クリスマスはやっぱり、、
影神
甘い
ガヤガヤした音。
光るライト。
ここはいつでもクリスマスみてえだ。
行きつけの場所は無い。
ただ、ぶらりと。
当たり前の様に店の中に入る。
金がある訳でもないのに、
財布から出したかみきれを入れる。
ウィーン、、
待ってました。のごとく。
機体は紙を飲み込み、
代わりに玉を吐き出す。
別に見返りを求めている訳じゃない。
現実から目を反らし、
時間を無駄にしているだけ。
街はカップルで溢れ。
見せ付けるかの様に愛をばら蒔いて居た。
自家発電で満足するしかない自分が虚しかった。
祖母が仕事を辞めたと遠回しに聞かされ。
俺は祝ってやる事すら出来ない。
子供の頃は思ってた。
結婚して。
大きな家を建て。
孝行する事を。
それが、どうだろうか。
彼女も居ない。
持ち家も無い。
貯金も無い。
何がしたくって、生きているのだろうか。。
社会のせいにすれば楽だ。
社会が。悪い。
それもあるかも知れないが。
自分が悪いんだ。
自分が好きで選んだ道。
自分が歩んだ故の居場所。
刺激する音楽とディスプレイ。
ここが好きなのか。
「こちらからお選び下さい」
クリスマスの格好をした店員は、棚を指す。
店員「近所のケーキ屋さんのケーキと交換出来る、
こちらはいかがですか?
結構人気なんですよー?」
紙には引換券と書かれていた。
「じゃあ、それで。」
店員「お出口を出て左側になります。
ありがとうございましたー!」
札を持って現金と交換する。
店員に渡された引換券の裏には地図が印されていた。
すっかり辺りは暗くなっていた。
「寒い、」
俺に暖めてくれる人肌は無かった。
「いらっしゃいませー」
小さな店内のカウンター?には、
様々なケーキがあった。
ケーキ屋なんていつぶりだろうか。
端の方には予約分のケーキが置いてあった。
ケーキ屋「お決まりでしょうか?」
「あの。これ、」
ケーキ屋「あぁ!
当たったんですね?
おめでとうございます!」
「ぁあ。はぃ、」
手渡されたケーキの箱を持ち。
幸せそうな家族とすれ違う。
軽快な音楽は、この箱を持っている事を喜ばせる。
出来るだけ垂直になる様にと。
あの頃の記憶を呼び覚ました。
暖かい部屋にヒーターの音が鳴り。
寒い部屋へと行き給油する。
夕飯の御馳走が頭に浮かび、
いい匂いが"幸せ"を感じさせる。
『子供の頃にあった当たり前にあった幸福』
それを。俺は今、手にしていない。
寒い部屋。
静かで暗い部屋ににつかない箱。
テレビを付けるとクリスマスソングが流れる。
箱を開け、中身を取り出すと小さなケーキがあった。
「ケーキなんていつぶりだろうか。。
フォークあったっけな、」
ほとんど使わないフォークを探す。
「あった。」
奥の方に追いやられていたそれを、
軽く水の柱に突っ込む。
水を切り、テーブルへと向かう。
箱の中の上にはろうそくがくっついていた。
「、せっかくだから。」
小さなケーキにピンク。青。緑。の棒を立て、
そこに灯りを点す。
電気を消すとタイミングを見計らったかの様に、
雰囲気にあった音楽がテレビから流れる。
ろうそくの火は温かく。
散らかった汚い部屋を照らした。
フゥ、
炎はゆっくりと揺れ、耐えた。
フッ!
電気を消した時の様に。
辺りは暗くなった。
「いただきます。」
口に運んだそれは、甘酸っぱい果物と一緒に。
少しだけ笑みを与えてくれた。
「やっぱり、」
今年のクリスマスはちょっとだけ。
幸せな気分を味わえた気がした。
クリスマスはやっぱり、、 影神 @kagegami
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