シャンパン

宵音かえで

-Cadavre noyé-

青藍の帳に、媚びて煌めく灯影が舞う。

白昼の醜悪を隠して、美貌を装えば、

誰もが仮初の姿に惑わされる。


目の前の君は、そんな飾り立てた言葉で、

虚空のグラスを傾けて、

緋色のピアスを揺らした。


「朝日が昇れば、君の美しさもなかったことになるのかい」


幼稚な僕からの問いに、君は静かに頷く。


『そうかもね』


それなら僕は、稀代の大怪盗になって、

今宵、隠された太陽を盗んでしまおう。

世界で1つの首飾りにして、君に贈ろう。


君が摩耶花氏と言うのなら、

僕は、永遠とわに身を任せ溺れたい。


深く、


深く、


溺死するほど、、、




君、そうしたら、僕の屍を拾ってくれるかい。

美しい君の側に、いつまでも飾ってほしいんだ。


目の前の君は、そんな舌足らずな言葉で、

満杯のグラスを掲げて、

シアンの瞳を揺らす僕に、



『枯れた私の心をも、潤せるような大きな瓶を、

 私に捧げてくれたら、考えてあげる』



嗚呼、やっぱり君にはかなわない。

君の言葉にかどわかされて、

僕はまたもやけむに巻かれる。



常夜の藍に及ばぬ僕はまた、白金の泡に溺れた。

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シャンパン 宵音かえで @summer_maple_88

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