第8話『存在と論理の調和』

第1話:最終試練


朝の研究所、青木理沙のデスクに大きな封筒が置かれていた。


「おはようございます!...って、わっ!」


いつものように駆け込んできた青木咲が、予想通り転びそうになる。


「はい、はい」理沙が手を伸ばして咲を受け止める。「もう慣れましたよ」


「えへへ」咲が理沙の胸に顔を埋める。「朝の抱擁、ゲットです」


「まったく」理沙が呆れながらも優しく頭を撫でる。「研究者なのに」


その時、中村翔子が顔を出す。


「おやおや」翔子がにやり。「朝から仲良しで」


「違います!」理沙が慌てて咲から離れる。「これは、その...」


「実験の一環です!」咲が必死で言い訳。


「はいはい」翔子が封筒を指さす。「それより、見ました?」


「あ」理沙が封筒を手に取る。「これ、何でしょう」


開けてみると、世界的な研究プロジェクトへの招待状。しかも—


「えっ!」咲が目を丸くする。「ノーベル賞受賞者との共同研究!?」


「これは...」理沙も息を呑む。


その時、藤田教授が現れる。


「おめでとう」教授が満面の笑みで。「お二人の研究が認められたんです」


「でも先生」理沙が不安げに。「私たちなんかが...」


「あ!」咲が突然声を上げる。「お腹空きました」


場の緊張が一気に崩れる。


「もう」理沙が額を押さえる。「大事な話の最中に」


「だって」咲が理沙の腕を引っ張る。「緊張すると空腹になっちゃって」


「仕方ありません」理沙が諦めたように立ち上がる。「カフェで話しましょうか」


研究所近くのカフェで、招待状の詳細を確認する二人。


「すごい」咲がサンドイッチを頬張りながら。「世界中の研究者が集まるんですって」


「咲」理沙がナプキンで咲の口元を拭う。「食べこぼしてますよ」


「あ」咲が赤面する。「理沙さんに世話焼かせちゃって」


「いいえ」理沙が優しく微笑む。「これも大切な研究です」


「研究?」


「ええ。幸せな結婚生活の継続研究」


「理沙さん...」咲の目が潤む。「急に素敵なこと言うんですから」


その時、カフェのドアが勢いよく開く。


「大変です!」山田健一が駆け込んでくる。「研究所で...」


「また何か?」理沙が立ち上がる。


「装置が暴走して...」


「きゃっ!」咲が慌てて立とうとして、テーブルにぶつかる。


「危ない!」理沙がコーヒーカップと咲を同時に受け止める。


「さすが」山田が感心する。「息ピッタリですね」


「当然です」理沙が咲を支えながら。「夫婦なんですから」


「あの」咲が小さな声で。「研究所は大丈夫?」


「あ!」三人が同時に声を上げる。


研究所に駆け戻る途中、理沙が咲の手を握る。


「どんな試練も」理沙がつぶやく。「一緒に乗り越えましょう」


「はい!」咲が元気よく。「理沙さんと一緒なら、ノーベル賞だって...あっ」


また転びそうになる咲を、理沙が慣れた動きでキャッチ。


世界的プロジェクトと研究所の危機。二人の前に、新たな試練が立ちはだかる。でも—


「理沙さん」咲が嬉しそうに。「こういうの、楽しいです」


「まったく」理沙も笑顔になる。「咲らしいですね」


春の風が、二人の新たな冒険の始まりを告げていた。




第2話:別れの危機


研究所の会議室。青木理沙は困惑の表情を浮かべていた。


「理沙さんだけ?」咲が不安げに。「私は一緒に行けないんですか?」


プロジェクトの詳細が届き、理沙だけが海外の研究施設に招かれることが判明した。


「なんとか二人で」理沙が資料を見直す。「方法は...」


「いえ」藤田教授が静かに首を振る。「むしろ、研究所に咲さんが必要なんです」


「先生...」


「装置の制御には」教授が続ける。「咲さんの直感が不可欠ですから」


会議室に重い空気が流れる。


「あ!」咲が突然立ち上がる。「お腹が...」


「もう」理沙が思わず吹き出す。「こんな大事な時に」


「だって」咲が照れながら。「緊張すると...」


「分かってます」理沙が立ち上がる。「カフェに行きましょう」


研究所の近くのカフェで、いつもの席に座る二人。


「ねえ」咲がホットケーキを前に。「私たち、初めてここで...」


「ええ」理沙も懐かしむように。「咲がコーヒーをこぼして」


「あの時も」咲が理沙の手を握る。「理沙さんが守ってくれました」


