クズ男が死んでもざまぁで済まない、地獄のような呪いが炙り出される

ワケありのシングルマザーに粘着していたホームレスの男が、礫死体となって発見される事件が発生。
死んで当然と思えるクズ男。
しかし警察の調べでは、その死には不可解な点が多く、彼の身元を特定することすらもできないという難事件に発展していきます。

主人公である刑事・中洲川篤志の視点を中心に、被害者と並々ならぬ関係のある女性・美弥の視点を挟む構成にて、物語は進んでいきます。
警察から見える捜査状況と、限りなく犯人と思しき女性の心境。読者だからこそ両者を把握できる、この構成が絶妙に上手い。

中洲川とコンビを組む主利巡査部長の、まっすぐでどこか不器用な人柄に好感を抱きました。
地道に聞き込みを続け、少しずつ事件の手がかりを増やしていく二人ですが、ある時に決定的な異変が発生し、物語は加速度的に面白さを増します。

専門的な薬物の知識に裏打ちされていく殺害方法、何より被害者を取り巻く人間関係が凄まじくリアル。
序盤から丁寧に張り巡らされた伏線が繋がるたび、『呪い』としか言いようのない真実が炙り出されていきます。

タイトルにある『女神の約束』とは何だったのか。
読了後に、簡単には割り切れない苦いものが残ります。
せめて、どこかに救いがあったなら。そう思わずにはいられません。

緻密に計算された、素晴らしく読み応えある本格サスペンスミステリです。ぜひぜひご一読ください!

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