ワケありのシングルマザーに粘着していたホームレスの男が、礫死体となって発見される事件が発生。
死んで当然と思えるクズ男。
しかし警察の調べでは、その死には不可解な点が多く、彼の身元を特定することすらもできないという難事件に発展していきます。
主人公である刑事・中洲川篤志の視点を中心に、被害者と並々ならぬ関係のある女性・美弥の視点を挟む構成にて、物語は進んでいきます。
警察から見える捜査状況と、限りなく犯人と思しき女性の心境。読者だからこそ両者を把握できる、この構成が絶妙に上手い。
中洲川とコンビを組む主利巡査部長の、まっすぐでどこか不器用な人柄に好感を抱きました。
地道に聞き込みを続け、少しずつ事件の手がかりを増やしていく二人ですが、ある時に決定的な異変が発生し、物語は加速度的に面白さを増します。
専門的な薬物の知識に裏打ちされていく殺害方法、何より被害者を取り巻く人間関係が凄まじくリアル。
序盤から丁寧に張り巡らされた伏線が繋がるたび、『呪い』としか言いようのない真実が炙り出されていきます。
タイトルにある『女神の約束』とは何だったのか。
読了後に、簡単には割り切れない苦いものが残ります。
せめて、どこかに救いがあったなら。そう思わずにはいられません。
緻密に計算された、素晴らしく読み応えある本格サスペンスミステリです。ぜひぜひご一読ください!
本作品はヒューマンドラマを下敷きにしたミステリーです。
それも長編の。
中洲川篤志さんを主人公にすえた第二作目となります。
周囲はすっかり変わっておりますが。
作者さまは話を上手く運ばれますから、一話毎に読まされ、ため息とともに読了にいたりました。
文章は安定と落ち着きがあり、読みやすいです。
独特のリズム感と会話文での駆け引きなどが個性的でもあります。
なおのこと、内容が飛び込んできます。
誰が犯人かを推理するより、どうしてそうなったのかをつぶさに紐解く面白さがあると思います。
誰しもそうだと思いますが、本の中でさえも好き嫌いはあると思います。
私は受け付けられない人物がおりました。
でも、実際にいるなとリアルに染められているのも事実です。
最後まで続いたどうしてこの方法で殺そうとしたかについては、これが一番のキーだったと私は思いました。
コメントで作者さまとのお話など、とても光栄な経験をさせていただきました。
ミステリーを書けるだけで尊敬いたします。
偶然にも舞台となっているところに馴染みがあり、それにも親しみを覚えました。
私はタイトルにあることが幸せに繋がらないことが、寂しいと思いました。
是非とも頁を捲ってください。