「今度は」理沙が申し訳なさそうに。「守れないかもしれない」


「違います!」


咲の声に、カフェ中の視線が集まる。


「あ、すみません」咲が小さくなる。「でも...」


その時、中村翔子と山田健一が入ってくる。


「やっぱりここだと思った」翔子が二人の隣に座る。

「大丈夫?」山田も心配そうに。


「翔子さん」咲が涙目で。「私たち...」


「よく聞いて」翔子が真剣な表情で。「離れていても、心は」


「つながってます!」咲が立ち上がろうとして、テーブルにぶつかる。


「危ない!」理沙が咲とホットケーキを同時にキャッチ。


「相変わらずね」翔子が微笑む。「こんな息の合った夫婦、他にいないわ」


「そうだ!」山田が思いついたように。「オンラインミーティングとか」


「それに」翔子も続ける。「時差があっても、心は同じ時を...」


「きゃー!」咲が突然声を上げる。


「どうしました!?」全員が驚く。


「理沙さん」咲が目を輝かせる。「私たちの指輪!」


「指輪?」


「共鳴実験の時みたいに」咲が説明を始める。「距離があっても、きっと...」


理沙の目が見開かれる。


「そうか」理沙が立ち上がる。「装置と同じ原理で」


「さすが」教授が突然現れる。「その答え、待っていました」


「先生!?」全員が驚く。


「実は」教授が嬉しそうに。「これも研究の一環なんです」


「えっ?」


「二人の絆が」教授が説明する。「どれだけの距離を超えられるか」


「実験だったんですか!?」理沙が驚く。


「私も知らなかった」山田が苦笑い。

「私も」翔子も同様に。


「あの」咲が小さな声で。「お腹、また空きました」


場の緊張が一気に解ける。


「まったく」理沙が咲の頭を撫でる。「どんな時も変わらないんですね」


「えへへ」咲が嬉しそうに。「だって私、理沙さんの奥さんですから」


「では」教授が二人に。「新しい研究、始めましょうか」


理沙と咲は顔を見合わせ、笑顔で頷く。


「はい!」二人の声が重なる。「私たちなら、きっと」


窓の外では、春の風が優しく吹いていた。




第3話:真実の時


夜更けの研究所。青木理沙と咲は新しい実験の準備をしていた。


「理沙さん」咲が機材を運びながら。「この装置、私たちの指輪と同じ原理なんですよね」


「ええ」理沙が設定を確認する。「距離を超えた共鳴を...って、咲!」


咲が機材を抱えたまま、またもや転びそうに。


「はい、キャッチ」理沙が慣れた動きで受け止める。「何度目ですか」


「えへへ」咲が理沙の腕の中で。「理沙さんに抱きしめてもらえるから」


「まさか」理沙が眉を上げる。「わざとですか?」


「内緒です♪」


その時、実験装置が突然反応を示す。


「あれ?」二人が驚く。「まだスイッチ入れてないのに」


青い光が、二人の指輪から放たれ始める。


「これは!」理沙が目を見開く。

「前と同じ...」咲も息を呑む。


その瞬間、装置のモニターに不思議な波形が。


「理沙さん、見てください!」咲が画面を指さす。「この数値...」


「信じられない」理沙が確認する。「まるで、二つの心が...」


「完全に共鳴してる?」


藤田教授の声に、二人が振り返る。


「先生!」

「こんな夜遅くまで」


「いえ」教授が微笑む。「これを待っていたんです」


教授が説明によると、二人の指輪は特別な共鳴回路になっていた。それは—


「愛する者同士の」教授が静かに。「究極の通信装置」


「通信...」理沙が自分の指輪を見つめる。

「装置?」咲も不思議そうに。


「そう」教授が頷く。「どんな距離でも、心は繋がる」


その時、咲がまた機材にぶつかりそうに。


「あ!」

「もう」理沙が咲を引き寄せる。「目を離せませんね」


「それです!」教授が興奮気味に。「その無意識の動き」


「どういうことですか?」


「お二人は」教授が説明する。「既に完璧な共鳴状態なんです」


理沙と咲は顔を見合わせる。


「だから」教授が続ける。「離れていても、心は常に...」


「あ!」咲が突然声を上げる。「お腹空きました」


場の緊張が一気に解ける。


「まったく」理沙が呆れたように。「大発見の瞬間なのに」


「でも」咲が理沙の腕を引っ張る。「嬉しくて興奮して...」


