諦めたワタシも同類なのだろう‥
笑える。
手に入らないものは、
きっと
こちらに来るべきものではないから
手に入らないのだ。
散々ゴネて、
嫌がらせに最高裁にまで上告して、
無駄に裁判を長引かせた栄介。
怒りを表して怒号を撒き散らし、
威嚇で黙らせる。
そうやって、意のままに振る舞ってきた。
怒鳴る栄介がただ面倒だから
周囲の人間は、
好き勝手に思い通りにさせてやってきた。
ワタシもそうだった。
だが、世間の第三者の判断としての裁判で、
栄介の主張は認められなかった。
「アンタ、認められなかったんだよ?
わかってる?ワタシが正しかったんだ」
いいかげん、もう認めなよ。
判決は変わらない最高裁まで。
嫌がらせ上告して粘ったところで
結果がひっくり返ることは無い。
心から栄介の不幸を願っている。
ワタシ以上の。
アンタが思っているほど、
ワタシは不幸ではない。
ただ
ワタシのもとに来るべきものが
"来なかったら"
ワタシは反撃する。
目には目を
歯には歯を
アナタが一番嫌なことをしてあげる。
アナタの知らないところでね。
それくらいの覚悟をもって
アンタは、
そうしていることでしょう。
そして
ワタシを不幸のどん底に落とした、
大好きだったあなた。
ワタシの人生で、
あなた以上の。
あなたは奥さんに愛されて家族に愛され、
何も無くさず
あなたはまだ
煌びやかな舞台に立っている。
ワタシのことなど、
何も無かったように
何もかも忘れて?
ワタシのことも忘れて。
ワタシもあなたとのことを、
「奥さん」には
内緒にしてあげたからね。
大切な奥さんや家族は何も知らないよ。
ワタシは何もかも無くした。
あなたも
仕事も
あなたのせいで。全部。
逃げたと思われているワタシは悪者。
戻りたい場所にも戻れない。
ふと何かの拍子に胸が、
ギュウっと掴まれるように
まだ苦しくなる。
まだワタシは病んでいる。
あなたと同じ苗字が目に入るだけで
あなたを思わせるワードが目に入るだけで。
引き戻される。
それを極力、避けるように
何も、見ないように。
意識しないよう、意識する。
今でも立ち直れないでいる。
でも少しだけ回避能力も身に付けた。
そっちに行ってしまいそうな意識を
意識的に食い止める能力。
それが、まだ
立ち直れていない証拠で。
ここに辿り着くまで
しんどかったなぁ‥
去年の今頃も。
毎日毎日、辛くて、
音のない時間が嫌で、
どれだけ見たくも無い映画を見ただろう。
どうやって凌いでたんだろう。
耐えていたんだろうワタシ。
これからまだ辛いこと待ってるのかな。
これ以上の。
良いことが無くていいから、
何も無く
何も無く普通に、暮らしたい。
それだけ。
男も、
良いことも、
何にもいらない。
何もいらないから
何も無く、普通に生きたい。
ワタシはきっと
不幸なのだろう。
友達もいない。
運命の男もいない。
結婚すればクズばかり。
幸せな家族も作れない。
世のオンナ達が
簡単に手に入れる"普通の男"を
ワタシは絶対に、
手に入れることができない。
普通の男は
一体何処にいるのだろう?
わざわざ自分から
不幸を掴み取りに行く。
それだけは得意のようだ。
だからもう、
掴みに行くこともしない。
そして
これからワタシの人生は。
人生何が起こるか、
わからない。
不幸なワタシの話
聞いてくれてありがとう。
アナタより、
不幸だった?
ワタシの人生。
ワタシが一番不幸 あきれもん @Gerbera-lemon
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