「分かってます」理沙も諦めたように立ち上がる。「カップラーメンでいいですか?」


「えっ」教授が驚く。「研究所に置いてあるんですか?」


「ええ」理沙が当然のように。「咲が緊急用に」


「理沙さんが」咲が嬉しそうに。「私の好みを覚えていてくれて」


教授は二人を見守りながら、静かに微笑む。


「これこそ」教授がつぶやく。「真の共鳴かもしれない」


深夜の研究所で、カップラーメンの湯気が立ち上る。


「ねえ」咲がラーメンを啜りながら。「私たち、すごいことしてます?」


「ええ」理沙が咲の頬についたスープを拭う。「とても、すごいことです」


窓の外では、満月が二人を見守るように輝いていた。




第4話:互いの選択


朝日が差し込む研究所の屋上。青木理沙は海外からの最終通知を手に取っていた。


「一週間後ですか」咲が理沙の隣で。「そっか...」


「咲」理沙が決意を込めて。「やっぱり行くのは...」


「だめです!」咲が理沙の腕を掴む。「せっかくの機会なのに」


「でも」理沙が咲を見つめる。「離れ離れは...」


その時、咲が転びそうになる。


「きゃっ!」

「はい、はい」理沙が慣れた動きでキャッチ。


「えへへ」咲が理沙の胸で。「やっぱり理沙さんは、私の安全装置」


「まったく」理沙が頭を撫でる。「それなのに、離れろって」


「だって!」咲が真剣な表情で。「理沙さんの夢なんです」


その時、指輪が微かに光る。


「あれ?」二人が同時に。


「おはよう」藤田教授が現れる。「朝から実験かな?」


「先生!」


「いえ」理沙が慌てて。「これは偶然...」


「本当ですか?」教授が意味深に。「昨日の共鳴データを見る限り」


「データ?」咲が首を傾げる。


「二人の心が通じ合う時」教授が説明する。「指輪が反応する。さっきみたいに」


「じゃあ」理沙が自分の指輪を見つめる。「離れていても...」


「ええ」教授が頷く。「心は、ずっと繋がっている」


「理沙さん!」咲が飛びつく。「これで大丈夫です!」


「危ない!」理沙が受け止めながら。「まだ転びますか」


「だって嬉しくて」咲の目が潤む。「理沙さんの夢を、応援できるから」


その時、中村翔子と山田健一が駆け込んでくる。


「大変!」翔子が息を切らして。「装置が...」


「また?」理沙が心配そうに。


「違います」山田が興奮気味に。「今度は、凄いデータが!」


研究室に戻ると、モニターには信じられないグラフが。


「これは...」理沙が目を見開く。

「すごい!」咲も驚く。


「お二人の研究」教授が説明する。「世界が注目する理由です」


「でも」理沙がまだ迷う。「咲と離れるのは...」


「あ!」咲が突然声を上げる。「お腹空きました」


場の緊張が一気に解ける。


「もう」理沙が思わず笑顔に。「大事な場面なのに」


「だって」咲が甘えるように。「考えすぎて」


「分かってます」理沙が諦めたように。「朝ごはん、行きましょう」


カフェで、いつもの席に座る二人。


「ねえ」咲がトーストを前に。「理沙さんは、どうしたいんですか?」


「私は...」理沙が真剣な表情で。「咲と一緒なら、どこでも」


「違います」咲がきっぱりと。「理沙さんの本当の気持ち」


理沙は咲を見つめ、そして—


「行きたいです」理沙が正直に。「でも、必ず戻ってきます」


「うん!」咲が満面の笑顔。「待ってます」


「それと」理沙が指輪を見せる。「これがある限り、離れてなんかいません」


窓の外で、朝日が二人を優しく包み込んでいた。





第5話:未来への一歩


空港ラウンジ。出発まであと1時間。青木理沙は海外渡航の最終確認をしていた。


「理沙さん」咲が隣で。「ネクタイ、曲がってます」


「あ、ありがとう...って」


咲が直そうとして、またもやバランスを崩す。


「もう」理沙が咲を支える。「出発直前まで転ぶんですか」


「えへへ」咲が理沙にしがみつく。「最後の抱擁、ゲットです」


「最後じゃありません」理沙が真剣な表情で。「これからが始まりです」


その時、中村翔子たちが駆けつけてくる。


「間に合った!」翔子が息を切らして。「お見送り、させてね」


「先輩」山田健一も笑顔で。「良い研究を」


「皆さん...」理沙が感動的な表情に。


「あ!」咲が突然声を上げる。「お弁当作ってきました!」


「えっ」全員が驚く。「機内食があるのに?」


「だって」咲が手作り弁当を差し出す。「理沙さんの好みを完璧に覚えたから」


「咲...」理沙の目が潤む。


「おやおや」藤田教授も合流。「素敵な送別風景ですね」


「先生まで」理沙が慌てて姿勢を正す。


「いえいえ」教授が優しく。「研究者夫婦の鏡ですよ」


その時、指輪が微かに光る。


「見てください」教授が嬉しそう。「完璧な共鳴です」


「理沙さん」咲が理沙の手を握る。「私も頑張ります」


「ええ」理沙も強く握り返す。「研究所のことは、お願いしますね」


「任せてください!」咲が元気よく。「それと...」


「何か忘れ物?」


「いえ」咲が照れながら。「毎日、好きって言ってください」


「えっ!?」理沙が真っ赤に。「そ、それは...」


「あらあら」翔子がにやり。「新婚さんみたい」


「翔子さん!」理沙が慌てる。「もう結婚して...」


「愛し合ってるのは」教授が微笑む。「素晴らしいことです」


その時、搭乗案内が流れる。


「そろそろ」山田が時計を見る。「出発ですね」


「理沙さん!」咲が最後の抱擁。「気をつけて」


「ええ」理沙が咲の頭を撫でる。「あなたも転ばないように」


「それと」咲が小声で。「指輪、ちゃんと見てますからね」


「分かってます」理沙も囁き返す。「毎日、光らせます」


「きゃー!」翔子が興奮。「何て素敵な約束なの!」


「照れますね」山田も笑顔。


セキュリティゲートの前。最後の別れの時。


「行ってきます」理沙が深々と一礼。


「はい!」咲も元気よく。「お帰りを...あっ!」


見送りの手を振りながら、またもやバランスを崩す咲。


「本当に」理沙が振り返りながら。「最後まで目が離せません」


「えへへ」咲が照れる。「だって私、理沙さんの奥さんですから」


ゲートをくぐる理沙の姿を、皆で見送る。


「咲ちゃん」翔子が咲の肩を抱く。「泣いていいのよ」


「ううん」咲が笑顔で。「だって、ここからが私たちの新しい研究の始まりです」


指輪が、また優しく光を放つ。


「見てください」咲が嬉しそう。「理沙さんも、同じこと考えてるんです」


新しい未来への一歩。二人の物語は、まだ始まったばかり—。




第6話:哲学的結論


深夜の研究所。青木咲はビデオ通話の画面に向かって話しかけていた。


「理沙さん、今そっちは朝ですよね?」

「ええ」画面の向こうの理沙が微笑む。「朝食を食べながら実験データの確認です」


「あ!」咲が突然身を乗り出す。「パンの耳、ちゃんと食べてますか?」


「もう」理沙が赤面する。「そんなこと気にしなくても...」


「だって」咲が指輪を見せる。「昨日、光り方が弱かったんです」


その時、咲がイスのバランスを崩す。


「きゃっ!」

「また転びそうに」理沙が思わず画面に手を伸ばす。


「えへへ」咲が姿勢を立て直しながら。「理沙さんの反応、変わってないです」


「当然です」理沙が眼鏡を直す。「私の大切な...」


「大切な?」咲が期待の眼差し。


その時、実験装置が反応を示す。


「これは!」二人が同時に声を上げる。


「信じられない」理沙が興奮気味に。「地球の裏側でも、完璧な共鳴が」


「理沙さん」咲が真剣な表情で。「これって、愛の証明ですか?」


「そうですね」藤田教授の声が響く。


「きゃー!」咲が驚いて本当に転ぶ。


「先生!?」理沙も画面越しに驚く。「いつから...」


「いえいえ」教授が咲を助け起こしながら。「素晴らしい研究の瞬間に立ち会えて光栄です」


「あの」咲が恥ずかしそうに。「私たち、ラブラブすぎました?」


「むしろ」教授が嬉しそう。「それこそが研究の本質かもしれません」


画面の向こうで、理沙が考え込む。


「そうか」理沙がつぶやく。「父さんの言っていた『存在の共鳴』って」


「理沙さん?」


「愛する人との絆」理沙が目を輝かせる。「それが最高の研究テーマだったんです」


「まさか」教授も感動的な表情。「お二人で、その結論にたどり着くとは」


その時、研究所の警報が鳴り響く。


「また?」咲が立ち上がる。「理沙さん、切れちゃいますけど...」


「大丈夫です」理沙が指輪を見せる。「こっちも光ってますから」


「はい!」咲が元気よく。「じゃあ行ってきます!...って、あっ!」


慌てて走り出そうとして、また転びそうに。


「本当に」画面の理沙が思わず身を乗り出す。「目が離せません」


「安心して」教授が咲を支える。「私が守っておきます」


「先生...」理沙が感謝の表情。


「それより」教授がにやり。「今夜は満月です。お二人の指輪、特別に輝くかも」


「えっ!」二人が同時に赤面。


「さ、実験を」理沙が慌てて。

「は、はい!」咲も突っ走る。


深夜の研究所に、温かな空気が流れる。


地球の裏側で、理沙は自分の指輪を見つめていた。


「咲」理沙が小さくつぶやく。「愛してます」


研究所で奮闘する咲の指輪が、一瞬強く輝く。


「えへへ」咲も指輪に触れる。「私も、理沙さんのこと...大好きです」


二つの指輪が、満月の下で美しく共鳴していた。





第7話:新しい物語の始まり


空港の到着ロビー。青木咲は、そわそわしながら出口を見つめていた。


「理沙さん、もうすぐ...」


「咲ちゃん」中村翔子が隣で。「そんなに緊張しなくても」


「だって」咲が指輪を見つめる。「半年ぶりだし...あっ!」


待ちきれず走り出そうとして、案の定転びそう。


「危ない!」


見覚えのある声と共に、懐かしい腕が咲を支える。


「理沙さん!」咲が飛びつく。「お帰りなさい!」


「ただいま」理沙が咲を抱きしめる。「相変わらず目が離せませんね」


「えへへ」咲が嬉しそう。「これも実験の一環です」


「まったく」理沙が咲の頭を撫でる。「どんな実験ですか?」


「愛の確認実験です!」


「もう」理沙が真っ赤に。「人前で...」


「おかえり」藤田教授も笑顔で。「素晴らしい研究成果でしたね」


「はい」理沙が誇らしげに。「でも、これは二人の成果です」


その時、理沙と咲の指輪が同時に輝き出す。


「見てください」教授が感動的な表情。「完璧な共鳴です」


「あのね」咲が理沙の腕を引っ張る。「研究所に素敵なサプライズが」


「サプライズ?」


研究所に着くと、皆が出迎えてくれる。


「おめでとう!」山田が祝福。「ノーベル賞候補だって!」


「えっ!」理沙が驚く。「まさか...」


「二人の研究」教授が説明する。「世界が認めたんです」


「私たちの?」咲も信じられない様子。


「ええ」教授が頷く。「存在の共鳴理論。そして...」


「愛の科学的証明」翔子が付け加える。「素敵じゃない?」


「あ!」咲が突然声を上げる。「お腹空きました」


場の緊張が一気に解ける。


「変わってないですね」理沙が優しく微笑む。


「だって」咲が甘えるように。「理沙さんと一緒だと、ホッとして...」


「分かってます」理沙が手を差し出す。「カフェに行きましょう」


いつものカフェで、二人は向かい合う。


「ねえ」咲がケーキを前に。「私たち、これからどうなるんでしょう」


「それは」理沙が真剣な表情で。「新しい研究が待ってます」


「どんな研究?」


「永遠の愛を」理沙が照れながら。「科学的に証明する研究です」


「理沙さん...」咲の目が潤む。


「だって」理沙が指輪を見せる。「この共鳴は、永遠に続くはずだから」


「はい!」咲が満面の笑顔。「理論と実践、頑張りましょう!」


「実践って」理沙が赤面。「どういう...」


「愛の実験です♪」


その時、周囲から温かな拍手が。


「えっ!?」二人が驚く。


研究所のメンバーが、こっそり見守っていた。


「これも実験データね」翔子がにやり。

「貴重な観察結果です」教授も嬉しそう。


「もう!」理沙が恥ずかしそうに。

「皆さん...」咲も照れる。


春の風が、カフェの中に優しく流れ込む。


「理沙さん」咲が小さな声で。「幸せです」


「私も」理沙が咲の手を握る。「咲と出会えて、研究できて、そして...」


「そして?」


「愛し合えて」理沙が囁く。「最高の人生です」


二人の指輪が、春の陽射しの中で輝きを増していく。


新しい物語は、まだ始まったばかり—。




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『哲学女子の論理と恋 ~キャンパスミステリーな百合物語~』 ソコニ @mi33x

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